第9話 因縁編①
ここは南の大森林の東側の端(はずれ)。人族は、まあ近寄らない場所であろうそんな濃い森林地帯。
高い魔力を放出する地域でもあり、高位の魔力を有する種族にとってはとても心地よい場所であった。
そんな地域にどこからかやってきたユニコーン族百十数とダークエルフ族八百人程度が住み着き始めていた。そしてそれぞれ村を形成していた。
ユニコーン族が形成している村のほうがより魔力の密度が高く、そして、自然に成る食物が豊富であった。
ダークエルフはユニコーン族の地域を狙っていた。好戦的でもある種族であるから、実力行使でその地域を奪うべく攻め入っていた。
単純な力ではユニコーン族のほうが圧倒的に勝るが、魔力と使える魔法の種類が豊富であることと、数が圧倒的に勝るダークエルフ。小競り合いはダークエルフが有利に進めていた。
そして小競り合いが何十年も続くことになる。
今まではケガ人が出ることがあっても死者が出ることが無かったが、とうとうユニコーン族に死者がひとり出てしまった。
これを機にお互いの種族で一気に泥沼化が進み気分も高揚している。
結局のところ全面戦争となる。
そして今はダークエルフ族が支配するが、良く小競り合いが発生していた場所にてダークエルフとユニコーンが対峙する。
岩場で起伏があるが、ある程度の平地地帯になっている。岩場から逆はどんどんと密度の濃い草原地帯になってはいたが決戦を行うにはまあ妥当という場所である。
ユニコーンのリーダーが相手への挑発と友軍への鼓舞をするために演説を行う。
「この場所は祖国を出てようやく手に入れた素晴らしい安住の地。そこに住み続けてきたのは我々だ。
そしてこの場所へ野蛮な暴力によって奪おうとしている者たちがおる。
そう。ダークエルフだ!
そして、とうとう我々の尊い仲間の命まで奪われてしまった。こんなことが許されるであろうか?
否!
我々はこの地の主権と、尊い仲間のために戦わなければならない。」
『うおおおぉぉぉーーーー!』
最高潮の盛り上がりをみせるユニコーン族の者達。
そしてダークエルフのリーダーも声を上げる。しかし、ユニコーン族とは違ってどこか淡々と作業的である。
「我々は知的で高貴な、本来は流血を望まない穏やかな一族。散々穏やかな解決のために何度も使者を送りご退場を願ってきた。
しかし、野蛮なるユニコーン族はこうして力による解決をご希望である。
徹底的にお相手をして差し上げようではないか!」
そして始まる全面対決!
ユニコーン族のリーダーが号令を発する。
「突撃ィィーーーーーー!」
『おおおおぉぉ!!』
続いてダークエルフのリーダーが声を荒げる。
「迎え撃って差し上げろ!」
そして部下のダークエルフ達は粛々と作業を開始する。
充分な広さはあるとはいえ、片方は起伏の激しい岩場となっておりまた反対は奥に行くにつれて草が濃くなり駆け抜けることは難しい。
ユニコーン軍は数も少ないこともあり、二列に隊列を組んでダークエルフの支配地域へ侵入していく。作戦としては妥当なところであろう。
しかし、ダークエルフはその行動を完全に予測しており、それに対抗するための準備は万端であった。
激しい戦闘になると思いきや、勝負は一瞬で決まる。
ダークエルフ達はユニコーン達をギリギリまで引きつけて一気に攻勢をかける。
まずは草原地域に隠れていた者たちが現れて弓の雨を降らず。ユニコーンたちは足を止め、一部はダークエルフのところへ向かう。そしてその後、
『ドッカーーーン!』
ユニコーンたちのすぐ横から大爆発が起きる。エルフたちが起爆式の魔法を予め仕掛けて置いたものを一気に爆発させたのである。さらに追い打ちでダークエルフ達は数々の攻撃魔法を放ってくる。
ユニコーン達も雷や風の魔法で、先頭の集団は肉弾戦でも応戦するが、あらかたの勝負は決してしまった。時間にして十五分は掛かっていないだろう。
ユニコーン達はリーダーのいる防衛線まで後退。事実上の撤退である。
この十五分の戦いの被害としてユニコーン族は死者十人とケガ人は多数。ダークエルフ族は死者一名とケガ人が数人。
結果は目を見るより明らかであった。
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