第30話 新面と無視


「君、よかったら俺たちの仲間に入ってくれないかな?」


声をかけてみた。弓師なんて次いつ出会えるか分からないからな。


「ん?このジンナーを勧誘か?雷、闇、聖以上の希少属性なら受けて---」


周りを囲っていた奴らの親玉みたいな奴が何か反応したがスルーでいいだろう。


通り過ぎて、うずくまる弓師に手を伸ばす。


「ぼ---ぼくのこと?」


上げられた顔の目を見て頷く。


「僕、魔法も使えないし、とっても弱いよ?」


「君が弱いかどうかは君が決めることじゃない。俺は君が必要だと思ったんだ。」


すると弓師は目をウルウルとしながら俺の手を掴む。

「ありがとう!僕はイオン!力になれるように頑張るよ。」


「俺はアスカだ。こっちは仲間のクロウ。」


クロウは若干人見知りなところがあるが、まあイオンは悪印象じゃないだろう。


そこで、今まで唖然としていた外野が騒ぐ。


「おい!このジンナーを無視するとはどういうつもりだ!しかもそのグズを勧誘だと?

一体---」


詰め寄って来て俺とクロウのプレートを見ると得心がいったように口角を上げる。


「ははーん、無能は無能を呼ぶってことか。

大人しく俺を勧誘しておけばよかったのにな。まあ受けてやらんが。」


「そうだぞ。ジンナーさんは地属性魔法の選定だ。お前らなんかにはもったいないんだよ。」


ジンナーには全く興味なかったが、子分みたいな奴が言った地属性魔法は、俺も使えないから興味があった。

土属性の上位魔法で、実用性が高く、重宝される。


そのうち使えるようになりたいな。


「クロウ、イオン、4人目を探しに行こう。」

「ああ。」

「うん。」


そんなことを考えながら歩き出した。

後ろが何か騒がしかったが、まあ気にしなくていいだろう。


-------


「クソッ馬鹿にしやがって---

レイピア選定のアスカとか言ったか---覚えてろよ。」


----------


「クロウ、次はどんな子を誘えばいいと思う?」


「あ、ああそうだな。剣士については俺とお前がいれば十分だ。弓師も加わったし、あと欲しいとすれば、中衛か剣士以外の前衛だな。」


「あ、あの!魔法選定の子は入れなくていいの?」

イオンがクロウに恐る恐る問いかける。

クロウの目つきに怯えているのだろうか。


「あー、一属性しか使えないやつを入れるより、バケモンがいるから大丈夫なんだよ。」


「?」

「そのうち分かるさ。」


バケモン呼ばわりが気になるが、クロウの意見も正しい。ただそういう選定はほとんどいないっていうのが厳しいんだよな。カルマ以来、人からは一度も勧誘されていないし。


ん?

えーと、あっちの大きいのがカルマの人だかりだよな。


それなら、あっちの小さい人だかりはなんだ?

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