第10話 お嬢様、猫は被るものでございます。

 何と言うことでしょう。

 あの事故は自損事故だったと、自分一人が死んだ自損事故だと思い込んでいて、勝手に納得してしまってました。実際には、こんなに可愛い子猫を巻き込んでいたのに。

 誠に申し訳ありません。

「なーご」

 相変わらず猫語はわかりませんが、怒っていないように感じます。

(少々回り道になりますが、神として神界に迎えることに変わりはありませんから)

 そうなのですか……あ、そうするとお嬢様の人生は?

(問題ありません。人として真っ当な生涯を終えてからの話です)

 それは何よりです。

(ただ、神獣としての記憶は、人として生きるためにはむしろ妨げとなりかねません)

 確かに、そうかもしれません。

(そこで、その記憶は封印することになりました。今生の終るときまで)

 それで、今のお嬢様に影響は出ないのですか?

(問題ありません。今までも、あなたに話しかける時しか神獣の記憶は目覚めていませんでしたから)

 なるほど。だからわたくしにだけ猫語だったのですね。

「にゃあ」

 はい、わかりました。……相変わらず猫語はわかりませんが。

 しかし、そうなると猫のお嬢様とは当分の間、お別れですね。寂しい気もしますが、わたくしの前世も終わってしまったら一瞬に思えるので、またすぐに会えるような気もします。

 ……いえ、わたくしの扱いはどうなるのでしょうか、その場合? 転生した神獣様を殺めてしまったわけですから、地獄行きとか。

(それはありません。あれは不幸な事故でした)

 お咎めなしですか。なら、このままなのでしょうか?

(はい。あなたには、神獣の魂を宿したこの娘を、生涯見守る役目をお願いします)

 あらためて、女神様から背後霊に任ぜられました。

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