第52話 旧友

「ひゃ~、助かったぁ

 もう少しで死ぬとこだったぜ......

 それにしてもお前こんな綺麗な二人とどういう関係だ?

 あと両手に華なのに、何でそんな顔色悪いんだ?」


「お前の方が悪いくらいだぞ」


そんな指摘も冗談に受け取って豪快に笑っている。

さっきまで殴り合いがあったのにも関わらず、

様子は懐かしいくらいに変わっていない


今はそのことが反対に不気味なのだが...



「何か覚えてないのか、ラッテ?

 お前その綺麗な二人の内一人の...こっちの人を攫おうとしてたんだぞ?」


アイリスは困った表情で、

アメルはやけに顔を赤くしていた。


「俺が?

 ハッハッハ! 嫁に来て欲しいくらいだけど、そんなことしねえよ!

 だいたい顔はか弱そうな女の子とは言え、鎧来てるような人を

 攫えるもんかい!」


こちらの怪訝な感じでの質疑を物ともしない、明るい調子に

俺たちは顔を見合わせることしか出来ない


「一番最近の記憶で少しでも良いんです、覚えていることを教えて下さい」


一歩前に出てアイリスが真剣な目線を送ると、


「こりゃ驚いた......こんなべっぴんさんが俺たちと同じ言葉使うなんてなぁ!」


それもまた意に介さず変わらぬ様子だ。

こんな適当な奴と友人であるだなんて思われたら御里が知れる、

その故郷が共通なのだから

ここはガツンと俺だけでもマトモであることを見せなければ


「いい加減にしろ、じゃないとまたさっきみたいに――」


「ああ、分かってるよ! ちょっと待ってくれって......」


軽い受け答えで了承すると

胡坐を組んで目を閉じた。


瞑想が始まると二人を少し離れた場所に誘導して

小さな声で話す



「多分、二人にとっては凄く変な奴に思えるかもしれないけど...

 あれが変異した影響とかでは全くなく、

 間違いなく俺の知人だと思います......はい」


アメルの訝しんで俺とアイツと交互に目線を向けるので

補足説明は萎むように声が小さくなった


「とりあえず信じてあげるけど...やっぱ変よ」


率直なご意見にフォローする言葉も見つからない。

対して


「私は覚えがあります、ああいった方に。

 村での生活時代にも豪胆な気質な人は多くいましたし」


アイリスも懐かしんでいるようだ。

そこは過去の境遇が似た者同士通じ合えるところか


「でもあれだけのことがあって、一切記憶にないというのは...」


ただその点に関しては怪しんでいる、

自分と同じ見解で安心したようなそうでもないような......


「とにかくアイツが思い出すまで待ってもらえますか?」


「ええ、何かの手がかりにもなるかもしれませんし...

 彼の身に起きていたのはとても危険な現象でもあった、

 放っておく訳にもいきません」


「まあ、しょうがないか......」



溜息交じりの承諾にお時間を貰いつつ、

経つこと数分。



「ああああ!!」


「「「!?」」」


化け物紛いの大声にまた魔族被れに戻ってしまったのかと

立ち上がった俺たちに向けたのは



「思い出した!!」


はた迷惑な叫びに、馬鹿みたいな笑顔であった。


それは俺の怒りを買って

また一悶着起こった

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