⁂ 4~5章 登場人物
----------4章-----------
【セリオス=リオ・ド・シャニア】
◇身長171cm。29歳。
リコルの実兄でありシャニア王国の第一王子。王位継承権第一位。金髪碧眼の美男。ややタレ目気味で静かな印象がある。
歴代でも上位に数えられる“精霊との対話能力”と“嘘を見抜く目”がある。常時精霊の声が聞こえる才能を持つが、多くの精霊から嫌われている為に基本的に聞こえてくるのは罵詈雑言なので耳栓を常備している。精霊の声が遮られる反面、人間の声も聞こえず、特定の“精霊が近寄らない相手”以外との会話は少な目。
自身が他者からどのように見えるかの把握も、それらをどう扱えばよいのかもよく理解しており、視野が広い。計算高く合理的にある方が望ましいと分かってはいるものの、そう振舞えられる程精神的に強くはない。元来明るい性格で、笑いのツボが浅くよくケラケラ笑う、人と話すのが好きなタイプ。怖いものが苦手で、特に心霊系の話題が嫌い。実体化していない“黒い霧”にも感覚で察知してしまう程のビビりな面も。
嘘そのものが苦手なアトラティスカや、思った事を濁さずハッキリ言うメニアコなど、裏表のない人物らと友人関係にある。そんな彼らを政治的に利用したり、暴徒を止められなかった事を心苦しく思っている。
頭痛持ちで、些細な原因でよく痛めている。式典などでは頭痛を発している青ざめた状態で壇上に上がる事が多い為、国民からは体が弱いのだと勘違いされている。リコルの事は大事に思っているものの、近づくと精霊のやかましさから頭痛を引き起こす為、距離がある。
十三年前に婚約者を土贄の儀で失い、以降婚約者を作れていない。
十年前の土贄の儀では祈祷堂にて贄の選出を行い、実の弟を差し出す事を決めざるを得なかった状況がトラウマになっており、以降は祈祷堂には仕事以外で入らないようにしている。
二年前にかつての婚約者の形をとった“黒い霧”を目撃し、大量の“黒い霧”を出している。秘密裡にロディチェ礼会が押さえ込んだ為に大事には至らなかったが、精神的にかなり不安定な状態が続いている。
*
リコルが独り立ちした事で、厄介事に巻き込まれることが減った。またソリュが頭痛薬を作ってくれるようになったことで持病も改善され、精神的に少し余裕が出始めたからか、精霊に婚約を認められ35歳の時に結婚している。
40歳の時に国王になり、この辺りからアオバの不老に勘付き根回しを始めた。多少の問題はあれど、国民人気の高い王様として降臨し続け、67歳で退き、78歳で亡くなった。
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【ミルスィ=エル・ド・シャニア】
◇身長176cm。50歳。
シャニア王国の現国王陛下。彫りの深い顔立ちで、精悍な印象がある。何もしていなくても険しい表情を浮かべているように見られるのを本人は少し気にしているが、口数が少ない事も手伝って、誤解されがち。
歴代で最も高い才能を持ち、常時精霊との対話が可能。そのため、独り言でも精霊が反応して荒れたり逆に落ち込んだりと影響が凄まじいため、公の場にもあまり顔を出さず、年々寡黙になっている。
表情には出さないがかなりの子煩悩。リコルが贄に選ばれた時は寝込み、生きて帰って来た時には本当は人目もはばからずに泣いて喜び抱きしめたかったが、ものすごく我慢した結果とても険しい顔になっていたそう。そんな自分に代わって、言いたい事をリコルに言い続けてくれたテルーナにはとても感謝しており、どうせならリコルの婚約者にならないかなと考えていたので、番外編ではそれなりに浮かれている。
過去に精霊の攻撃からセリオスを守った事で大怪我を負い、何もしていなくても体中が痛く座っていられない程。痛み止めを併用しているものの遠出することができず、視察や国外行事などはセリオスが、国内で要人との顔合わせの際には妻であるメテアに手伝ってもらっている。
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アオバの事は以前から精霊の噂話で聞いており、また対面時にもリコルやセリオスらが仲良くしている様子を見て、悪い印象は全く持っていない。彼を御使いと認めたのも、政治利用の面よりも子供らの友人の保護という感覚が強い。
61歳で現役を退いた。時々セリオスの相談に乗ることこそあれ、基本的には息子に全てを任せ、クレモント王国とのパイプ繋ぎをメインに活動した。孫たちもこよなく愛し、77歳の頃に過労で亡くなった。
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【メテア=リオ・サテリア・シャニア】
◇身長168cm。51歳。
シャニア王国の王妃。金髪碧眼の美女で、子であるセリオスとリコルは彼女似。
王族の末端も末端のサテリア家に生まれ、継承権が三桁と低い順位だった事から自ら権利を放棄し、ラナン家に入り細々と暮らしていたところ、現国王ミルスィに見初められ再び王家に舞い戻って来た異色の経緯の持ち主。
たくさんの人に愛されていたいし、誰か一人にでも嫌われると悲しくなっちゃう、そんな人。自由奔放で、愛らしい少女らしさをいつまでも失わないでいる。
自分が産んだ子は勿論、どんな子であれ幸せであってほしいと思っており、虐待や過酷な環境で生きている子は可能であるならば全員引き取って育てたいと考え、(実際のところ無理なので)賛同した多くの貴族らに養育施設への支援金を仰いだり、里親になるよう促してきた。アオバやペルルのことも保護すべき子どもという認識であり、御使い様云々は割とどうでもよいと思っている。
恋話やおしゃれや美味しい物の話が大好き。公務に関わる以前から非常に察しが良く、相手の目線や挙動で大まかに何を考えているかを把握できる。メテアが聞き返したり、話を聞かずに流したりした時は、大体わざと。メテアと話した事のある要人らいわく、「甘く見てかかると、いつの間にか手の平で転がされて良いように扱われている。食えない女」とのこと。
リコルがたまに言う「仲良しさん」という表現は彼女由来で、主に幼い頃にリコルとテルーナが遊んでいた時に使っていたのが移った模様。
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息子らが無事結婚した事で、心配事がなくなり以前にも増して慈善活動に精を出し始めた。60過ぎた頃に体調を崩し、回復することなく65歳で亡くなった。本人の希望で、葬儀はひっそりと身内のみで行われた。
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【エルシア=キラ】
◇身長166cm。24歳。
シャニア王家の分家にあたるキラ公爵家の長女。王位継承権第二位で、貴族人気が高く一部から「姫」と呼ばれている。黒髪ロングで、目の色は緑。凛々しい面持ちをしており、目の前に立たれると威圧感がある。
リコル程ではないものの、精霊に愛されており、その恩恵にあやかろうとした大人たちに甘やかされて育った。太りやすい体質で、幼少期は肥満体形だったが、セリオスに一目ぼれした事でダイエットをし、また適当にやっていた勉学や身だしなみにも気を遣い始めた。その結果、責任感の強いプライドが高く甘え下手な大人になってしまった。
社交界デビューの時にセリオスとダンスをし、失敗。秘密裡に精霊にお願いしたセリオスとの相性診断も散々な結果に終わり、以降はリコルの婚約者ポジションを狙うも乗り気になれず、社交場ではいつも壁の花を決め込んでいた。
二年前にセリオスから発生した“黒い霧”が形作ったモリューを見て、自身の言動や今の在り方を後悔していた時に、ストゥロの『兎人間』を読みトラウマを抉られ、兎人間事件の中心人物となってしまった。
ほぼ初対面のアオバの『何を言っても許してくれそうな雰囲気』に飲まれて甘えたことがきっかけで、求婚。その場では自分好みに変えて初恋の人の代わりにしてしまおうと画策していたが、関わりが増えていく毎に嫉妬深さが出て来て、本気で愛されたいと願うようになった。
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セリオスへの想いを完全に断ち切ることはできないままで、たまに顔を合わせると意識してしまっていたが、アオバから「勝ち目がないのは分かっているけど、妬きそう」と言われてから、吹っ切れたとか。視力は悪くないが休息時に眼鏡をかける機会が増えた。
犬猿の仲だったテルーナとも話すことが増え、子どものことで贈り物をし合ったりするぐらいの仲になった。寿命で亡くなる直前、老けることのないアオバに「これからを支えてくれる新しい人を受け入れて欲しい」と伝えたものの、「生涯愛するのは貴方だけ」と提案を拒否され、嬉しい反面少し心配になりながらも、87歳で逝去した。
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【ストゥロ=ヴィットラーネ】
◇身長137cm。8歳。
天才作家と名高い、文学を推進する少女。転生者であり、前世は西戸魅雄というペンネームでホラー・オカルトで活動していた五十過ぎの男性小説家。廃墟探索の際に、首つり遺体を見つけ(実際はロープがあるだけ。遺体は幻覚)通報している間に無意識のうちにロープに首を通し死亡。
ラピエルから『前世の記憶を脳裏に事細かく再現する能力』を付与されている。代償は『欲求に忠実になる』というもので、一度能力を使えば死ぬまで欲求を追い続ける存在になる……はずだったのだが、運がいいのか悪いのか、三つ子として生まれたことで能力の効果も代償も三分割されている。ストゥロの代償は『倒れるまで執筆を続ける』。
おさげにした可愛らしい見た目に反し、中身は口が減らないおっさん。そのため、嘘を見抜く才能を持つセリオスをはじめとした王族からは、かなり奇妙な印象を受けるそう。
男爵家で人間に転生したのはよかったものの、創作物や物語をこよなく愛する彼は識字率の低い世界だと知り絶望。それなら一から作るしかねえ! と、童話を中心に世の中に物語を広め始めた。
そろそろいいかと、自身の作品である『兎人間』を発表したところ、特定の人物らのトラウマを刺激し、大事件になってしまった。が、特に反省はしておらず、変わらず執筆業を続けた。
アオバの父である陽介と前世で知り合いだったこともあり、怪事件の現場によく立ち会っていた関係で、よほどの事でないとあまり驚かない。またアオバの体質についても知っていた。
*
平和になった世界では予想よりも早くに物語が普及。執筆者も現れたのを見て、書籍化を褒賞としたコンクールを開き、審査員を務めた。
婚約話も蹴って生涯を執筆活動に捧げ、オリジナル作品の執筆途中で亡くなった。享年82歳。
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【ヌーア=ヴィットラーネ】
◇身長137cm。8歳。
ストゥロの三つ子の長姉。物語を読むのが大好きで、物語以外にも文字の羅列を眺めるのも好き。妹たちに比べると大人な性格で、姉妹喧嘩の仲裁や、親のご機嫌取りやら周囲の説得などは大体ヌーアが行っている。
ストゥロが能力を使うと代償が分散され影響を受ける。ヌーアの代償は『ストゥロが倒れるまで読書を続ける』。
実はこっそり家族にも内緒で小説を書いていた。
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全力で媚びを売って、働かず読書ばかりができる環境を提供するという金持ちと結婚をした。ストゥロが立ち上げたコンクールに参加し、第四回の金賞受賞後は審査員も務めている。
雑誌で小さなコラムを執筆する傍ら、寄宿学校で論文の講師としても活躍した。それらの活動から引退後、自宅の書庫で亡くなっているのが発見された。死因は心筋梗塞。享年67歳。
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【ソッド=ヴィットラーネ】
◇身長137cm。8歳。
ストゥロの三つ子の次姉。なんにでも興味を持ち、落ち着かない。悪戯の他、物語を真似るのが好き。若干言葉に遅れがあり、家族から過保護にされている。
ストゥロが能力を使うと代償が分散され影響を受ける。ソッドの代償は『ストゥロが倒れるまで興味本位の行動を続ける』。
自分から名乗る前に名前を当てたアオバを気に入っており、彼の傍にいるペルルはやや苦手な様子。
ストゥロの著書『兎人間』に影響されて、作り物である兎頭の被り物をして夜の街を練り歩き、街の人間を恐怖に陥れた、が、本人に自覚はない。彼女の奇行に(特に歳が近く交流が増えつつあった十代の)令嬢たちは眉をひそめ、人によっては直接注意もしていたが、あまり効果はなかった。兎人間呼び出しの儀式はあくまでもお遊びでしかなく、ソッドが兎人間そのものを見たのは競技場での一件が初めてだった。
4章後、アオバをモチーフに御使いの冒険譚を書いたが、捏造が過ぎるとしてアオバ本人から訂正された。尚、面白くなかったので、訂正前のもので出版し、本人から呼び出しを受けた。
*
十代後半の頃、趣味の書店巡りの際に理解のある温厚な男性と出会い、そのまま婚約、結婚した。その後ストゥロが立ち上げたコンクールの審査員を務めたが、どんな作品にも甘い採点をすることで有名に。逆にソッドに酷評された作者らは「あのソッド審査員ですら唾棄する程度」と言われひどく落ち込んだとか。
ストゥロ亡き後、編集者に頼まれ遺作の続きを執筆し、完成させた。ヒット作となり幾数も重版したが、本人は「ストゥロお姉様が読んだら、鼻で笑うんじゃないかしら? ヌーアお姉様に読んでもらわないと、面白いと確信が持てない」とあまり納得していなかった。85歳の時、中央区への参拝後に満足気に眠るように亡くなった。
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【カセッテュラ=マルダ】
◇身長182cm。22歳。
ヴィットラーネ家の小間使いをしている青年。愛称は「カート」。ロディチェ礼会の会員であり、不死身の聖女の末裔の一人。本名はカセッテュラ=ミディ・マルダ・ロディチェ。姉がいる。
ストゥロが転生者であるという報告を受け、礼会からヴィットラーネ男爵家に派遣されてきた。素性を隠していたものの、ストゥロが礼会との関わりを持ったことで今は隠していない。
ちょっと鈍くさいところがあるが不思議とモテるようで、ストゥロからは物語のモデルに一本作品を書かれている。尚、本人は知らない模様。
*
結婚もせず執筆活動に精を出すストゥロに、最後まで付き添った。……のだが、ストゥロからは「お前は何か色恋の話とか無いのか? 使えん奴だな、話のネタになるような経験をしてこい」と度々野次られていた。可哀そう。
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【レネテライア=ベーネティティスタ】
◇身長155cm。24歳。
金髪巻き毛が印象的な、可愛らしい伯爵令嬢。童顔かつ華奢で、庇護欲を掻き立てる印象を持つ反面、中身はとても強か。エルシアとは“お友達”の関係。
エルシアと共にリコルの婚約者の座を狙っていたが、薄々リコルがテルーナに惹かれているのを感じ取り、確信を持つために他の令嬢らを焚きつけテルーナを収穫祭の場に引きずり出した張本人。確認がとれたので、あらかじめ気を惹いておいた別の男とさっさと婚約した。
そういったズル賢さをエルシアからは苦手意識を持たれており、兎人間にチャームポイントでもあった巻き毛を引き千切られた。気にしていない風でいるが、今でも兎をモチーフとしたものはトラウマ。
自身の恋愛観はどうでもよく、とにかく家の繁栄を第一にしていたが、ラピエルとの最終決戦前(5章後半辺り)で屋敷にも“黒い霧”が押し寄せた際に、夫に庇われた事で順序が逆の恋をした。結婚後のエルシアとも交流は続いており、“いいお友達”の関係だそう。
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子どもを続けて三人産み、体を弱らせた。たまにエルシアと茶会で顔を合わせていたが、三十を過ぎた頃から体力が急激に衰え、次第に欠席が目立つようになった。外出を控えるようになったものの、安静にさえしていれば動けはしたので、気の知れた人を家に招いたりして貴族社会を生き抜いた。
歳をとるごとに信仰深くなり、頻繁に中央区を訪れては夫と子の安寧を祈っていた。風邪をこじらせ、57歳で亡くなった。
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【カニャ=マル・トウリー】
◇身長169cm。26歳。
地味ながらも領地経営も良好で安定しているトウリー家の三男。リコルとの婚約を諦めたレネテライアが目を付けた男で、4章後すぐに婚約を結んでいる。
爽やかなスポーツ青年タイプで、素直な性格をしておりレネテライアの事も、美しく儚い、心優しき令嬢だと信じて疑わず、心底惚れこんでいる。勉強や数字周りがどうにも苦手。
人当たりが良く、誰に対しても態度を大きく変えない。リコルを悪く言う貴族が多い中で、おそらく唯一陰口も悪態も吐いていない人物だが、レネテライアとの婚約以前は然程関わりが無かった為、実際に会うと意外と筋肉質で驚いていた。
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愛する妻の為、苦手だった勉強にも必死に食らいついて家業を支えた。妻亡き後は子どもたちと孫の成長を見守った。
63歳の時、玄関の扉が叩かれたかと思うと「あの人が呼んでいる」と突然夜中に家を飛び出し、翌朝、“黒い霧”に取り込まれ死亡しているのを聖騎士に発見された。数日前から「妻が近くにいる気がする」と話していたと証言あり。
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【リセリゥ=バッケルィバーン】
◇身長150cm。18歳。
橙色の髪と、ぱっちりとした若葉色の目の、小柄な子爵家令嬢。ネイルアートを考案した。兎人間事件で両手の爪の内七枚が剥がされた被害者。
手先が器用で、可愛い小物や置物などを自作するのが趣味。絵も描いており、王都の十代向けコンクールで最優秀賞を受賞したこともある実力派の芸術家。細やかな作業をする反面、私生活はかなりの怠惰で身だしなみも適当。彼女の功績から爵位を買った元庶民でもあるため、貴族としてのマナーはまだまだ未熟。
数年前に王城近くを通った遠き、偶然窓辺からリコルが顔を出していたのを見て、彼に一目惚れ。アイドルガチ恋勢並みの行動は大体やった。
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リコルとテルーナの結婚を知り、一か月ほど寝込んだ。この悲しみをどうにかしようと、泣きながら理想の男性像を描いていた頃、恋愛小説にドはまりし、様々な妄想シチュエーション絵を描いた。それらが市場に出回ると、聖女セイラから「“まんが”を……描いてみない?」と声をかけられ、手探りながらも作成。爪絵に並ぶヒットとなった。
思いつくものはなんでも描き、時には小説の挿絵も描いた。編集としてやって来た男性と利害の一致から結婚し、子どもを一人産んで、死ぬその日まで描き続けた。享年71歳。後に、「後世の漫画は全部リセリゥの影響を受けている」「漫画界の神」と呼ばれた。
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【ゲルディッド=ルェッツ】
◇身長178cm。24歳。
ルェッツ家の五男。シシリュナの婚約者。15歳ぐらいから毎年腕試しの大会に出ているぐらいには、腕っぷしに自信がある。まっすぐな分かりやすい性格で、筋肉質な体格、角ばった顔立ちをしている。
あまり勉強が出来ないことで、兄弟間では馬鹿にされがちであり、また婚約者のシシリュナからも入り婿だからと軽く扱われており、どちらにも反論できずにいた。
20歳の時、家の主催パーティで次兄がリコルを暗がりに誘い込んだのを目撃。王家の血筋の人間を傷つけては大変なことになると心配し、二人を追いかけたゲルディッドが見たのは頭突き一発で次兄を失神させたリコルだった。これまでリコルをなよなよとした女顔だと内心で馬鹿にしていたゲルディッドは考えを変え、以降リコルと友好的に話すようになった。また、腕試し大会での一件で改めてリコルの強さを確信し、近衛騎士に推薦状を出した。
*
シシリュナとはその後、態度の悪さを理由に婚約を破棄。三年後の腕試しの大会で優勝を果たした際に、観戦に来ていたシシリュナと再会し、彼女の現状を知り情を捨てきれず結婚した。
46歳の時、旅先で精霊災害に巻き込まれ、シシリュナを庇って死亡した。
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【シシリュナ=コーヅェッタ・ルィラ】
◇身長162cm。22歳。
目元に泣き黒子がある、優しそうな雰囲気を持った伯爵令嬢。その見た目の反面、人をからかうのが好きで悪戯半分遊び半分で周囲の人間関係を引っかきまわす一面がある。
本人は上手く安全圏から立ち回っているつもりだが詰めが甘く、そこそこ多くの人間から反感を買っていた。兎人間事件で目元を抉られ片目を失明。駆け付けたゲルディッドに逆切れをし怒鳴りつけ、収穫祭も顔出しのみで早々に帰宅した。御使いの存在が認められると、これまでの言動を反省し、慎ましく生きようと決めた。
*
これまでの軽率で横暴な扱いを理由に、ゲルディッドから婚約破棄を叩きつけられ、承諾。顔の傷を理由に縁談の話が全て断られる状況になり、家を出て領地の離れに一人で住まうことになった。
数年が経ち、ふと思い立ち、王都に赴き腕試しの大会をぼんやり観戦していたところ、かつての婚約者であるゲルディッドと再会。優勝した彼に祝いの言葉を一言かけて立ち去ったが、後日ゲルディッドの方から家に訪れ、プロポーズを受けた。
48歳の時に旅先でゲルディッドを亡くし、彼の葬儀の日に自ら命を絶った。
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【ランピエット=リペリン】
◇身長169cm。47歳。
王都聖騎士六番隊隊長を務める男性。使用する聖剣は直剣型。既婚者で、妻も同じ六番隊に所属する聖騎士。テルーナの養父。
他の聖騎士隊に比べると、力によるゴリ押しよりも陣形や緻密な作戦を立てる事が多い。また精霊信仰に厚く、精霊からも一目置かれている影響と、真面目にコツコツと仕事をこなしている実績から、王家からも信頼があり、双方共に友好な関係を築いている。
テルーナの直感(実際にはデジャブ)を見抜き、副隊長に任命。その後、その才能を悪用されない為に自身と養子縁組をした。当初は義務感のみで縁組したが、親子として接していく内に(テルーナはリペリン夫妻の前では、実の両親の前と同じく“いい子のテルーナ”で接していた)、夫妻揃って実の娘のように可愛がるようになった。
基本的には温厚で礼儀正しいおじさんだが、娘の事になると親馬鹿な顔を見せる。特にテルーナが好意を寄せているリコルに対しては、若干言葉が厳しい面がある。
アオバに関しては、娘の怪我を治してくれた恩義もあって、御使い様であると認識しており、態度は柔らかめ。ペルルの事は若干不気味に思っている。
*
リコルとテルーナの婚姻は渋々認めたものの、テルーナ妊娠後は二人とは距離を置くようになった。これは、テルーナの実家が王族出身であるリコルの子を邪教の儀式に使用しようとしているという噂を得て、周囲を警戒していた為。解決後は、いつもの距離感に戻ったそう。
56歳の時に腕を損傷し、アオバと同じく義手を着用して仕事を続けていたが、思うように動けず引退。隊長は妻が引き継いだ。以降は近隣の教会で働くようになり、中央区にもたまに顔を出していた。81歳の時に寿命で亡くなった。
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【モリュー=ケ・リャル・ラ】
◇身長155cm。享年15歳。
裏表のない活発な少女。頭に兎耳のようなピンと立ったリボンをつけている。鈴を転がしたような笑い声をあげる、実際の歳よりも少し子どもっぽい面が強い。
破天荒で落ち着きがなく、座学よりも町中を散策したり原っぱを駆けまわったりする方が大好きという、令嬢らしからぬ性格の為に、人前で粗相をしかねないと親に思われ公的な場に出たことが無かった。
初めて社交界に出た日の内にセリオスと仲良くなり、とんとん拍子で婚約者となったが、その翌日に土贄の儀の贄に選出された。
エルシアを含む複数の令嬢らから嫌がらせを受けていたが、特に嫌味についてはいまいち伝わっていなかった様子。
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【ヒテュル=マルダ】
◇身長161cm。27歳。
シャニア王城で働いている女性。ロディチェ礼会の会員であり、不死身の聖女の末裔の一人。本名はヒテュル=カナ・マルダ・ロディチェ。弟がいる。
王妃付きの侍女の他、第一王子の世話や給仕、新人教育、果てには犯罪者の拷問など、仕事の範囲が広い。使い勝手がいいからか、よく人手が足りないところに派遣されている。
常に笑顔を絶やさず、何でもサラリとこなしてしまうのは礼会でも同じで、シャニア王家の情報の為に王城にやって来たにも拘わらず、会員同士のもめごと解決やら何やらを押し付けられがち。顔は笑っているがとんでもないぐらいぶち切れている時もあるとか。
*
後年はセリオスの世話係を主に担当した。後輩会員に仕事を引き継ぎ礼会に帰る時には、世話になった人たちにサプライズでお別れ会を開かれ、思わず涙ぐんでしまった。
----------5章-----------
【ヴァーデ=レゴラ・ロディチェ】
◇ 身長148cm。31歳。
ロディチェ礼会の教祖を名乗る女性。実際は(不死身の聖女側の血も入っているが)戦争の際に保護区中央に向かったとされている聖女の末裔。本名はチェルナナ=リンタ・レゴラ・ミョウワック。幼い頃は「チェティ」と愛称で呼ばれていたが、最近は一切ない。
自分に厳しく、他人にはやや甘い。人に親切にされるより、親切にしたいと考えている。比較的小柄でやや威厳が足りないことを気にしており、黒髪を細やかに結い上げ、着飾り、演技がかった口調を使う事でそれらをカバーしている。が、会員たちはそれらが無くとも慕い、尊きお方だと丁寧に扱っている。
術式はあまり得意ではなかったが、先祖のやらかしを償いヴァーデの名を名乗る為に、文字通り血反吐を吐いて習得した。過去に“黒い霧”との戦闘で足に怪我を負い、後遺症でやや歩くのが苦手。そのため、以前にも増して各地の会員らの前に顔を出さなくなった。
5章後半で半分程実体化したラピエルと戦い、負傷。一時は内臓が潰れるなどして生死の境をさ迷ったが、“血”の力によりどうにか息を吹き返した。
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御使いと共同戦線を張り、世界の真実を隠しつつ上手く立ち回っている。後遺症を押して各国とも会合を増やし、礼会の地位を更に高めた。
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【プピュラ=ロテュラ】
◇身長180cm。23歳。
シャニア王国出身。穏やかでややのほほんとした印象があり、人によっては猫のような印象を受ける。やや優柔不断のきらいがある。
人形師の家系に生まれたが、家業の精霊と波長が合わず、当時家長だった祖父とも折り合いがうまくいかず、一度は素行不良になっていた。その頃に礼会と出会い、縋るように会員となった。
礼会本部を訪れたアオバの世話係として、身の回りの世話を焼いた。また、“黒い霧”が充満する中、ウラクスィタを連れてアオバの前にまで連れて行ったのもこの人。
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騒動後、急いで実家に帰った。思いのほか祖父が元気で困惑したのも束の間、その日の内に容体が急変し看取る事となった。
礼会へ戻った後は、中央区と礼会の中継役を買って出て、双方の連絡を伝えた。中央区の施設充実の為に募った職人らの中にいた見習いとしてついて来た女性と結婚し、二人の子どもに恵まれた。大きな怪我や病気もなく、77歳で亡くなる最後まで礼会に尽くした。
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【レディスリ=アーディスツェ】
◇身長174cm。20歳。
丁寧な口調の、柔和な雰囲気のある青年。不死身の聖女の本家筋にあたり、礼会の本来の教祖様。尚、事情を知っているのは幹部のみで、プピュラやミイトたちを含む一般会員は同じく会員の一人だと思っている。本名はヴァーデ=レゴラ・ロディチェ。十代の頃はチェルナナがヴァーデと名乗るのが奇妙な感じだったが、最近は慣れた。
できるだけ礼会の教訓通り、世の為人の為に助け合える人間になりたいと思っているものの、どうしても損得勘定で物事を考えがちな自分が好きではない。
常に周囲に対して違和感を覚えており、場違いな気まずさのようなものを感じていたが、梓と顔を合わせて「ああ、この世界の人間じゃないからか」と妙な納得をしてからは大分違和感がマシになった。
先祖の行ったことについては、割と他人事。仕事と私情とがおそろしいほどに切り分けられており、「人の心が分からない奴」と言われ気味なのがちょっと悩み。
保護区を真っ先に陣取ったり、ヴァーデにとって都合がいいよう先んじて人員を動かしたり、抜け目のない人物。
*
完璧に隠し通しているつもりだった身分をアオバに見抜かれて以降、アオバに対して警戒心が強くなり、より一層心の内を隠すようになった。傍目から見ると二人の会話は穏やかだが、本人らはあの手この手で腹の探り合いをしているそう。
外向きはこれまで通りチェルナナにヴァーデを演じてもらい、自身は本部での仕事をこなすことが増えた。
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【ミイト=リリ・ノ・ドミ】
◇身長154cm。17歳。
黄緑色のセミロングに、青色の目を持つ元気いっぱいの少女。面倒事も楽しめる、楽観主義な人物。天才肌で、初めてのことでも案外さらりと出来てしまうタイプ。
シャニア王国出身の、裕福な家庭に生まれている。元々身体が弱く、教会へのお祈りにやってきた幼い頃、イリュナーナと出会い仲良くなった。雑に扱われても互いに気心が知れた仲だと認めており、ミイトいわく親友。
礼会幹部からは“指標”と呼ばれている。体の造りはほぼ人間だが、実態はオーディールに近しい生命体。世界の状態によって体調面が変わる。少し前までは寝込んでいたが、アオバの転生により回復。ラピエルの力が増した事で再び意識不明の昏睡状態になり、ラピエルが倒れた後、回復した。
*
ホームディネの死を知り落ち込んだものの、彼女に向けた刺繍を完成させると元気を取り戻した。以降は体調を崩すことなく、80歳で死亡。翌日、生まれ変わった“指標”が確認されている。
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【イリュナーナ】
◇身長155cm。18歳。
本名は、レャミル=クルゥ・ユースリニッタ。イリュナーナは愛称? で本人の希望で、周囲にそう呼ばせている。
茶髪セミロングに、紫色の目を持つ、素っ気ない空気感を持つ少女。基本的に面倒な事はしたくないし、自分の為ならともかく他人の為とかマジで無理、生きているだけでダルいしダラダラして過ごしたい~、と言いつつシャキシャキ動くタイプ。
ユースリニッタ薬堂の“先生”とは親戚関係だが、両親が駆け落ちの末の結婚をしており、親戚の手は借りられない状況だった為に困窮していても彼らの世話にはならなかった。教会の炊き出しを貰いに来た時にミイトと出会い、不思議と波長が合い仲良くしている。
ミイトが体調悪化を理由に礼会に引き取られると、いてもたってもいられず自身も礼会に入り、ミイトの世話を焼いている。両親の信条なんぞ知ったものかとばかりに“先生”とも連絡を取り、ミイトの体に合う薬を共に模索していたが、連絡が取れなくなり、ソリュが表に出て来るようになってからは独学で調合をし続けていた。
ホームディネの事はどうにも苦手なタイプだったものの、歳の近い同性で悪い子ではなさそうだと思っていた矢先だったので、亡くなったと知るとさすがに落ち込んで食事も喉を通らなかったそう。
*
ソリュと連絡を取るようになり、調合の教えを請い、礼会内の衛生や健康を受け持つようになった。
ミイトが亡くなった日に失踪。翌年誕生した女児が成長後、“指標”と接触した際に自らを「イリュナーナ」と呼ぶように言っているのが確認されたが、本人かどうかは不明。
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【ホームディネ】
◇身長152cm。享年17歳。
名前は、月の精霊を指す言葉を由来にしている。
藍色の髪を三つ編みにした、顔にそばかすが広がった冴えない少女。周囲から沼色と称されることが多い青緑色の目は、光に当てると三日月が浮かんだ夜空のように見える不思議な目だが、俯いていることが多いためそれを知っている人は多くない。
とにかく自信がなく、猫背で俯きがち。後ろ向きで、誉め言葉も裏側を勝手に読み取って落ち込んでいる。怒られることに慣れており、どれだけ理不尽でも大抵反論もなく黙って耐えている。一方で頑固な面もあり、その境目が分からないメラヴェイユからは不気味がられる一因となっている。
ムブレ教会に預けられている孤児。才能がないと蔑まれているが、実は、一つずつ根気強く何度も繰り返せばどんなものでも仕事として食っていける程の技量にすることができる器用さを持っている。が、才能が芽生える前に周囲から「芽が無い」と判断され取り上げられてしまう為、何もかもが開花することなく眠っている。
“未来視”と呼ばれる能力を持っており、(世界が行う可能性の演算を見聞きする事ができる)一秒先から百年後の遠い未来まで視る事ができる。しかし見え過ぎてしまう力を一切訓練できずにいるため、コントロールが出来ず、会話の最中に二〜十秒先の会話が見聞きしてしまいコミュニケーションに難が出ている。
自身が死ぬ未来に怯え、どうせ死ぬのだからと楽な匂いがする方へと向かうのが癖になっていた。その中で、教会の外で楽しく過ごせる未来を視、匿われた少年の捜索を打ち切り礼会本部にやって来てしまった。世界にとってイレギュラーな存在であるアオバと接触したことで、これまでとは違う可能性の演算を視た。それは、『教会の外で自立した生活を送るがアオバが傍にいない未来』と、『ホームディネの死を悲しみ、アオバの傍に置いてもらえる未来』だった。
自身の死に際をアオバが見てくれる未来を視たホームディネは、自殺を決行した。
ちなみに、ウラクスィタに宝石を渡すよう促すためにあえて優しく書いた文章が日記にあった理由は、本来はあの便箋に残す予定だったが、途中でアオバにも手紙を残したいと心変わりして、もう書く事のない日記の後ろに付け足した、という雑な理由だったりする。
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【ウラクスィタ】
◇身長132cm。10歳。
ムブレ教会に保護されている孤児の少女。火事で両親を失っているが、その事故の記憶はあまりないそう。愛嬌があり、つい甘やかしたくなるような可愛らしさがある。既に引き取り先の候補が出ており、後はそれぞれの家で折り合いをつけるだけの状態。
教会で教わった事を素直に信じ、行動に移すことができる優しい子。アオバがこの世界で生まれ育っていたならこうなっていただろう、という人物。
ホームディネの事を純粋に姉のように慕っていたが、成長するにつれてだんだん周囲のホームディネの評価を聞いている内に自然と蔑みや不安感が滲むようになっていった。本心では嫌っておらず、むしろかなり頼りにしている面が強い。
“黒い霧”を吸い込んだことで一時不調だったが、翌年までには回復し、予定通り里親へと引き取られた。ホームディネの日記を持って。
*
裕福な家庭に引き取られたウラクスィタは、その家の子である義姉と衝突することになった。最初は訳も分からず、どうして意地悪されるのかと困惑し、ウラクスィタの言い分よりも義姉の言い分の方が家族に優先されるのを見て驚愕。自身の持ち物を捨てられまいと家具に鍵をつけたり、先んじて嫌がらせを避けたりと攻防戦が始まった。
15を過ぎた頃には義姉とも互いに落ち着き、「お互い馬鹿やったわねー」と言い合える仲になったが、ウラクスィタいわく「私が一方的にやられていたのに何がお互い様よ。ホームディネの気分が今になって分かるわ、昔の私本当にありえない」とのことで、ちょっと反省はしたらしい。
17で婚約をし、21歳の時に結婚。四人の子供を産み、肝っ玉母ちゃんとして元気に生きた。78歳の時に病気で亡くなった。
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【ニスタクィオ】
◇身長113cm。5歳。
ムブレ教会で保護されていた孤児で、聖騎士の卵でもある少年。愛称は「ニクス」。
マイペースながらも周囲に気を遣う優しい子で、ホームディネとよくペアになって行動していた。精霊に匿われ、消息不明。
*
約200年後、ホームディネの宝石の一つを持ってアオバの前に現れた。記憶を失っているものの、持ち物から本人と断定された。
引き取りたいという人物が現れた為、何度か顔合わせの末にその人の養子となったが、数年後に虐待が見つかり以降は中立協会で生活をした。育ての親でもあるアオバには似ても似つかない横暴な性格となり、精霊術を極めた事で更にイキリ散らかすようになるのは、また別の話。
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【メラヴェイユ=リュヌ・シュトーン】
◇ 身長177cm。44歳。
ムブレ教会の筆頭聖職者の男性。頑固親父といった印象が強いが、その実、多くの子供たちを育て上げ、社会貢献の功績も持つ人物。口は悪く厳しいところも多いが、彼の下で育った多くの子らはメラヴェイユを慕っている。
親も聖職者だが、昔はかなりヤンチャで神様も精霊も知ったことかといった態度だった。実体を得た“黒い霧”に取り込まれかけた時、ヴァーデ(チェルナナ)に救われた事で身の振り方を改め、現在のスタイルに。礼会員ではないが、協力関係にある。
ホームディネの母親とはかつての不良仲間で、当時は彼女の破天荒さを笑っていたものの、子どもを産んでは捨てていくその無神経で非常識な行動にドン引き。現在では疎遠になっており、たまにホームディネ宛の贈り物を受け取る程度の関係に。ホームディネが垣間見せる母親似の行動から同じような真似をするのではないかと恐れ、他の子らの何倍も厳しく躾けており、特に自分の手の届かない範囲で彼女が知り合いを作ったり経験を積む事を嫌っている。知らず知らずの内に、ホームディネ本人ではなく母親を重ねて見てしまっていた。
“黒い霧”に取り込まれ意識不明になった後、数日後に意識は回復。しばらく体が動かせず礼会に世話になったものの、子どもらに示しがつかないと無理をして教会の仕事に復帰した。
*
当初からアオバに対して良い印象を抱いておらず、ホームディネを失ったことへの怒りが強かった。アオバが御使いだと認められても、考えを改めることはなく、何度巡行で訪れても教会の扉を開けることはなかった。
晩年には一応御使いを認めたが、「じゃあどうして、あの子は救っていただけなかったのか、そんな価値もなかったのか」とすれ違ったままだったという。享年79歳。
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【フォリュード=トトナ・トゥイギル】
◇身長171cm。41歳。
紺色の髪をバレッタで止めた、灰色の目をした女性。エイーユ、ホームディネの母。愛称は『フィー』で、ホームディネの出産時は『フェルリシア』の姓を名乗っていた。
“未来視”の力があり、約一秒〜十分先の未来を見る事ができ、幼少の頃から力を使って様々な実験をしコントロールを可能とした。器用でずる賢く、どこか愛嬌のある人物。力を悪用し、犯罪で小金を手に入れては散財し、それを喜ぶような仲間とつるんでいた。
ある時、数年後の未来を意図せず観測した彼女の目に、可愛らしい二人の幼子と愛おしさを感じた自身が映った。この未来を確定させたいと思った彼女は即座に行動を起こし、未来視で見た子どもらと同じ瞳の色をした男性と結婚。思った子ではないのが生まれた為に捨て、次に向かう為に離婚ついでに男の家から金を盗み出し、また別の男と結婚して産んでは捨て……という外道の真似を繰り返し、正解を掴むまでに四人出産している。
ようやく望んだ子を産んだことで現在は落ち着き、普通のどこにでもいる愛情深い母親という評価で夫と仲睦まじく子育てをしている。番外編でエイーユが母を回想したのはこの辺り。
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子どもが十代後半になった頃、エイーユが子どもらに接触している。そこで何があったのかは不明だが、以降子どもらの母に対する態度が悪化したそうで、アオバの下にクレームが届いている。エイーユの家庭事情を知らないアオバは「反抗期じゃないですか?」とズレたアドバイスをしている。
50を過ぎた頃から土地の精霊と急激に合わなくなり病気がちになり、寝たきりに。一応夫の家業の都合で最期まで子どもらに面倒は見てもらったが、扱いは雑めで、死後の様子から薬は何年か使用されていなかった様子。享年56歳。
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