HARUO
古飯辰郎
第1話 少女は突然現れた
「山岸君。まだその工程覚えてなかったの?」
身体がビクリと反応した。
「す、すみません。俺、容量悪くて・・・。」
あぁ、まただ。
「入って一年も経ってんのにさぁ。その工程まだ簡単な方なんだからね。早く覚えてもらわないと困るのよ。ホントに駄目な奴だな君は。」
「本当に申し訳ないです。早く会社に貢献出来るよう頑張ります。」
そんなこと一つも思って無いけどな。
でも確かに俺は自分でも駄目な奴だと思う。昔から運動も勉強も大したこと無かったし、他に得意なことも無い。 趣味も音楽とか絵とか色々やってみたけど長続きしたものもなく、行き着いた先は二次元。いや二次元は別に良いか。
でも子供のころなりたかったかっこいい自分には段々と遠ざかって行ってる。
あれ、というか昔の俺が思ってたかっこいい自分ってどんなだったっけ?
残業をしてたら夜の九時を過ぎていた。
早く帰って寝たい。その一心で車を飛ばしす。
いつもは車の通りが多い国道を使って帰るのだが、今日はショートカットして帰ろうと思った。
その道を真っすぐ通ると十分程早く自宅に着くのだが、その道はいわゆる心霊スポットと呼ばれる所らしく先輩に近寄らない方が良いと言われたので通らないようにしていたのだった。
でも今日はホントに疲れたし幽霊なんて出ないだろう。 そう思い通ることにした。
道に入って暫くすると民家が無くなり灯りも消えた。 マジで幽霊が出そうだな。
段々と怖くなってきたのでまた少しスピードをあげた。すると灯りのついたトンネルが見えてきた。
確かあのトンネルを過ぎればいつもの通りに出れたはず。
しかしトンネルに近づいた俺は目を疑った。
トンネルから見えたのはライトではなく炎の灯りだったのだ。
「やばいやばいやばい!!!」
急ブレーキを踏んで車を止め、車外にでる。
トンネルの中は炎が壁のように塞いでいて中が見えなくなっていた。
「と、とにかく消防車を―――」
ガシャン!!
炎の向こう側から凄い勢いで何かが飛び出してきて俺の車に激突した。
恐る恐る振り返って見ると俺と同い年ぐらいの男が車のガラスを突き破って後部座席まで吹っ飛ばされているのが見えた。
「まさかそれでくたばってねぇよなぁ?炎野郎!!」
すると今度は炎の向こうから金髪でスカジャンにセーラー服をきた少女が笑いながらゆっくりと歩いてきた。
頭の整理が追いつかない。
俺の目の前で何が起きているんだ。
「あぁん?誰だお前。まさか一般人か?」
気が付けば俺は腰が抜けて尻餅を着いていた。
「お、お、お前ら、何なんだよっ・・・。」
「おいおい聞いてんのはこっちだぜ?って、危ねぇ!!!」
突如少女にぶん投げられ炎の壁を越えてトンネルの中に吹きとばされた。
下がアスファルトだったためめちゃくちゃ痛い。
少女が駆け寄って来る。
「大丈夫か兄ちゃん!死なねぇよう手加減はしたんだが。」
「なんでこんな・・・。」
「野郎が攻撃してきたんだよ。それで力尽きちまったようだがな。今のうちに逃げるぞ。」
少女は痛みで立てない俺をお姫様だっこし人間とは思えない速度でトンネルを駆け抜けた。
「ちょ、ちょっと!速すぎ!待って待って待って!!!俺の車が!!!」
「あの軽四なら連中が処理してくれるって!そんなことよりお前の家に逃げ込むぞ!」
「俺の車がぁぁぁ!!!!」
「-い。おい!起きろ!」
なんだ?うるさいな。
聞き慣れない声に起こされて瞼を開く。
「眩しい・・・。」
まどろみでぼやけた視界がはっきりとしてきた。
なんと女が上から俺を覗き込んでいるではないか。
驚いた俺は勢いよく身体を起こし、そのまま女の顔面に頭突きが入る。
女は衝撃でうしろへ倒れてしまった。
「いっっってーなこの野郎!!!」
女は起き上がり鼻を抑えながらそう怒鳴ってきた。
その怒鳴り声に身体がビクつく。
そして声の方に目を向けると先程目にした光景を思い出した。
「お前はさっきのJK・・・。おい、何なんださっきのは?あの炎は何なんだ!?あの男もお前もあそこで何してたんだよ!?」
そう言った途端目の前に拳が見えた。
その拳は俺の左頬にめり込み、身体は宙を飛び、部屋の壁に激突した。
「うるせぇ!!まずあたしに頭突きしたことを謝れ!」
ホントに何なんだこの女。
十九歳の男を素手で殴り飛ばすJKなんて聞いたことないぞ?
「す、すみませんでした。」
「よし、許す。素直な奴は嫌いじゃないぞ。」
そして女はあぐらをかいて座った。
「まぁお前も楽にしてくれよ。質問に答えてやるからさ。」
なぜこいつは自分の家みたいな感じを出しているんだ?
まぁ指摘したら殴られそうだから言わないけど。
なので俺は言われた通りにした。
「あたしは
HARUO 古飯辰郎 @ryuunoske320
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