第27話 誠意と寛容
「いらっしゃい…ってまたあんたらかい。何の用だい。」
「あの、申し訳ないんですけど、一晩だけでもいいので、泊まる部屋を貸していただけないでしょうか?」
「なんでパン屋なんかに?宿を取ればいいじゃないかい。」
「はい、行ってみたんですけど満室で…」
「ああー訓練兵が来るとか言ってたね、確か。それで、あんたらは一体なんなんだい。よくも分からないやつを泊める訳にもいかないよ。」
「色々あって、自分たちの村を出てきて、最初に着いたのがこの町なんです。お金なら言われただけ出します。お願いします。」
クロウはしぶったが、ケイトにおされて、4人も頭を下げた。おばちゃんはしばらく俺の顔をじっと見つめた後、
「ちょうど2階の物置きを片付けたいと思ってたんだ。掃除したらタダで使わせてあげるよ。」
「ありがとうございます。」
おばちゃんの優しさに感謝だ。
その後、物置きを掃除し、(意外と広かったので、大変だった。)各自情報収集のため、町に散らばることにした。
俺はというと、
「あの、何か手伝えることはないでしょうか?」
「ん?ああ、あんたかい。別にありゃしないよ。変な気使うんじゃないよ。」
「いえ、ただ甘えっぱなしなのは嫌なだけで、あっ、このゴミ捨ててきちゃっても大丈夫ですか?」
「あ、ああ。構わないよ。変わった子だね。」
ゴミ捨てから戻っても、
「カマドの掃除してもいいですか?」
「店の前、ホウキはいときますね。」
………
出来る限り手伝いをしたつもりだ。
少しはおばさんの役に立てた思う。
「あんた、名前は?」
「アスカといいます。」
「歳は?」
「14です」
「そうかい……アスカ、あんた村から出てきたって言ってたけどあれ、嘘だろ?」
「えっ!?あの…」
「この辺りで1番小さな集落って言ったらここぐらいさね。いったいどこの村から来て最初にこの町に着くって言うんだい?」
「………」
「言えない事情があるんだね。まあ、いいよ。それで、一晩ここに泊まって、それから何か当てがあるのかい?訓練兵はしばらく町にいるから、宿は当分空かないよ。」
「…ありません。」
「はぁ〜。
自分たちでどうにか出来るようになるまで、ウチにいな。家賃はウチでの労働だよ。」
「ホントにいいんですか?
ありがとうございます。」
こうして、当分の寝床と仕事を確保することができた。成人(15歳)になるまで正式にパーティ登録はできないわけだし、これはとても嬉しい。
やっぱり誠意は見せるものだな。
そうしている間に全員帰っており、物置き部屋で各自持って来た情報交換が行われる。
俺は、おすそ分けでもらってきたパンしか持ってこられなかったが。
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