第41話 突破と交流
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「カルマ、予選なんだからあんまり本気ださないでくださいよ。目立ってしまいますから。ただでさえ、最近ダンジョンの最下層を攻略したために目立ってるのに。
周り見てても平均はだいたい
120(マナ総量)/150(攻撃力)なんですからね。」
「何を言うんだい、フロン。予選だからこそ、本気で向かわなきゃ、過酷な本戦を勝ち上がれはしないよ。」
そういいつつ、カルマの手に創られた炎と水の混合体---混合魔法の球体はしだいに大きくなり、凄まじいスピードでシールドを撃ち抜く。
「あちゃー。」
フロンは半ば呆れており、他の3人はそれに目もくれず、ただ談笑していた。
『マナ総量 901
攻撃力 703 』
混合魔法という選定から注目を集めていたカルマだったため、予選の様子を見ていた者も多く、多くの人が驚嘆の声をあげた。
幸か不幸か、アスカたちはアーメリアではともかく、知名度もなかったため、その様子を見ているものはほとんどいなかった。
まあ、たまたま目撃して腰を抜かした者もいたのだが。
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「さぁーーーーて、集計の結果が出たぞ。カウントダウンの後に、予選突破のパーティーのカードが赤ぁーーーーく光る!
そいつら以外は脱落だ帰れーい。
いくぞー3、2、1、ドーーーーン!」
「「ウォオオオオオー」」
「ん!」
カウントダウン終了と同時に歓喜や悲哀の声が巻き起こるなか、イオンは同時に目を瞑ってしまった。
俺が肩をそっと叩くと、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
その視界に見えるのは、手に握られたベンチャーカードが赤い蛍光色に光っている様子だった。
「やった、やった。僕たち、通過したよ!」
イオンの顔がみるみるうちに喜色のそれへと変わっていく。
「ふん、あんなモンスター2人がいたら、落ちるわけないじゃない。」
ルイズは俺たちに呆気なく数値を上回られ、さっきから機嫌が悪いようだ。
「今回は他の組との接触はそれほどなかったが、参加者の中には7区の奴らもいる。アスカ、油断せずにいくぞ。」
「ああ。」
クロウのいう通りだ。
基本的には大気中のマナの濃度の違いで、上位の区になればなるほど、その人間は体質として生まれつき下位区の人間より多くのマナを持っている。
生まれが下位区というだけで大きなハンデを背負っているような者なのだ。
まあ、例外はいるが。
「数値の全体の平均は
マナ総量が167
攻撃力が155。中々に高いぜ〜。今年は粒ぞろいだな!
つーーーづけて、この第1予選において、注目選手の発表だ。
マナ総量と攻撃力の最高記録者を発表する。」
「おっ、そんなものあんさんに決まってるじゃないすか〜。あんさん、あんさん。呼ばれるっすよ。」
「まずはマナ総量。
一位はなななんと、8区出身にして、まだ15歳の新生ベンチャー。
Aクラス『炎水の剣』のカルマだ〜!
記録は901。とんでもねえバケモンだぜ。」
「ウオオオオーーー」
「えっ、あの人、あんなにすごかったんすか。」
メグが呆気にとられている。俺だって同じだ。
俺もあいつとは一回会っただけだしよく知らないけど、相当できるってのは分かってた。でも、これほどとはな。」
今の俺の(正確にはゴブキン(Aクラスの魔物)の魔臓の)マナ総量は元々のゴブキン(しかもメイジ)のマナ総量を大きく上まっているはず。
それを超えてくるとなると…
「次に攻撃力!
1位はまたまたなんと、8区出身の新生パーティー
Aクラス『ゼロマジック』のアスカ〜!
数値は722。
しかもこいつは武器選定だぁー!!どーなってんだあー今年は!!」
観客やベンチャーも武器選定という言葉にそれぞれが驚きを表している。
「あっ攻撃力ではあんさんが勝ってるっす。元気出すっすよ。」
「ああ、ありがとう。」
別に落ち込んではないんだけどな。
こうして、無事に第1予選を終えることができたと思っていたが、この後思い知ることになる。
予選で一位をとってしまったことに対する代償を。
「さーーあ、移動は済んだな。残ったのは500組のパーティー、2500人だ。
国選パーティーに求められる次の要素はーーーーー何と言っても『速さ』!
のろまじゃ仕事は任せられないぜ。
というわけで、第2予選は
『央都内10kmラン』だーーー!」
「コースはこの央都の内部に設けられた一周10kmのコース。地図はチームに一枚配られるぜ。意図的に殺害行為等を行ったり、コースを脱線したりする以外は基本的にはどんな手を使ってもOK!
上空をマジックドローンが飛び回ってるからな。各地の中継をこのスタジアムにつなぐぜー。
好成績の上位100組が第3予選へ進出だ〜。
倍率高いから気合い入れていけよ。
最後に、この予選中に運営側が意図しないどんなハプニングが起こっても、こちらで対処するので予選はそのまま続行すること。
質問はあるか ないな!よっしゃ位置につけーー!」
司会のマシンガンのような説明にも慣れてきたので、地図を受け取りスタート地点へと向かう。
「それにしても、駆けっこなんてね。もっとこう怖いのかと思ってたよ。
速さなら心配いらないね。」
「ああ、イオンのいう通りだ。俺がなんとかしてやる。」
クロウのいう通り。ただ早くゴールすればいいだけなら、クロウの『敏捷』の付与を全員にかければ問題ない。俺は『飛翔』の魔法を使えるし。
だが、問題なのは…
あちこちから向けられる鋭い視線。
「はは、ちょっと目立ちすぎたか。」
他の参加者からの妨害。
国選パーティーを目指す人たちだ。俺たち以上のスピードを持つパーティーもいるだろう。そんな中で、集中的に妨害されるのは避けたいけど…
そこでふと目が合う。全く同じ状況に陥っている優男に。
「いやあ、アスカ君。1位おめでとう。」
「カルマもな。いや、そんなこと言ってる場合じゃないだろう?」
「そうだね。目立つのは悪いことじゃないけど、今回のは悪目立ちだったようだ。
どうだい?対立するまではしばらく協力するというのは。」
「そうだな。お前みたいなバケモノとはできれば最後まで対立したくはないけどな。」
カルマは一瞬呆気にとられて苦笑する。
「まさか、君にバケモノ呼ばわりされるとは思っていなかったよ。
あ、言ってた残りの仲間を紹介するよ。きてくれ。」
カルマの後ろから、2人の女と1人の男が顔を出す。
女の容姿は2人で瓜二つでクリーム色の髪をポニーテイルにしている。
男は黄色の短髪で、背はクロウと同じくらいに低い。
「はいはーい。カルマの仲間の、パインです。」
「ペインでーす。よろしくね。」
「ロイだ。」
「俺はアスカだ。双子なのか?そっくりだな。」
問いに答えたのはパイン?だと思う。
「うん。そーだよー。ってアスカってことは、君が一位の!?すごーいカルマ以外の人外はじめて見たよ!」
「パイン。その人外ってのやめておくれよ。これでも結構傷つくんだよ。
それに、アスカ君のことは今までも話していたじゃないか。」
「んー聞いてなかったかも。」
カルマに続いて隣にいたフロンもため息を吐く。
「それで、こっちにいるのが…」
ひとしきり互いのメンバーの自己紹介を終えて、妨害対策についての話し合いを終えたころには、第2予選開始の準備は整えられていた。
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