第42話 ジュライとブルーベリー王妃の本当の願い

「アップルは僕が助ける!」

 ジュライとブルーベリー王妃の話し合いは、平行線をたどる。

「きれい事ばかり並べる神様に、困っている人間の苦しみは分からないだろうね。」

「なに?」

「私だって純粋でいたかった。でも何かを得るためには、自分の手を汚さなければ、手に入れることはできなかった。神は私を救ってはくれなかった。罪は、困っている人間を救わない神にある! 悪いのは、神様よ!」

「こうなったら、どちらかが滅びるまで戦うしかないのか!?」

「神も大したことが無いのね。結局は、武力行使? 邪悪な人間と変わらないじゃない。そういうのを人間同士なら殺人って言うのよ!」

 邪神に魂を売って甦ったブルーベリー王妃は、黒い邪悪なエネルギー破でジュライを攻撃する。

「うわあ!?」

 ブルーベリー王妃の先制攻撃に不意を突かれたジュライは、辛うじて黒いエネルギー破を避ける。

「なんて腹黒いエネルギー破なんだ!?」

「神は、神に取って望ましい行いを求める。もし神の望む行いをしない者は、邪悪な人間として処分しようとする。どうして?」

「いじめや暴力で他人を傷つけた。そんなことはしてはいけなかったんだ。」

「なぜ? 私が何をしたというの? 人を殺した? 殺してないわ! 食い逃げ? してないわ! 銀行強盗? 私は社会的な罪は侵していない! 私の何が悪いというのよ?」

「無視やいじめ、暴力は罪だ! 罪に大きいも小さいもないんだ!」

「やはり神に何を言っても無駄ね。罪を犯した邪悪なる人間を救ってくれるのは、邪神様だけね。」

「邪神様とは何者だ!?」

「あら? あなた邪神様を知らないの? ケッケッケ!」

 ブルーベリー王妃は、ジュライが邪神様の正体を知らないのでバカにして笑う。

「何がおかしい!?」

「所詮、人間なんて、神様の暇つぶしの存在でしかないのよ! 死ねえ!」

 ブルーベリー王妃は黒い邪悪なエネルギー破をジュライに向けて複数飛ばす。

「神様、僕に少しだけ勇気を与えて下さい!」

 ジュライは、ナイトのチェスの駒らしく、剣を構えて、ブルーベリー王妃に戦いを挑む。

「でい!」

 ジュライは、ブルーベリー王妃の放った邪悪なエネルギー破を真っ二つに斬る。

「なに!? 邪悪な塊を斬った!?」

「デヤアアアー! ダダダダダダダッー!」

 複数の邪悪なエネルギー破は、全てジュライに斬られた。

「バカな!? 私の心の闇が、こうも簡単に斬られるなんて!?」

「罪も汚れも全て斬る! それが神の使徒だ!」

 ジュライは、鎧の背中の羽を羽ばたかせ加速して、怯んでいるブルーベリー王妃に突進する。

「ギャアアアアアアー!?」

 ジュライの剣がブルーベリー王妃の胸を突き刺す。

「これで終わりだ!」

「そ・・・それは・・・どうかしら?」

 ブルーベリー王妃は剣で刺されたにも関わらず、不敵な笑みを浮かべている。 

「ケッケッケ! 手に入れたぞ! 神の使徒の邪悪! アップルを殺されて怒ったおまえの汚れた心を! ケッケッケ!」

 ブルーベリー王妃の本当の狙いは、自分が刺されることによって、神の使徒であるジュライの邪悪を手に入れることであった。

「おまえが殺したのは、私ではない。」

「なに!?」

 ブルーベリー王妃の亡霊が、ブルーベリーの体から出てきた。

「ブルーベリーさん!?」

 ジュライが剣で刺したのは、アリコから母と娘でパンジャにやって来た、母親のブルーベリーだった。

「ケッケッケ! 人殺し! 神の使徒が人を殺してる! ケッケッケ!」

 ブルーベリー王妃の狙いは、人間を救済するはずの純粋な存在の神の使徒を邪悪に染めることだった。

「ブルーベリーさん!? 大丈夫ですか!?」

 ブルーベリーを抱きかかえるジュライ。

「す・・・すいません・・・私は・・・ただ娘の幸せを・・・願っただけだったのですが・・・。」

 ブルーベリーは、娘のストロベリーの幸せを祈っただけだった。

「そこに私がつけ込みました。ケッケッケ!」

 ブルーベリー王妃が勝利の笑いを浮かべる。

「なんて酷い!? あなたは本当に優しいアップルの母親なんですか!?」

 ジュライは、ブルーベリー王妃の冷酷な態度に恐怖する。

「そうよ。私はアップルの母親よ。ドジっ子、ダメっ子、使えない子、いらない子と散々バカにしてきた実の母親です。ケッケッケ!」

 汚れ切っているブルーベリー王妃。

「なんて酷い母親だ!?」

「ありがとう。誉め言葉と受け取っておくわ。ケッケッケ!」

 ブルーベリー王妃には、どんな言葉も届かない。

「そして、私はアップルの母親でもあるけど、私には、もう一人、娘がいる。私の本当の娘。」

「なにを!?」

 ジュライには、嫌な予感がした。

「甦れ! 私のカワイイ愛娘! ストロベリーよ!」

 ブルーベリー王妃の亡霊の言葉に、ジュライの体から生み出された邪悪が一つに結集していく。

「忌々しいアップルが女王? 何かの手違いだわ。女王になるのは、この私よ!」

 邪悪の中かアップルの姉のストロベリーが甦る。

「子供が死んで母親が願うことは決まっている。死んだ子供が生き返ることだ! そのためなら魂を悪魔にでも売ってやる! ケッケッケ!」

 ブルーベリー王妃の怨念が、アップルに食べられて死んだ娘のストロベリーを復活させる。

 つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る