いい歳こいたおっさんだが念願叶って異世界に来ました!たまにドラゴンが来て大変だけど、それ以外はモッフモフの萌へぇの世界でした。

Tさん

ファテマ編

第1話 念願かなって異世界へ。ホントに異世界なの?

「主任。お疲れ様です! あ、上席でしたね。すみません。」

「お先っす! スーパー主任!」

 主人公の後輩と思われる者たちがどんどんと帰宅しているようである。

「ああ、おつかれ! ってか、オレをスーパーと呼ぶな!」

 この春、少し昇進して上席主任となった。今までは普通の主任だったが、周りからは『スーパー主任』などと呼ばれていた。まあ、みんなオレの仕事を認めてくれていたからだと思うが、或いは仕事のし過ぎを暗に揶揄されている。うーん、両方かな。でも、実際に昇進したのだし認めてくれていると思っている。


 仕事のし過ぎだが、この会社はまだまだホワイトだよ。マジで。みんな遅くても二十時には帰るからな。前の会社なんてだいたい二十三時くらいまで働くのは普通で早めに帰る必要がある時は事前に上司に相談しとかないといけなかったからな。しかしそれだけやっても残業代は一定でカットされる。まあ、普通にブラックだったわけだ。


 二十代後半の時、世の中不景気で前の会社が潰れている。まあ、あれだけ働いていて残業代もまともに出せないのなら、そりゃあ、みんな遅かれ早かれだと感じていたけどな。

 それで当時取引先だったこちらの大手商社に仕事を認められていたのでそのまま入社させて貰った。


 今は役職も付き、給料もまあ同年代よりは貰ってる方だし、そこそこ勝ち組の方だと自負はしている。

 あとは結婚だが………、なにせん転職まではごたごたばたばたしており結婚はできなかったんだよなあ。

 親はもちろん、弟にまでぐちぐち言われる次第。弟は早々に結婚しやがって幸せそうに暮らしてやがるよ。で、甥と姪がいるわけだが、そりゃあめっちゃ可愛くて大好きだよ。

 あああ、ちくしょー、オレも結婚してぇよ。


 ………。


 なんでこんなこと考えてんだろうか。今は仕事も急ぎのないから今日はオレも帰ろうかな。ゲームの続きもしなきゃだし、アニメも見なきゃ出しな。

 ああ、最近は異世界転生モノが流行ってるよなぁ。昔は転生しないのが流行ってたけど時代はちょっと変えて繰り返すみたいだな。大学の時はホントにアニメにどっぷりだったな。


 前の会社ではアニメもゲームもしてる暇なくて離れてたけど、やっぱり一度オタクになってしまったらそう簡単に抜け出せないわけで、今、ちょっと余裕が出てきたらやっぱりオタクに戻ってしまったわ。でもまあ、オタク以上に楽しいことが世の中に無いんだよなぁ………。

 あ、だから彼女を探せって話なんだろうことは百も承知だからな。

 ってまた妄想が!? 早く帰んなきゃ!


 ああ、通勤ってほんと面倒だよな。早く偉い人たちがどこでも移動できるなんちゃらドア~ってやつ作ってくんないかな。

 あと、オレ各駅しか停まんない駅に住んでるから結局電車だけで45分くらい乗る。うーん、意味ない。家賃補助もすこし出てるんだし、せめて急行が停まる駅に引っ越さないと。

 っていうか、もっと都内の中心に住んじゃっても良いよな。なんか、そっちのほうが出会いもありそうだし。


 ってラッキー! 席が空いたぞ。まだ30分くらいあるから座っちゃお。

 ふう。今日もつっかれたなぁ。うーん、来月はまた海外出張で二週間出掛けるからな。準備しなきゃだよ。日用品も無くなってきてるし、それよりも仕事の準備だよ。資料作成あんまり進んでない。ってかあいつらオレに出張に行かせるくせに内容ぜんぜん決めてくれないんだもん。マジで困るわ………。



 うーーーーん。いやあ、マジで寝てた。最近は残業少ないけど、仕事自体は濃密にやってるから疲れてるよ。

 やべっ。よだれ。っていうか、オレこんなに寝てて乗り過ごしてないかい? ヤバくない?


 ………!?


 っていうか、ここはどこだ?

 えっと、確かオレは電車で帰宅中で座れてそれで寝てて………。

 今はどう見ても森に立っている。なんで立ってんだオレ? かなり濃い森だが、そこそこ広く舗装された馬車道の真ん中に。

 いやまて、気にするところはそこじゃない。あ、服装とかどうなって、って、見たことも無い服。あきらかにどっかの国の民族衣装なものを着ている。

 うーん、とりあえず自分の鵬をつねってみる。


 イテテテッ!


 ってか、夢だろうとなんだろうと抓ったら普通痛いわ! 誰だよ。このくだりを考えた奴は!

 うん。ということは、こ、こっ、これはわぁぁぁぁぁ!

 もしかして、


 念願の!?





 いやっ、ただの夢だよな!





 まさか、異世界に転生したと思った? ざんねーーん。ただの夢でした! ってことでしょうよ。そんな簡単に異世界とか行けたら苦労しないわ!

 たまーーに見るよな。自覚のある夢ってさ。ってかさあ、呑気に寝てるけど流石にそろそろ起きないと寝過ごしちゃうよ。せっかく早く帰ったのに乗り過ごしてたら意味ないじゃんよ!

 でも、ホントに異世界だったらどうしよう。異世界転生だったらだいたい死んでからの転生になるもんな。オレ、死んじゃった?

 うーん、日本で住んでた時の記憶はある。でも死んだって記憶はない。まあ、寝てたのもあるけど。

 鏡見てないからわからんけど、服装は違うみたいだけど容姿は変わって無さそうだもんね。




 ゴゴゴゴゴッッゴゴォォォォ!!!




 何やら爆音が向こうで聞こえる。そして、それはどんどんと大きくなる。こっちへやってくるようだ。

 一応、爆音は無くなったのだが、スリーテンポくらい遅れて、とても激しい突風が吹いた!


「うわぁぁぁ!!!」


『ドンッ!』


 突風で身体が吹き飛ばされ近くの木にぶつけられた。

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