第30話 アップルとドーム
「死ね! 神に逆らう愚か者ども!」
「あれは!? クイーン!?」
ノアの箱舟の上空に、クイーンの神の使徒マーチが現れた。
「クソッ!? もうパンジャの陸は見えているのに!?」
視界には、パンジャ国の大地が見えていた。
「残念ですね。あなた方が頼りにしているナイトの神の使徒は、私のスピードについてこれずに置いてきました。まだアリコにいるんじゃないですかね。キャッハッハ。」
マーチは、アップルのことを思い出してバカにして笑う。
「こら! マーチ!」
「おや? これは、さっきの小娘の声だ?」
「私が着くまで大人しく待っていなさい! 今度こそ、ボコボコにしてやる!」
「魔法か何かの通信手段ですかね? いいでしょう。あなたがパンジャに着いた時に、苦痛で歪む表情が見れるように、今から、ここにいる人間を血祭りにしてあげましょう! キャッハッハ!」
「なんですって!? やめろー!? やめなさいー!」
クイーンがノアの箱舟を攻撃しようとする。全身の8つの口を開けて、一斉にエネルギー破を吐き出そうとしている。
「沈むがいい! 邪悪な人間共よ!」
ドドドドドドドドド! マーチの全砲門からエネルギー破が、ノアの箱舟を鎮めようと攻撃を始めた。
「そうはさせるか!」
その時、アップル2が神々しい光を放ち、金色の輝かしい光でノアの箱舟を覆う。マーチの攻撃は、全て光にかき消された。
「これはなんだ!? まさか!? おまえも神の使徒だというのか!? ということは!? そのノアの箱舟は、本物!? 神様のノアの箱舟だというのか!?」
マーチにとって、もう一人、神の使徒がいたことと、ノアの箱舟が本物であったことは誤算であった。
「アップル2、ありがとう。」
「いいえ、こちらこそありがとうです。」
「え?」
「私は少し人間の態度を疑いましたが、アップル様と人間たちを見ていたら、何だか信じてみたくなったんです。もう少し人間を知りたいなって。それに今は、あの親子を助けてあげないと。」
「そうね。あの親子には借りがあるもんね。他の人間はお腹が空いたら、デザート代わりに食べてしまいましょう。」
「やったー! アップル様が到着するまで、みなさんをお守りしますね。」
「お願いね! もうすぐ私もたどり着くから!」
神の使徒とは、食欲旺盛であった。
「クソッ!? ここにも人間を守る出来損ないの神の使徒がいたか!? 神様は人間を減らせと仰ったのに!? どうせ、ノアの箱舟も神様に勝手に持ち出したに決まっている!?」
「違うよ。キングの私は、ノアの箱舟を使用する権限があるんだよ。クイーンの君には、そんな権利はないんだろうね。」
「クックククククッ!? バカにするな!? キングだろうが、私をバカにすることは許さん!?」
マーチは、頭の欠陥が破裂しそうなくらい頭に血が上り激怒する。
「なんなんだ!? 自分勝手な奴だな!? まるで、おまえは人間みたいだ!?」
アップル2は、マーチの言い分を聞いていると、人間が感情をむき出しで話している様に思えた。
「人間みたいなゴミと、高貴な私を一緒にしてもらいたくはないな。おまえには死をもって償ってもらうぞ。」
「それはどうかな?」
「なに?」
「あなたはクイーンで、私はキングだ。全ての広範囲な行動はクイーンの方が上だけど、攻撃か防御か、何か1つに力を集中すれば、私は誰にも負けない。私を信じてくれる人たちを守りたいと心から思う。」
人間を蔑むクイーンに怒ったアップル2は、人々をクイーンから守りたいと本当に思った。
「面白い! 守れるものなら守ってもらおうじゃありませんか! 私の攻撃は半端ないですよ! そりゃあ!」
マーチの8つの口からエネルギー破が一斉に放たれる。
「やられるものか! ノアの箱舟は伊達じゃない!」
アップル2も意識を防御に集中させる。
「死ね! 死ね! 私の攻撃にいつまで耐えられるかな!」
「グワア!? これぐらいの攻撃なんか、耐えてみせる!」
「はあ、はあ、意外にしぶといな!? それなら、これでどうだ!」
マーチは、8つの口を1つの口にして、大きなエネルギー破をノアの箱舟に打ち込もうとする。
「なんなんだ!? おまえのその憎しみは!? おまえも神様に命を与えられた、純粋な神の使徒だろうが!? どこから、そんなに邪悪な感情が湧いてくるんだ!?」
「おまえに私の気持ちが分かるものか! 今から死ぬ行くおまえが知る必要はないのだ! これで終わりだ!」
「うわあ!?」
マーチから大きなエネルギー破が放たれる。
「うわあ!?」
「もうダメだ!?」
「お母さん!?」
「キャア!?」
ノアの箱舟に乗っている家臣、兵士、難民の全ての人々が、自分は死んだと思った。
「終わりだ。フッフッフ。」
ドカーン! とエネルギー破が命中して煙幕があがる。
「どおれ、吹き飛んだ姿でも拝ませてもらおうか。」
爆発の煙幕が薄れてくる。
「こ、これは!?」
光が消えてしまったが、ノアの箱舟は何とか健在である。奇跡的にノアの箱舟に乗っている人々の誰一人として死んでいなかった。大爆発があったのに怪我人すらいなかったのだ。
「バカな!? 全力で!? 全力で放ったんだぞ!?」
マーチは、自分が想像したこと違う目の前の光景に錯乱した。
「い、生きてるぞ!? 俺たちは生きている!?」
「信じられん!? 化け物が、いや、神の使徒様が守ってくれたのか!?」
「お母さん!」
ノアの箱舟に乗っている人々は、自分が生きていることを実感させられた。そして、自分たちを守ってくれたのが、化け物と罵ったアップル2だということを知っている。
「みんなが・・・無事で・・・良かった。」
アップル2は、アップルの容姿を保つことができず、ボロボロのキングのチェスの駒の姿をしている。
「あ・・・あなたとの・・・約束は・・・守りましたよ。」
そういうとアップル2は力尽きて倒れ込む。
「ギャア!?」
グサっと、マーチの体を剣が貫く。
「遅くなって、ごめんなさい。」
ようやく追いついたアップルが、マーチに剣を突き刺した。
つづく。
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