仮想世界でも、こんにちは

ぬまちゃん

第一章 会社勤めは大変だ

第1話 ヤバイ、死んじゃうよ~

「ほへー。今日のノルマやっと終わったー!」


 ジローは、安アパートのベットに勢いよく倒れ込んだ。お腹はすいているのだけれど、すきすぎていて体に力が入らない。


 取り敢えず水をがぶ飲みして胃袋を誤魔化さないと、多分一歩も動けないぞ! 最後の力を振り絞ってベッドから立ち上がり、台所までフラフラしながら歩いて行きコップをつかみ蛇口をひねる。


 グイとひねった蛇口からは物凄い勢いで生温い水道の水が出てきた。コップになみなみとそそがれた水をグイッと飲んでやっと一息ついた。


 それから、おもむろに周りを見渡して直ぐに口に放り込める食料を探す。部屋の中は投げ捨ててある着替えの服以外何も見えない。


 せっかく買ったパソコンやゲーム機は散らかってる部屋の何処かにあるか分からない。イヤイヤ、そんなお腹の足しにならない機械より口に入れられる物は無いのか? 


 必死になって探したが見つかりそうに無い。


 冷蔵庫の中身はここ一ヶ月開けてないので見るだけ無駄だし。遂にここで力尽きてしまうのか?


 休み明けになっても現場に出て来ない、ダメダメ社員の烙印を押されちゃう……つうか、3ヶ月後に白骨化して発見されるのか?


 ヤバイ! 特殊掃除人に見られたら恥ずかしい、あのアニメとあの雑誌は処分しないと……てか、そんな事考えてる余裕があるなら食べ物を探すのだ。


 そう言えば革靴は食べられると聞いたことがあるけど生はダメだろなあ。


 余計なことは考えるな。今必要な物は、食べられるものだ。


 ダメだお腹が減り過ぎて意識が遠のく、もう一杯水だ、水にはミネラルが入ってるからそれで飢えをしのぐんだ。イヤイヤ水道水にミネラルとか入っているのか? 確か高度浄水処理をすると、何も残らないんじゃなかったか?


 しまった! ペットボトルのミネラル水買っておくんだった。


 色々と考えているうちに、ジローは、ボンヤリと薄れる意識の中でこう思った。


「大体、なんで僕だけこんなひどい目に合わなきゃいけないんだよー。トラブルは全部現場対応だもんなぁ……」

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