甘え上手な彼女4 冬編
Joker
第1話
修学旅行から帰って高志を待っていたのは、期末テストと言う地獄だった。
「えっと……」
「にゃー」
「あぁ、チャコ。今は遊んでやれないんだ」
「にゃ……」
机に向かって勉強をしていた高志に遊んで貰おうと、高志が飼っている飼い猫のチャコが机の上に乗る。
しかし、高志は今はそれどころでは無かった。
二学期の期末テストが近いのだ。
「にゃーにゃ!」
「コラ! 馬鹿! 背中を上るな!!」
チャコはどうしても構って欲しい様子で、高志の背中に乗る。
高志はそんなチャコの首根っこを掴み、ベッド上に座らせる。
「にゃー」
「はぁ……俺は忙しいんだ、母さんか父さんに構って貰ってくれ」
「……にゃ……」
チャコはまるで高志の言葉を理解したかのように、高志の部屋を後にしていった。
「ふぅ……さて、勉強勉強」
なぜ高志がここまで勉強を頑張っているか、それは冬休みが関係している。
成績不信の生徒は冬休みに補習があるのだ。
しかもその補習の日は、年に一度のクリスマスイブ。 クリスマスを紗弥と一緒に過ごしたい高志は、必死になって勉強をしていた。
「うぅ……寒い寒い……」
季節はもう12月。
修学旅行で色々あった高志にとって、クリスマスは重要なイベントだった。
*
「高志居る?」
「ん? あぁ、紗弥。どうしたんだ?」
高志が自分の部屋で勉強をしていると、私服姿の紗弥が鞄を持って部屋にやってきた。
最近では紗弥が高志の家に来すぎて、最早インターホンを鳴らさずに入ってくる。
「勉強一緒にしようと思って……ダメ?」
首を軽く傾げながら尋ねてくる紗弥を見て、高志は頬を赤らめる。
相変わらず紗弥は可愛いなと思いながら、高志は紗弥に笑顔で答える。
「あぁ良いよ」
「ありがと」
高志は机をとクッションを出して、二人で勉強出来るように環境を整える。
「ねぇ、横に行っても良い?」
「え? あ、あぁ……別に良いけど?」
高志はお互いに勉強しやすいかと思い、対面で座れるようにクッションを置いていたのだが、紗弥の提案で隣同士に座ることになってしまった。
(隣同士だと、教科書とか広げにくいと思うんだけど……)
高志は心の中でそう思いながら、クッションを隣に置く。
二人は並んで勉強を始めたのだが……高志はどうにも落ち着かなかった。
(や、やべぇ……紗弥が気になって勉強に集中出来ねぇ……)
紗弥から香って来る良い香りや、女性特有の柔らかい感触に惑わされ、高志は勉強に集中出来ていなかった。
そんな高志に気がついた紗弥は、待ってましたと言わんばかりに高志に言う。
「集中してる?」
「あ……いや……さ、紗弥……やっぱり対面で勉強しないか? その……紗弥が気になって……集中出来ない……」
「なんで気になるの?」
「え!? そ、そりゃあ……好きな子が隣で……しかもこんな密着してたら気になるよ」
「ふぅ~ん……でも私はこのままが良い」
「ちょっ! さ、紗弥……」
紗弥はそう言うと、高志の空いている手を握り、肩に頭を乗せて来る。
「さ、紗弥……勉強しようよ……」
「ダメ。もう少しこのままが良い……」
「うっ……す、少しだけだよ」
「うん……」
高志は紗弥の頼みを受け入れる。
紗弥はそのまま目を瞑る。
高志は空いた右手で勉強を続ける。
「ねぇ」
「ん? どうかしたの?」
「もっと話そうよ」
「え? べ、勉強は……」
「そんなの後で良いからさ」
「うわ!」
紗弥は高志にそう言うと、高志を押し倒して高志の上に乗っかり、そのままうつ伏せになる。
「暖かーい」
「さ、紗弥! な、何やってるの!!」
「何って……高志の上に乗ってるんだよ」
「そ、それは分かるけど……べ、勉強出来ないよ……」
「させたくないからこうしたんだもん……」
「ちょっ……さ、紗弥……まずいって!」
「何がまずいの? 私たち付き合ってるんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「じゃあ良いじゃん……」
高志は顔を赤くしながら、紗弥と目を合わせる。
紗弥はどこかうっとりした様子で高志を見ていた。 頬をわずかに赤らめた紗弥に、高志は思わずドキッとする。
「高志の心臓……凄くドキドキしてる……」
「こ、こんな状況なんだ……仕方ないだろ……」
「うふふ……そうだよね」
「さ、紗弥もだろ!」
「うん、凄くドキドキしてる……」
紗弥の心臓の音が、高志にも伝わっていた。
紗弥は笑顔でそう言うと、高志の顔に自分の顔を近づける。
「ちゅーしよ」
「い、良いけど……一回だけね」
「なんで?」
「……べ、勉強しなきゃ」
「ん……分かった」
紗弥はそう言うと、高志の唇に自分の唇を合わせる。
「ん……」
思わず声を出してしまった紗弥に、高志は更にドキドキする。
そんな紗弥を高志は優しく抱きしめる。
「……はぁ……ねぇ……もう一回」
「ダメ、一回って約束だ……ってむぐ……」
「ん……」
そんな高志の言葉を無視して紗弥は高志の唇に再び自分の唇を重ねる。
「ん……はぁ……さ、紗弥……」
「ん? なぁに?」
約束を破った紗弥に高志は何か言ってやろうと考えたが、紗弥は悪びれもせずに笑みを浮かべながら高志に笑みを浮かべる。
「一回って言ったろ」
「知ーらない」
「はぁ……まぁ良いけど……じゃあそろそろ退いてくれ」
「やーだ」
高志の言葉を無視し、紗弥は高志の上から離れようとしない。
「こ、こら……紗弥……離れてくれ」
「いやー。ねぇ……ベッド行こ……」
「え!!」
高志は紗弥の言葉に驚いた。
この状況、そしてベッド……高志は考えた瞬間自分の顔が熱くなるのを感じた。
「ま、待って……な、なんでそうなるの!」
「ダメ?」
「だ、ダメに決まって……」
高志がそう言おうとした瞬間、高志の目に紗弥の顔が映り込む。
不安そうでどこか寂しそうな表情を浮かべる紗弥。
高志は起き上がり、そんな紗弥を抱きしめる。
「どうした? 何かあった?」
「……なんか……高志が私から離れて行く気がして……」
修学旅行から帰って来てから、紗弥は時折寂しそうな表情をしていた。
色々あった修学旅行。
それに、高志には紗弥と修学旅行でした約束果たす義務もある……。
修学旅行から帰って来て直ぐは色々あって大変で、未だにあの夜の約束を果たせて居ない。
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