第49話 村人VS????・3

「はあッ!!」



真正面からの小細工なしの一発はガードを崩すに至らない、

ほとんど実力は同じと見た方が良いか


立て続けに反撃を許さず猛打に次ぐ猛打、

それでも敵を後退させるだけで構えはビクともしない。


そこで後ろからアメルが何かを唱える声が聞こえた


すると上から誰かに押さえつけられたかのように

敵がそのままの姿勢で身体を折り曲げた。


これは......!



「うらぁ!!」


横っ面目掛けてフックを放つ、

横からの勢いに流されガードが緩くなる


今だ!


「まだまだぁ!!」


右から左から体の軸は八の字を描いて

パンチを叩きこむ


相手を先ほどより明らかに防戦一方に追い込んでいる、

防御はしているようでしていないも同然だ。


一番守らなきゃいけない部分がガラ空きになるのを視認すると

身体を捻り渾身の一発フォームに入る


「だぁ!!」


天に向けて突き上げるアッパーカットは過たず敵の顎をとらえた。


これには耐えられず脱力した敵の体が緩やかな放物線を描いて

地面に大の字になって倒れた


だがしかしまた新たに息を吹き替えしたかのように体を震わして

再び立ち上がろうとしてくる。


「しぶといやつだ......!」


アメルの浮上させる力を逆流させた引力のような

押さえつけにも負けじと体制を立て直そうとする


しかしそれを黙ってみているほどこちらも

お人好しじゃない。



「グッ...!」


俺の取った行動に正体不明の化け物も苦し気な声をあげた、

羽交い締めだ


「あ、アメル! 俺が拘束してる間にどうにかしろ!」


かなりパワーダウンしたはずの抵抗にも手こずりながらも

敵の首の後ろで両手をガッチリ組むことに成功した。


これでしばらくはお互い動けない



「何とかって...アンタはどうするの!?

 無事では済まないと思うけど!」


遠くから戸惑いの声が聞こえる


「問題ない!!

 お前の元所属先で再三見たろ!? 俺には並大抵の魔法は効かない!」


術者の迷いもあってか彼女の魔法の効力が下がっているか、

段々敵のもがきに力が入ってきた



「で、でも.....」


何を悩むことがあるんだ.....!


「遠慮なくぶちかませ!!

 というか早くしてくれ!!」


化け物はこちらを持ち上げようとでもしているかのように

踏ん張る足を地面から離そうとしてくる


頼む、魔法使い~!!


「冷静になってください、アメル!!」


その時に響いた声は先ほどまで弱っていたものとはまるで別物の

アイリスの一喝だった



「あの者を鎮静化が目的なら何も攻撃的な魔法以外にもあるはずです!!」


それを聞いてアメルが何か閃いたようだ。


「微睡め≪スリーゼ≫!!」


高らかに唱えられた魔法の即効性は段違いだった。

急に腕に掛かる圧が増したと思いきや、

敵が全体重をこちらに任せてきた


しばらくすると猛犬が唸っているかのような寝息が敵の体が出始めた



「さ、さすが私ね! 化け物もぐっすり!」


「危なかったぞ、おい」


起こさずに慎重に降ろして俺も緊張から解放された。



「やれやれ.....後衛さんがちょっと最後頼りなかったな」


「うっさいわね、仕方ないでしょ...」


不満げに言いながらアメルと

ゆっくりとアイリスが近寄ってきた


その間も忘れず靄を噴出し続ける敵を見張っていたが

大人しくしているようだ


それに若干全身が可視出来るまでになってきた



「.....やっぱり人間か」


血色の悪いところまでは自分に似ているが

全体的に炭のように黒ずんだ感じは俺とはまるで色が違う


そして髪がボサボサに目元を隠すように伸びている。

どんな顔をしたやつか、


今一度確認しようと払いのけた枝毛の先に見えたものは



肺を凍り付かせたように呼吸を止めた

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