第6話 ジュライと友達
「わ~い! 友達! 友達!」
喜ぶ神の使徒ジュライ。しかし友達のアップルの表情に少し暗さを感じる。
「どうしたの? アップル。」
「実は私、友達に見捨てられたの。」
「え?」
「私をあなたに食べさせている間に。」
「食べてしまって、ごめんなさい。ウエ~ン!」
「ええー!? 謝った!? いいのよ!? そんなに気にしてないから!? 泣かないで!?」
人に謝ってもらうことに慣れていないアップルは、ジュライの反応に戸惑う。
「友達に言われたの。私と友達していたのは、私がお金持ちの王族だからとか、それ以外に私に価値がないとか、王族なんだから庶民のために死ねとか。」
「ええー!? なんて酷い!?」
「私は、私は友達だと思っていたのにー!?」
アップルは、友達に裏切られて、心を痛めていた。
「違う。違うよ! そんなの友達じゃない!」
「ジュライ。」
「友達は友達を見捨てたりしない! 王族だろうが、庶民だろうが、アップルはアップルだ!」
力強く語るジュライの言葉に救われた気持ちになるアップル。
「私はアップルを見捨てたりはしない。友達は絶対に守る!」
「ありがとう。シクシク。」
感動してアップルの目から涙がこぼれる。
「うわあ!? 私は何かアップルを泣かせるようなことを言った!?」
「これはうれし涙よ。」
「うれし涙?」
「人間は悲しい時だけじゃなくて、嬉しい時にも涙を流すのよ。」
「そうなんだ。まだまだ私の知らない人間がいっぱいあるんだね。」
「私も、そうよ。まだ知らないことばかり。」
「アップル、私に、もっといろいろなことを教えてね。」
「うん。私も今まで知らなかったことを、ジュライから教えてもらっているわ。」
清々しい表情のアップルとジュライは意気投合した。
「なんだか本当の友達に出会えたら、自分が学校でいじめられていたり、カモにされていたり、陰口を言われたり、仲間外れにされたり、一人ぼっちだったり・・・。」
「いっぱいあるんだね!? そうとう恨みがこもっているんだね!?」
「そうよ。学校だけじゃなわ。家族にも、いらない子、ダメっ子、ドジっ子、使えない子と好き勝手言われてきた・・・。」
「怖いよ!? アップルが悪魔になっちゃう!?」
「どうでもいいわ。だって、あなたに出会えたから。」
「アップル。」
「本当の友達は、得とか損とか、利害関係で築いていくものじゃない。」
「直感で、この人となら自分は合うと感じることができるかどうかだね。」
アップルとジュライは、目と目を見つめるだけで不思議とお互いの気持ちが分かり合える。
「ジュライって、男なの?」
「なんで?」
「私は、女だから、ジュライが男だったら友達から彼氏になって、将来は結婚できたらいいなって思ったの。」
「私は元々、神様のチェスの駒だったから性別は無いと思うな。」
「そうなんだ。ガッカリ。」
「うわあ!? 落ち込まないで!? 性別無くて、ごめんなさい!?」
「謝らなくていいから!? クスッ、ジュライって面白い。」
「そうかな? 自分では普通にしているつもりなんだけど。アッハッハ。」
「私は生れてから悲しいばかりで、幸せを知らなかったんだわ。」
「物として存在していた私も、アップルと出会えて幸せだよ。」
「私に生きる喜びを教えてくれてありがとう。ジュライ。」
「こちらこそ。」
そして何かを決心したように笑い止む二人。
「神様は言った。人間は世界を破壊していると。この世界から人間は排除しなければいけない。私の友達を傷つけた者は許さない。そんな者たちは家族や友達じゃない。アップルは私が守る。」
「ジュライ。」
「これからは君に降る災いは私が振り払い、君のために光を集めよう。」
「私は、いつでもあなたの側にいます。」
アップルは小指をジュライに差し出す。
「なに?」
「人間は約束する時、小指と小指を交わらせて約束するのよ。」
「こう?」
ジュライは、自分の小指をアップルの小指に交わらせる。
「そう。そして約束の呪文を唱えるの。指切りげんまん、嘘ついたら針千本、飲ます。指切った。」
アップルとジュライは約束を誓った。
「アップルを泣かせた者を許さない!」
面白くない人生を生きてきた人間の女の子と、チェスの駒のナイトが神様から命を与えられて神の使徒になった。二人は運命のように出会うのであった。
つづく。
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