三話:星

体感時間で約半日、休み休み移動し二人が訪れたのは、極東の中で最も広い都と呼ばれる場所だった。

カガリが管理していた村が十は入りそうな程に広く、建造物だけでも鮮やかで見ていて飽きない。

同じ人の住む場であるのに、天と地ほどの違いが伺える、そんな場所だ。


「どうでしょうか?私が知る限り最も華やかな場所なのですが。」


カガリの問い掛けにツバメは、ただただ凄いとだけ答える。

木材以外で作られた建物、地面に敷き詰められた石、色とりどりの建造物、何もかもがツバメを驚かせる。

中でも一番驚いたのは、光を放つ不思議な柱だった。

木でも石でもない変わった形の硬い柱の上部には火とは違ったキラキラした何かが、ガラスのケースに閉じ込められている。

ツバメの知る人が使う明かりとは火だけである。

見たことのないその明かりがなんであるのかわからないツバメは、カガリなら知っているのではないかと思い聞くことにした。

あれは何なの?と

質問をされたカガリはしばらく考え込む。


「アレは電気と言う物で、あなた様にわかりやすく言うとなると......そうですね、雷を閉じ込めてある物......でしょうか?」


カガリのふわっとした説明に、しかしツバメは驚愕する。

ツバメの知る雷とは大きな音を立てながら飛来する物である。

厳密に何であるかはわからないけれど、親からとても恐ろしい物である事は聞かされていた。

そんな物を人間は捕まえて、その上に明かりとして利用してしまうなんて凄いと。感心せずにはいられなかった。

ツバメはその事を知った上で、もう一度その明かりを見た。

炎と違い赤くなく、ユラユラと揺らめきもしないその明かりは、やっぱり不思議な物に見える。

しかし、暗闇を照らすその光は炎同様に確かに温かく、見ていて落ち着く物で、ツバメが見惚れるには充分な物だった。


「気に入ったのですか?」


カガリが聞く。

いくつもある光が暗闇を照らす様が、まるで夜空にあった星みたいだとツバメは感想を述べた。


「ふふ。」


カガリが街灯を見たのはこれが初めてではない。

都に遊びに来た際には何度も目にした事のある物だ。

すっかり当たり前になってしまったソレを星のようだと思った事など一度もなかった。

しかし、確かに言われて見れば似ているのかもしれないなんて思い、ツバメの感想につい笑みが零れた。


「まさか今の世界で星が見れるだなんて思いませんでした。ありがとうございます。小鳥さん。」


お礼の言葉と共に、カガリは頭の上のツバメを指で優しく撫でてやる。

それから二人は立ち並ぶ街灯の下を、上を見上げながらしばらく歩いて回る。

それはまるで星空を眺めながら歩くかのように

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