第10話 2つの死
エミリーの告白が英語であったため、理解できたのは瞳美だけだった。
祖父の過去を知った瞳美は茫然としていた。
逢音「瞳美!早く!」
瞳美「あ、逢音。私のカバンをとって!」
代償クリア!
エミリーが正気に戻った。
状況を察したエミリー。
エミリー「やられたわ。能力使いの経験値の差ってところ。さあ、これからどうするつもり?香水のビンの所有者は、まだ私よ。あなたに嗅覚の能力を譲る気はないわ(英語)」
瞳美「こうするのよ(英語)」
瞳美はカバンから取り出した黒メガネをかけ、エミリーを見つめた。
瞳美「死んでちょうだい(英語)」
逢音はさすがにこのワードは理解した。
逢音「だめー!」
これは代償とはならなかった。命令の否定は契約の代償とはならないのだ。
エミリーはキッチンからナイフを出し、自らの首を掻き切った。
絶命するエミリー。
ダンが発狂したような声をあげ瞳美に殴り掛かった。
ダンのパンチをぎりぎりでよけた瞳美の目から黒メガネがはじけ飛んだ。
逢音「瞳美!」
瞳美を助けようと逢音はダンに体当たりした。がしかし逆にダンに羽交い締めにされ、首を絞められる逢音。
ダン「香水のビンを渡せ!さもないとお前を絞め殺す!(英語)」
(殺される。私も…)
瞳美「逢音!残ってる…代償がまだ…」
声が出ない逢音。
その刹那、瞳美に向かってダンが叫んだ!
ダン「お前も死ぬんだ」
代償クリア!
逢音の意識が消えそうになろうとしているとき、急にダンの腕から力がなくなった。
床に倒れるダン…。
そこには、ワインのビンでダンの後頭部を殴りつけた逢音の父親の姿があった。
父「逢音!大丈夫か!いったいどうなってるんだ?ここはどこだ?この人たちは誰だ?」
どうやら父は逢音が香水のビンを手に入れた時から正気に戻っていたらしい。
(今ここで説明しているヒマはない!)
逢音は、持っていた香水のビンのフタを開けた。
逢音「ここで見たことをすべて忘れなさい」
父「わかった」
逢音は急いで瞳美を探した…いない。
誰かが二階へ駆け上がる足音がする。急いであとを追う逢音。
逢音「待って!行っちゃだめ!死んじゃだめ!」
二階の窓から飛び降りようとしている瞳美が逢音に気づいた。
瞳美「私の…私の望み忘れてないよね。逢音に託すから…絶対叶えてね。」
瞳美の身体が宙に舞う!
代償クリア!
逢音が嗅覚の能力を使ったことの代償が今払われた。と同時に逢音が香水のビンの所有者となった瞬間でもあった。
たかが二階からの飛び降り…でも瞳美は確実に死んでいた。
(受け身をとらなければ、簡単に死んじゃうんだな…)
逢音には瞳美の死を受け止める余裕などなかった。ただただ瞳美の遺体に縋り付いて泣いた。泣き続けた…ただ、心に確かな決意が…いや自分の意思とは無関係の欲望が心を支配していくのを感じた。独り言のようにつぶやく逢音。
「わたしが、全知全能の神をつくり、そして壊すのだ」
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