第35話 アップルと、ご褒美と罰

「闇に滅せよ! 10億の邪悪なる人間の魂よ!」

 体内の邪悪なる人間の魂が、純粋なアップルによって浄化されたことによって、マーチの肉体を保つことができなくなっていた。

「どうせ、俺を倒しても、また次の邪悪なる人間の魂が現れるぞ! この世に人間がいる限り、闇は生れ続けるのだ! ざまあみろ! キャッハッハ!」

「倒せばいい。」

「ああん?」

「邪悪な人間が現れたら、何度でも倒せばいい。私が神の名の元に成敗してあげるわ。」

 アップルは余裕の表情で邪悪なる人間の魂の集合体に言い放つ。

「うわあ!? 消えたくないよ!? 嫌だ!? 死にたくないよ!? ギャア!」

 最後は人間の様に命乞いをして、邪悪なる人間の魂の集合体は、神々しい光の渦に消されていった。

「終わりましたね。アップル様。」

「いいえ。終わりではありません。これからが始まりです。」

「さすがアップル様。志がお高い。」

「私の顔が3人っていうのも、何だか不気味ね。」

「ええー!? おもしろいでいいじゃないですか?」

「そうですよ。私、アップル様の顔、気に入ってますよ。ニコッ。」

 現状、顔はアップルのキング、クイーン、ナイトのチェスの駒の鎧を着た3人がいる。

「アハハ。キングとクイーンに言われてもね。あなたたちも早く、私とジュライのように、運命の人に出会いなさい。」

「どこにいるんですかね? 私の運命の人。」

「早く出会わないと、婚期を逃すわよ。」

「神の使徒の私たちに婚期があるのだろうか?」

 本気で悩み込む神の使徒のジャニュアリーとマーチ。

「ガールズトークは、この辺にして、下で人々が待っているわ。」

「そうですね。運命の人は悩んでも現れないですからね。」

「やっぱり私の名前はアップル3ですか?」

「なんだか神の使徒だけど、私たちって、強化人間みたいね。」

 ブツクサ言いながらも、アップルたち3人は、人々の元へ舞い降りる。


「アップル様だ!」

「アップル様が生きておられたぞ!」

「やったー! アップル様の勝利だ!」

「パンジャは救われたんだ!」

「俺たちは生きているぞ!」

「みんな! 助かったんだ!」

 パンジャの家臣、兵士、海岸線付近に住んでいる国民、アリコから避難してきた人々が、アップルたち3人を笑顔で出迎える。

「みなさん! ただいま!」

「アップル様! おかえりなさい!」

 飾らないのがアップルのスタイルである。

「みなさんが無事で本当に良かった。生きてるだけで丸儲けですね。私たちは、死んでしまった人たちの分まで、力強く生きなければいけません。だって、私たちは生きているのですから。一緒にがんばりましょう。」

「はい。」

 アップルは、人々に命の尊さを訴える。そして、これから共に生きていくとエールを送る。

「今回はパンジャの領土は襲われることなく、敵を倒せました。みなさんには、故郷が再興するまでの当分の間、パンジャで生活してもらうことになります。」

 パンジャ人1億2000万人。ジュライが食べた2000万人を引くと、1億人。そこにアリコ人5000万人のうち、生き残った2000万人を足すと、パンジャで生活する人口は、1臆2000万人になる。

「アップル3。みなさんを出してください。」

「はい。アップル様。」

 アップル3ことクイーンの神の使徒マーチの大きな口から大量の人々が現れる。

「ナイチャの生き残った人々です。みなさんと仲良くパンジャで暮らしてもらいます。」

「アップル様、助けて下さり、ありがとうございました。」

「いえいえ、あなた方の心が純粋な人間だったということです。邪悪な人間は全員、消滅しましたからね。」

 純粋種なアップルは、世界を滅ぼす邪悪な人間は、心が汚れているので救うことができない。

「助けてもらって悪いんですが、私たちは、いつになったら故郷のナイチャに帰れるんだ? 早く故郷に帰りたいんだ!」

「大丈夫です。直ぐにナイチャとアリコには、復興チームを送ります。住環境が整えば、みなさんには故郷に帰ってもらえますよ。」

「ありがとうございます。アップル様は、まさに神の様なお方だ。」

「そんな大げさな。アッハッハッハ。」

 神になると大口をたたいたのはアップル本人である。こうしてナイチャの純粋な人間1億人もパンジャで暮らすことになった。パンジャの人口は2億人を超えた。

「グアバ! キウイ! クリ! キワノ!」

「はい! アップル様!」

「あなたたちは、直ぐに会議を開き、ナイチャとアリコの復興作戦を練って行動に移しなさい! これが今回、役立たずだったあなたたちへの罰です!」

「了解しました! アップル様!」

 こうして、パンジャの家臣たちは、ナイチャとアリコの復興に尽力することになる。

「あなたたち親子には、何回も何回も助けられましたね。」

 アップルは、名も無きアリコ人の親子の元にやって来た。

「いえ、私たちの方こそ助けていただいてありがとうございます。私たち親子が今、生きていられるのもアップル様が助けて下さったおかげです。」

「アップルお姉ちゃん、ありがとう。」

「こちらこそ。本当にあなた方、親子には感謝しています。ただの普通の非難している親子なのに、あなたたちには苦境であっても人間の信じる純粋な心、生きる強さを、私も分けてもらいました。おかげで、私も諦めずに生きてるしね。ニコッ。」

 アップルは、女の子に優しく笑いかける。

「よって、女王の私より、あなたたち親子に褒美を与えます。お母さんには、ブルーベリーの名を、娘さんには、ストロベリーの名を授けます。」

 ブルーベリーとは、亡きアップルの本当の母親の名前であり、ストロベリーとは、亡きアップルの姉の名前である。

「あ、ありがとうございます!?」

「やったー! 私にも名前ができた! ブルーベリーお母さん! 私の名前は、ストロベリーよ!」

 アリコ人の名も無き親子は、自分の名前を持つことができて、飛び跳ねながら喜んだ。

「さあ、アップル2、アップル3。パンジャ人の仕分け作業を始めるぞ。」

「はい、アップル様。」

 アップルは、パンジャ人の中で邪悪な人間をナイチャとアリコの被災地に送り届けて、奴隷として働かし、心の穢れが取れたものはパンジャに戻すつもりだった。

 つづく。

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