第69話 看破と驚愕

グリムとの会談が終わり、俺たち用の4人部屋に案内された。


ここで住まわせてもらうことになったのだ。


クロウのあの宣言の後、結局俺たちはとりあえず、全員得意の魔法をグリムたちに見せて別れ、その後、魔界の夕食を食べた。


見たことのない生き物ばかりで抵抗はあったが、味はむしろ8区のものより良かったかもしれない。


夕食後、なぜか俺とカルマ、クロウだけがグリムに再び呼び出され、ジンナーが不機嫌になっていたが、とりあえず3人で玉座に向かった。


そして、グリムの第一声がこれだ。


「お主ら、一体誰のマナを使って魔法を使っておる?」


はっ?誰のマナってそりゃ………ゴブキンだけど。気づいたのか?魔法を使うのを見ただけで。今まで誰も気がつかなかったのに。


グリムの隣にいたリリーも初めて聞いたのか目をパチクリさせている。


そして咄嗟のことで頭が回らなかったが、グリムの言葉をもう一度考えると不可解な点があった。


お主『ら』って言ったよな今。

今ここに呼ばれてるのは俺とクロウと…


ゆっくりと首を右に向けると、同時に、同じようにゆっくりとカルマがこちらに首を向けていた。


「「お主『ら』?」」


「え?だって、え?カルマは…でもそうならあの強さも頷けるし…」


そう、この世界においてマナというのは、その人に流れる固有のエネルギーであり、他人のマナを使うということは基本的にはありえない。


アスカやクロウのような例外は別だが。


「ははっ。もう笑うしかないね。これは正直、魔界に来たことよりも驚いちゃったよ。」


「……」


クロウも口を開けて驚いているだけであり、グリムが再び口を開く。


「これから道を共にする者同士、変な疑心は取り払っておきたい。差し障りがなければ、話してはくれんか?

勿論、何を聞いても他言しないし、主らを迎え入れると誓おう。」



確かにそうだ。俺たちもグリムたちを頼らなければ人界に帰れない。


それに、彼らの人柄にも素直に好感を抱いていた。

しかも相手が何かあるのは確信めいている様子なので話すことにした。


カルマも十分信頼できる。こいつも話すことがあるみたいだが。








魔界に来てから頭がパンクしそうなほど新しい情報がどんどん詰め込まれているため、カルマの話もあまり詳しくは頭に入ってこなかった。


今度ゆっくり聞こう。


どうにも、カルマも俺と同じで10歳の頃に違う世界から転移して来たらしいが、故郷の世界は俺とは違うらしい。


そこら辺はカルマもよく分からないらしいが、俺が暮らしていた世界、そして今いる世界、そしてカルマがいた世界といくつもの世界があるそうだ。


まあ普通は行き来できるものじゃないから知られていないんだろうが。


そして、運良く倒したレアな魔物の魔臓から混合魔法を使えるようになったという。


「ふむ、異世界からの転移と魔臓の人工移植か。つくづく難儀な道を辿っておるの。

いや…だからこそ…か。


転移者など中々おらんから確証はできんが、魔界で襲われたときには魔法が効いたというのはおそらく検討がつく。


魔界は大気中のマナの量が多いからな。ここにきたせいで主らの持つ魔臓と主らの体との繋がりが強くなり、魔臓が体の一部として機能するようになったのだろう。


魔法はより扱いやすくなっただろうが、主らにとっては都合が悪いかもな。


まあ、いづれにせよ、先に述べたように絶対に口外はせん。明日からマナの可視化を含めて指導する者を主らに当てる。


今日はゆっくり体を休めるといい。」


「はい、分かりました。改めて明日からよろしくお願いします。」


最後に挨拶だけして、俺たちは部屋へと戻った。

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