第13話 赤剣と荒野

4人を連れて鍛冶屋へとやってきた。


詳しいことはまだ教えていない。

店に入ると機嫌のいい店主が出迎えてくれる。

「おお坊主、きたか。できてるぜ。素材が素材だからな。どっちも会心の出来だ。」


そういって見せたのは注文した片手剣とレイピア。

片手剣の刀身はケイトの髪と同じで明るい赤色をしており、レイピアの刀身はそれに透明感を帯びている。


「ケイトまだ木刀使ってるだろ?これから旅してくこと考えたら鉄剣も必要だと思って。

あの炎鳥の羽で作ってもらったんだ。」


ケイトはあわあわとしながら目を輝かせている。

「かっこいい!アスカ、ありがと!」


すぐに剣を手に取り握り直したり、軽く振ったりしている。

うん、気に入ったようでなによりだ。


シャルルが羨ましそうにそれを見ていた。

バンダナももらったし、今度何かお礼をしよう。


そういえば、ギーブはギーブで武器を新調したみたいだ。棒?みたいな変わった形だったが、結構気に入ってるらしい。

確かに実用性は高そうだな。


武器を受け取った後、御者を雇って馬車に乗り込んだ俺たちは恒例行事を行う。


「これより、シーラス防衛団会議を始める。」

ギーブは細かい計画を立てるのが苦手だから今まではほとんどは俺とケイトの案を元に行動方針を定めてきたのだが、この開始の合図だけは自分が言わないと気が済まないらしい。


「チビも入って、めでたく我らのパーティも5人になったし、後は歳が15になって8区へ上がれば、国選パーティの仲間入りだな!」


「チビじゃねえ。その最後が1番難しいんじゃねえか。」


「でも鍵の魔石はあと2つだぜ。ゴールが見えてきたってもんよ。」


「後の2箇所もあそこみたいな迷宮になってるのかなぁ?」


シャルルの呟きになるほど、と思った。


そもそも資格とは何を見られているのか。


後の2箇所も今回のような迷宮であれば、それは単純に魔物をねじ伏せる力、後は迷路の攻略だけとなる。


それだけなら時間は掛かるだろうが、俺たちで全て攻略できるだろう。

でも、そんな単調ではないだろうな。

おいおい考えていくとしよう。

さて、


「とにかく、当分の目的地は9区の中央に位置する央都ノブレスだ。でもそこまでは短くても1ヶ月は掛かかるらしい。

食料と水は十分あるけど、長い移動になるだろうから、そのつもりで。」


俺のまとめでメンバー5人での初会議は終了した。


馬車から外を眺めると、そこは一面の荒野だった。


9区はかなり広いと思うが、都市間の距離が非常に長く、上位の区と比べ、技術発展もかなり遅れているみたいだ。

まあ、上の区の様子なんてほとんど分からないんだが。


出発から半月ほどが過ぎた。


暇だ。

暑さや移動の長さのせいか、みんなのテンションも下がってきているんじゃないか。


クロウはあぐらをかいて壁に寄りかかり、目を瞑っている。瞑想かな?


それをギーブがくすぐったり、ちょっかいをかけてケンカしている。


ケイトとシャルルは女子トークの真っ最中だ。


ああ、暇でテンション下がってるのは俺だけだったな。


やはりこれだけ長い時間ここで過ごしても元の世界の車や電車といった移動手段を知っている以上、移動にこれほど時間をかけるのには抵抗がある。


「こんなことならロンド村で本でも買っておいたらよかったなあ…」



「ねえねえ!あれって村じゃない?」


ケイトの言った通り、そこには小さな村があった。

小さいといっても、シーラス村よりは大きいが。


俺たちは満場一致でその村に行ってみることになった。


荒野の村だけあって、いかにも昔の西洋のガンマンが撃ち合いをしてそうな光景だ。


しかし、村に入っても人は1人も見つからない。


こういう村ならバーに行けば大抵の人はいるという偏った考えでバーの看板がかかった店の扉を開ける。


目の前に剣を持ったいかついオッさんが現れた。




扉を閉めた。


さあ誰もいなかったし央都を目指そうか。


「おい、なんだガキ。どっからきやがった?」


すると店からオッさんが出てきた。

幻覚じゃなかったのか。


「おい、まだガキが5人いたぞ。はやくロープ持ってこい!」


店内に向かってオッさんが叫ぶ。どうやら仲間がいるらしい。

そしてロープで何かされるらしい。


「おいオッさん、急になんなんだよ。俺たちに何する気だ?」


ギーブ的にもこのオッさんは悪人判定らしい。

他の3人も警戒を強めている。


「何もしねえよ、大人しくしてればな。

ただし、そうじゃねえと…」


オッさんは不敵に笑いながら店の扉を開いて店内を見せた。


そこには、店いっぱいにロープで縛られた人が座っていた---

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