自己肯定をできない僕とドッペルゲンガー

高山 響

始まり

1話目

 「なぁ、誠、お前ってさ、兄弟いたりする?」

五月ももうすぐ終わろうとしているある日大学で同じゼミのヤツが僕に問いかける。

「兄弟?いないよ?なんでまた」

「いやー、なら多分他人の空似だと思うんだけどさ。この間××町のカラオケでさお前に似た人を見かけたんだよ。俺お前だと思って声かけたんだけど違ったかぁ……」

「声かけたのかよ……それにしても××町のカラオケね……あ、それで思い出したことがある」

「なに?単位でも取り忘れたか?」

「茶化さないでよ……いや……なんかこの間○○町のカラオケ行ってさ、会員登録しようと思ったら、なんか電話番号登録されてるってなったの、それで調べてもらったら××町で登録されてますねって言われてさ」

「何それ、軽くホラーじゃん」

「まぁ、その時はあんま深く考えなかったけどさ、さっきの話聞いたらなんかなー」

「もしかしてドッペルゲンガーとか?」

笑いながらそういうソイツに僕は勘弁してくれといいながら荷物を纏める。

「帰るん?」

「うん、洗濯物とか干したいし、その話はまた今度にしとこ、じゃぁね」

そう言って僕はソイツに別れを告げる。どこか嫌な予感を胸に抱えたまま。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る