第12話
*
「優一さん!」
「ん?」
「クリスマスはどこに行きます?」
放課後、優一は芹那と一緒に下校していた。
「クリスマスか……どこも混むだろうなぁ……」
「そうですね、ホテルは予約しておかないと入れませんよ?」
「なんでホテルに行く前提なんだよ」
「あ、じゃあ私の家が良いですか? クリスマスは……両親居ないので……」
「やめろ、頬を赤らめながらロウソクをだすな!」
今日も平常運転の芹那にツッコミを入れながら、優一はため息を吐きつつ足を進める。
「優一さん知らないんですか?」
「何がだよ」
「クリスマスの21時から翌日の深夜3時までを性の6時間と言ってですね……」
「んなもん知ってるよ」
「知ってるなら話しは早いですね! 優一さんはホテルとどっちかの部屋、どっちで始めてを迎えたいですか?」
「迎えねーよ、アホ」
「えぇ! なんでですか! 優一さんは性欲大魔神って聞いたのに!!」
「おいそれどこで聞いた……」
「えっと……八重先輩が!」
「高志の野郎……ぶっ殺す」
しかし、夜の時間は放っておくとしても、クリスマスどこに行くかを優一は実際悩んでいた。
口では毎回こんな風に冷たい事ばかり言う優一だが、結構芹那を大事にしている。
そんな優一が芹那のために一生懸命なのも事実で、実は試験勉強そっちのけでデートコースのリサーチをしていたりする。
「まぁ、クリスマスは適当にどっか連れてってやるから、お前は当日風邪引かないようにだけしてろ」
「本当ですか!? じゃあじゃあ! 私、SMグッズの専門店に……」
「年齢的に大丈夫なところにしろ!!」
こんな調子で当日は大丈夫なのだろうか?
優一はそんな事を考えながら、芹那を家に送り、自分の家に帰る……つもりだったが。
「えっと……あぁこれだな……」
優一はアクセサリーショップに来ていた。
女性向けのその店に優一がなぜ居るかというと、それはとある品物の確認に来たのだ。
「結構するなぁ……あの馬鹿……よりによってこんな高い物欲しがりやがって……」
それは少し前、修学旅行から帰った優一が芹那とデートをしていた時の事だった。
この店のショーウインドウに飾られたネックレスを芹那がジッと見ていたのを優一は覚えていた。
価格は25000円と高校生の優一には結構高額な商品だった。
「すみません」
「はい、どうかなさいましたか?」
「あの、これって取り置きとかってしてもらえますか?」
「はい、大丈夫でございますよ。ただ、取り置きの期間は二週間となりますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。それと、出来ればプレゼントように包装して欲しいんですけど?」
「はい、分かりました。それではこちらの用紙にお名前とお出湾番号をお願い致します」
「わかりました」
優一はこのネックレスを芹那へのクリスマスプレゼントにと考えていた。
流石に今は購入出来ないので、優一は店員に頼み取り置きをお願いする。
こうでもしないと売り切れてしまうような気がしたからだ。
今はクリスマスシーズン、優一と同じような考えの男も少なくは無いのだろう、店員さんの対応はなんだか慣れていた。
「あのーすいません……」
優一が用紙に必要な情報を記入していると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ん? あ、お前高志!」
「え? ゆ、優一? なんでここに?」
振り向いた優一の後ろには、学校帰りと思われる高志の姿があった。
「何してるんだよ優一」
「ん……あぁ……いや……」
優一はなんとなく芹那にプレゼントを買っている事がバレるのが気恥ずかしく感じた。
「お客様、用紙の記入はお済みでしょうか?」
「あ、あぁはい、これでお願いします」
「かしこまりました。それでは購入の際はこの用紙をレジに提示してください」
「あ、あぁ……はい」
「ほほう……取り置き券か……」
「な、なんだよ……」
「クリスマスプレゼントか?」
「そうだよ!! なんか悪いかよ!!」
優一がそう言うと、高志はニヤニヤしながら優一に言う。
「芹那ちゃんに? あだっ!!」
「いい加減にしろ、この野郎」
優一は芹那の名前を出された瞬間に、高志の頭に手刀を食らわせる。
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