10年後のシンデレラは闇落ちまっしぐら!
ちびまるフォイ
友情出演:シンデレラ
「このガラスの靴にあう女性はあなただったのですね。
ついに見つけました。どうか妃になってください」
「はい ///」
こうしてシンデレラは城に迎え入れられ幸せになりました。
めでたしめでたし。
それから10年後。
白雪姫はコブタ建設㈱の作ったレンガの家に一人で暮らしていた。
「はぁ……出会いない……」
かつて幸せな結婚をしたはずのシンデレラだったが、
のちに王子の白雪姫との浮気が発覚して破局してしまった。
それからというもの家にこもりがちになっていた。
「シンデレラ! シンデレラ!」
「あら、あなたは伝書カラスさん。今日もお手紙ありがとう」
「ラプンツェルが結婚したから結婚式場への招待状が来ているヨ」
「ファーーーーック!!!!」
シンデレラはピー音とともに招待状を破り捨てました。
「なんで!? あの子なんてずっと引きこもりよ!?
趣味らしい趣味といえば天井の板の目を数えるくらいの子なのに!
なんで私を追い抜いてハッピーエンドになっちゃってるのよ!!!」
「シンデレラ、人の幸せをお祝いできないなんて相当に病んでるネ」
「そうよ! もはや病ンデレラよ!!
同じような引きこもり生活をしているのにどうして私には
白馬に乗った王子様がATMかついでお迎えに来てくれないのよ!!」
「聞くと、ラプンツェルは長くこもっていた塔を抜けて
そのうち結婚に至ったそうだヨ。シンデレラも外に出てみたら?」
「そうね……。これだけの美貌を持ってしてもひと目に触れなければ
出会いも何もないものね。いいわ、私舞踏会に行ってみる!!」
シンデレラは決意をかためてかつての魔法のドレスをタンスから引き出した。
これで意中の男性をまばたき1つでノックダウンょ、と思ったが背中のチャックが閉まらなくなったので断念。
「……ま、まあ、ほらドレスとか気負いすぎる服装だとかえって良くないわ。
私ほどの美人なんだから多少カジュアルにしたほうが話しかけやすいわよ」
雑デレラはおしゃれめの普段着で城の舞踏会(男性5000円、女性3000円)に参加した。
そこには豪華絢爛な食事が並べられ、ひさかたぶりに見るオスどもが談笑していた。
(ふふ、横目での視線を感じるわ。いいわ、試してあげる。
見た目はどれも妥協点といったところだから、内面を見てあげるわ。
さあ、思い切って声をかける勇気のある男だけが来なさい)
シンデレラはあえて会場の隅っこで優雅にワインを傾けていた。
そこはかとなくあふれるオトナの色気(笑)をただよわせながら……。
『お城の舞踏会はこれにて終了です。
どなた様もお忘れ物のないようにお帰りください』
「ちょ、ちょっとまって!! 私! 私を忘れてるわよ!?」
シンデレラはついに誰からも声をかけられずに舞踏会を終えた。
あまりに誰も話しかけてこないのでワインをガロン単位で飲んでしまっていた。
「せっかく参加費も払って、そこそこにおめかしもしてるのに
誰からも声かけられないってどういうこと!?」
「運営の私どもに言われましても……。お客様自身の問題としか……」
「私のどこに問題があるのよ!?」
「自分から声をかければよかったでしょう」
「なんで私がそんな男にこびるような女にならなくちゃいけないのよ!」
「そう言われても……。意中の男性はいなかったんですか?」
「いなかったわ。みんな私に声をかけられないヘタレだったもの」
「ええ……」
白雪姫は蛍の光が流れる舞踏会から空に浮かぶ星をながめた。
「あ~~あ、どこかにいないかしら……。
高収入で、親が名家の出身で、貴族社会に精通していて
だけど家庭的で料理上手で私と食の趣味が合っていて、
話し上手で優しくて、いつも私を笑わせてくれるユーモアがあって
175cm以上の高身長でスタイルがよくてイケメンで清潔感があって
常にリードしてくれて笑顔がステキな異世界転生勇者さまはいないかしら……」
「結婚する気ありますか?」
「ありまくりよ!」
今回は参加者が悪かったと反省したシンデレラは、
これを機に舞踏会によく出向くようになった。
けれど、舞踏婚活パーティに参加すればするほど
理想の相手が見つからなかったときの喪失感が大きく
ひいては相手にされなかったことでの自分の自信をしだいに喪失していく。
「あーー……もう疲れた……死にたい……死ンデレラァ……」
しょうもないダジャレが独り言で飛び出すほどに追い詰められていた。
「思えば、最初の王子様が一番よかったなぁ。
あのときはお金の心配なんてしたことなかったし、
毎日高貴なティーパーティをしているだけの日々……はぁ……」
まるでいい夢を思い出すかのようにシンデレラはかつての日々を振り返った。
「なんで浮気のひとつも許せなかったのかしら。
むしろ浮気をネタに私がマウント取れた可能性だってあったのに……。
ああ、失ってはじめてなくしたものの大きさに気づくなんて……」
白雪姫は悔しさと切なさと心強さでもんどり打った。
そのとき、レンガの家に珍しく人が訪れた。
「やあ、シンデレラ。久しぶりだねぇ」
「あなたは! 私に魔法をかけてくれたおばあさん!
ぜんぜんあのときと変わってないわ!」
「一定の年齢をすぎると、人の老け方は鈍化するんだよ」
「それで今日はなんのご用件かしら?」
「シンデレラがバツいちと聞いてね。協力しに来たんだよ」
「ば、バツじゃないわ! むしろ私の人生的にはプラスだからマルいちと言って!」
「どっちでもいいけど、またお前に魔法をかけてあげよう。
かつての若さと美貌を取り戻して意中の王子様を射止めてきなさい」
「おばあさん……!」
魔法使いのおばあさんはシンデレラに魔法をかけると、
みるみるシンデレラは若く美しく「あの頃シンデレラ」へと生まれ変わった。
「ああ、このあふれる活力。ハリのある肌。これこそシンデレラよ」
「また舞踏会で意中の男性を見つけてくると良い」
「ありがとう! 今度は浮気するうんこ王子とは別の
参加者にいるもっと素敵な王子様を見つけてラプンツェルより先に結婚するわ!!」
シンデレラはカボチャの馬車に乗り、絢爛豪華な舞踏会へと向かった。
プリンセスをも嫉妬させるほどの美しいシンデレラの姿に王子は思わず見とれてしまった。
「ああ、なんと美しい方なのでしょう。お名前を伺っても?」
「私はシンデレラ。オオカミ丁2番地レンガ荘3号室に住んでいます。
趣味は童話プライムを見ることで、好きな食べものはカボチャ」
「えらく自分のこと話しますね……」
「ガラスの靴さがしのくだりを省略したくて…… ///」
「シンデレラ。ここは騒がしい。もう少し静かなところであなたのことを聞かせてほしいです」
「もちろんです!」
シンデレラはキスに控えてリップを塗りまくってテラテラにすると、
王子の素敵なリードで別室に移動してお互いに話をした。
「シンデレラ、僕はねいつか父上の仕事をついでこの国を良くしたいと思っているんだ」
「そうなんですねーー」
「まずはインフラの整備。人とモノの流通をより効率化して街の活性化を図る。
そして各国との外交を再開してさまざまな文化を国に取り入れるんだ」
「はぁ……」
「シンデレラ、君にはその間、家庭を支えてもらいたい。
仕事で疲れて帰った僕を裸エプロンでお出迎えして耳掃除しながら
僕のことを赤ちゃんをあやすように甘えさせてほしいんだ」
「ええ……」
「手料理は僕のママから教わると良い。ママの手料理は王国イチさ。
休日には僕の趣味の釣りに出かけよう。きっと君も気に入るはずさ。
ただし、君は他の男と話しちゃいけないよ。一国の妃なんだからね!!」
「………………」
・
・
・
結局、シンデレラはガラスの靴を両足そろえたまま帰ってしまった。
「シンデレラ、どうしたんだい。素敵な男性はいなかったのかい?」
「なんか……やっぱり私は最初の王子様がよかったかなって……」
「それじゃ復縁を期待するのかい?」
「いいえ、もう私は待っているだけの恋なんてしないわ!」
「それじゃどうするんだい?」
「おばあさん、若返らせることができるなら、その逆はできる?」
「できるにはできるが……。それでどうする気なんだい?」
おばあさんの問いかけに、はじけるような笑顔で答えた。
「これから白雪姫を毒りんごで殺そうと思うの!
白雪姫さえいなくなれば、きっと王子様は私のもとに戻ってくるもの!」
10年後のシンデレラは闇落ちまっしぐら! ちびまるフォイ @firestorage
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます