第301話 廃城3
「それで?八城はあのお荷物女を置いて来たのかしら?私は八城のことだから〜てっきり無理矢理にでも連れて来るものだとばかり思っていたのだけれど?」
バリケード付近で待っていた一華と合流直後、一華から掛けられたのはそんな言葉だった。
お荷物女とはいうまでもなく看取草の事だろうが、堅牢なこの朧中を突破されるとは考えにくい。
戻って来るのなら置いていくのが最善手だろう。
「大丈夫だろ、バリケードで覆われて防備は万端だ。此処にいる人も悪い人じゃない。あの人たちならいざという時に信用できる」
自身満々にそう言ってのけた八城の言葉をもっと理解出来ないと一華はわざとらしく首を傾げた。
「全てを投げて相手に委ねるのと信じて任せてるのは、全く違う様で居て全く同じ事なのよ?アナタがもし絶対に手放したくない何かを持っているのなら、本当は誰も信用してはいけないんじゃないかしら〜」
一華がなんの事を言っているのか、分からない八城ではない。
だが、守りたい者をこの先に連れて行けば今の八城では守り切る事が出来ない事は明らかだ。
他人を守る事は自身を守る事の数十倍難しい。
判断としては間違っていない筈だ。
「いま自分の判断は間違っていないって思ったわね〜?それ自体が大きな間違いだって気付いた方が良いじゃないかしら〜」
「勝手に人の心を読むな、それに俺の心配より、俺はお前の方が心配だけどな。俺はお前を戦力として信用はしても、人としては信頼してない、正直なところ道案内って名目がなかったらお前なんかとは行動したくないってのが本音だ」
念を押す様にそう言った八城に一華は含みのある笑いを返す。
「それは良い事よ〜じゃあ八城、最後の目的に行きましょう?アナタが信用していない女と一緒にね〜」
そう言って歩き始めた一日目の順路は昼から雨が降った。
だが子供が居ないためペースは早く、二人が進めるだけの道を最小限の感染者を斬りながら進み続け……
そして二日目にして、八城は目的地である『九十九里附属小学校』に到着したのだった。
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