あるメジャーリーガーの決断

十文字心

【プロローグ】神の正体

私は地球に住む人々が時に神と呼ぶ

存在である。しかし実際はそんな

大それたものではない。

この地球という檻の中で生活をしている

人類、動物、植物など全ての生命体に対し、時に絶望的な試練を与え時に幸福を感じる

出来事を経験させることにより、その時

ここに住む生命体がどのような行動を

するのかを日々研究している観察者なのだ。


私が今までにどれだけの試練を与えて

きたかは細かいところまで覚えては

いないのだが1つだけ言えることがある。

どんなに絶望的な試練を与えても全てを

乗り越え、今までの生活に戻ろうとする

この星に住む生命体の底力には心底

感心している。


小さい個々の生命体でいうと与えられた

試練に耐えきれず、絶滅してしまったり

自らの命を自分で終わらせてしまうものも

いるのだが、総合的にみてもやはりこの星の

生命体はとても強くできている。


私の実験とはこういうものだ。

大きいものでいうと突然大きな隕石を衝突

させてみたり、自然界の食物連鎖を突然

狂わせる仕掛けをほどこしてみたりといったもの。隕石は正直やりすぎだったと思う。

あの巨大な恐竜が一瞬にして地上から

半数ほど消滅してしまったのだから。

その後の氷河期の到来で当時の地上の

支配者達はほとんど消えてしまった。

まぁそのお陰で、一度全てをリセットされた地球に進化を経て、最も興味深い人間の誕生

ということに辿りついたのだけれど。


そして、私の大好きな人間達に対して

行うこと。それは、気まぐれに降り立った

地で人間の姿になり私と接触してきた

人物とある契約をする。


簡単に説明すると

"あなたの命と引き換えに願いを

何でも叶えます。"

といったところだろうか。


命と引き換えに願いが叶うということは

"大金持ちになりたい!"

という願いは全く自分には関係のない

無意味なものであるし、出世したい、

嫌いな奴を殺したいという願いにしても、

もれなく自分の存在がなくなって

しまうのだからあまり意味はないだろう。

私なら嫌いな奴と一緒に死ぬなんて

絶対にイヤだ。


こうなってくると、私と契約を結ぼうと

する人間は限られてくる。

そう、誰かの為に自分を犠牲にして

護りたいと考えている人間たちだ。

今までに私と契約を結んできた者たちは

全て、自分は死んでもいいから誰かを

助けてくれと願う者ばかりだったのだ。

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