第2話 よくない話でございます。
死んだはずのわたくしですが、なぜか赤子を抱く女性を見下ろしております。
それも、足で立つでもなく、なんともあやふやな宙に浮いたような感じで。
しかし、赤子に乳を与える母親の姿は、何とも心が癒されます。いえ、決して乳房に肉欲を催したりはしません。ジジイな上に、どうも肉体がないみたいなので。
手足の感覚は無く、それどころか瞬きも出来ません。それでも目玉が干からびないのは、目玉すらないからなのでしょう。
その目にしても、なぜか赤子に釘付けです。他に視線を移すことは出来ません。逆に自分の視点が、赤子の顔を中心にグルグル回ります。若干、前後に移動は出来ますが、大体、半径三メートルほどの円の中に閉じ込められてます。
赤子の名前は、タニアというようです。女の子、お嬢様ですね。父親らしい男性も時折現れ、母親をソフィアと呼んでいました。今時のキラキラネーム一家でなければ、ここは日本ではないと言う事でしょう。
という以前に、両親も赤子も金髪碧眼なので、疑問の余地もございません。
そんなわけで、わたくしのお嬢様中心な第二の人生が始まりました。
いえ……肉体が無いので、幽生とか霊生と呼ぶべきかもしれませんが。
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