番外編 ジェフ視点
可愛らしい笑顔の君。どうして君はそんなに可愛いのだろう。前まではヴィクトリア様をいじめていたというのに。
あのときのお茶会を機に君は文字通り、人が変わった。以前は笑う、と言っても完全な作り笑顔だったのに今は天使の如くフワリと微笑む。
あ~あ、早く婚約解消してくれないかなぁ。なんて、こんなこと言ったら不敬罪で捕まるだろうな。おっと、私事はこれくらいにして、何故僕がアリーヤ様を好きなったかお話するよ。
と、その前にこの話をする前に僕達が出逢ったときのことを軽く話すね。
◇◇◇◇◇
僕がアリーヤ様に初めて出逢ったのは今から四年前。僕が十四歳で、アリーヤ様が十歳の時だった。アリーヤ様は十歳とは思えない程の美しさで僕は思わず見惚れてしまった。
アッシュブロンドの髪、アメジスト色の瞳。バラ色の頬に桜色の唇。全てが彼女の美しさをより引き出していた。
だけど、そんなアリーヤ様はその美しさとは裏腹に、見事なまでにとんでもない性格の持ち主だった。
例えば、とても太っているご令嬢を見掛けると、天使の如く微笑んでこういったのだ。
「あら、とてもふくよかなこと。私にも分けて欲しいわ。」
その女性は顔が真っ青になったかと思うと倒れたよ。
その次は、お喋りを楽しんでいるご令嬢達がいるとこう言うのだ。
「まぁ、にぎやかですこと。小鳥さんが鳴いているのかしら。」
そのご令嬢達は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。僕達の出逢いはあまり良いとは言えなかった。
それから一年後、僕はヴィクトリア様に出逢った。一目惚れだった。僕は色々と、小さなアタックをしてきた。だけど僕は何故か、ヴィクトリア様に求婚する気にはなれなかった。自分でも不思議に思う。
そのまま三年が過ぎ、僕は十八歳になっていた。ヴィクトリア様はのことは好きだったが、少し熱も冷め始めていた。
その時だった。アリーヤ様がヴィクトリア様に悪事を働いていたことがバレ、断罪されたのは。僕は少し可哀相だとは思ったが、あまり気にしなかった。
そんなときだったよ。アリーヤ様にお茶会に招待されたのは。行くか行かまいか悩んだが、結局行くことにした。
僕は驚いた。何故なら、アリーヤ様が自分の罪を認めて、ヴィクトリア様に非礼を詫びたから。そこから少し、アリーヤ様の事が気になり始めた。
なのに、なのに笑うと可愛いアリーヤ様はエドマンド様と婚約した。僕が、僕が…………
アリーヤ様のことを好きと自覚した直後に。
その日は泣いたよ。十八歳にもなってあんなに泣いたのは初めてだ。
◇◇◇◇◇
と、まぁ、僕とアリーヤ様の出逢いからのお話はここまでかな。次は僕がアリーヤ様に完全に惚れたきっかけを話すね。
ある日、君は学園の廊下を歩いていたね。分厚い本を大切そうに抱えて。その時だった。君に不幸なことが起こったのは。とある男爵令嬢がいじめられていたのだ。僕は放置したよ。面倒臭かったし。でもアリーヤ様は違った。
「貴女達、彼女に何をしているのかしら。」
冷酷な笑みを浮かべながら言うアリーヤ様。
「……アリーヤ様! よく来て下さいました! この娘を断罪していたのですわっ」
そう言ったのは伯爵令嬢の一人。何を勘違いしているのやら、頬を紅潮させながらアリーヤ様に報告している。アリーヤ様はその言葉を聞いた瞬間、溜め息を突いた。まぁ、それはそうだろう。男爵令嬢を助ける為に声を掛けたのに、勘違いをした伯爵令嬢が嬉しそうに報告をしてきたのだから。
「私が聞いているのはそんなことでは無いわ。何故その男爵令嬢をいじめるのか聞いているのよ」
「えっ……」
「今後、その男爵令嬢に手を出さないこと。……よろしくて?」
チラリと横目で言うアリーヤ様。伯爵令嬢達はその言葉を聞いた瞬間に逃げて行ってしまったよ。だったら最初からやらなければ良いのに。
「貴女も今後何かあったら私に言いなさい。」
アリーヤ様は男爵令嬢にそれだけ言い残してさっさと言ってしまった。この時、僕は初めて彼女のことを格好良いと思ったよ。これをきっかけに僕は完全に彼女に惚れたんだ。
因みに、この出来事はエドマンド様と婚約する前の話だよ。
愛しいアリーヤ様。僕は君に出逢えて良かったよ。この手で抱き締めたい。髪を撫でたい。口付けを交わしたい。狂おしい。
そんな僕の願いはもう叶わないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます