第二十七話


 私が十四歳の時は色々と大変だった。前世の記憶を思い出して、ここが乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢だと言うことを知った。


 今までヒロインをいじめて来た私はその償いとして引きこもろうした。なのに、エドマンド様を初めとした攻略対象の令息達やヒロインのヴィクトリア様が引きこもらせてくれなかった。基本引きこもり体質の私は一人になりたかった。


 だけどダメだった。一人になりたかったはずなのに、皆と一緒にいると段々と楽しくなって一人になりたくないと思った。


 自分でも矛盾していると分かっていた。こんなに楽しいと思えたのは初めてだった。


 恋という感情を知って、楽しさを知って、辛さや、苦しさを知った。


 皆と出会えて良かった。本当に色々あったな。


 例えば、十四歳の冬。ハルに婚約指輪を貰った。凄く嬉しくて毎日指に嵌めていた。


 一週間後、ハルを好きだという人に盗まれた。その時の記憶は無い。


 ハルが言うには魔力を暴走させたらしい。


 勿論婚約指輪は取り返せたし、魔力の暴走も収まった。


 だけど記憶は戻らなかった。ハルにその事を言うと「あんな記憶が戻らなくていい」と吐き捨てるように言った。


 それほど酷い記憶だったのだろうか。だがハルが思い出さなくていいと言うならそれでいい。




 今思い返してみればとても懐かしいな。




「アリーヤ、そろそろ家に帰ろう」




「ハル! えぇ、今行くわ」




 愛しい人が私の名前を呼ぶ。


 私は愛しい人の隣に行くと自分の手を彼の手に重ねた―――――………。




 Fin
















 ハル、十七歳振り返りの時。








 アリーヤが十六歳で僕が十七歳の時。アリーヤに敬語を抜いて、呼び捨てで慣れた今日この頃。


 今日はアリーヤとデート。凄く楽しみにしていた。だってそりゃあそうだろう。大切な人と一緒に過ごせるのだから。


 正直僕はこの時絶対何か起こるだろうと思っていた。だっていつもなんかかんかトラブルが起きるのだから。


 だが、珍しいことに何も起こらなかった。デートは大成功に終わり、僕らの愛は尚更深まった。もう楽しすぎてテンションが物凄く上がった記憶がある。懐かしいな。


 全てが大切な思い出。僕の大切な宝物。


 アリーヤは僕の汚れていた真っ黒の心を綺麗にしてくれた。


 彼女がいなかったら僕は壊れていたかもしれない。彼女が僕の心を救ってくれた。アリーヤには感謝しか無い。


 アリーヤ、ありがとう。

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