《改良版》何で俺のラブコメは男ばかり寄ってくるんだよ!!!
海風奏
第1章 波乱の一学期編
1-1 出会いの風吹き抜けた先に…
高校二年生の春。別れの後の出会いの季節。予感を
そんなある日の夕暮れ。帰宅しようと靴箱から靴を出そうとすると、紙の感触があった。取って見れば、どこからどう見ても……
「ラブレター、だよな」
ラブレターだと言わんばかりの封筒が、ハートのシールで封をされている。ハートのシールを剥がして中を確認すると、放課後に校舎裏に来て欲しいということと、好きですということが丸っこい可愛らしい文字で書かれていた。
俺はガッツポーズを決める。まさか、やっと彼女ができるのか? 俺は特に特徴のない人間だ。唯一の特徴をあげるとすれば、黒縁メガネだ。もう俺、本体黒縁メガネでいいんじゃねってレベルの人間。アニメなどではよくあるが、現実だとメガネが本体ってそうそうないだよな。つまり、貴重である。
まあ、そんなんだから彼女など、できやしないと思っていたが、案外捨てたもんじゃないな。
思わず鼻の下が伸びてしまう。さよなら灰色の人生!ようこそ!
浮かれた気分の俺は盛大にフラグを建築したのに気がつかないまま、校舎裏に向かった。
***
冷静になって思う。校舎裏というのは、抽象的過ぎるのではないかと。『校舎』の『裏』ならば『校舎裏』になるわけだ。俺が通う神禅高校の校舎は上から見ると『日』のようになっており、敷地内の端の方にあるので『校舎』の『裏』と呼べる場所は縦面一つ、横面一つの計二面ある。俺は深読みして昇降口から一番遠い横面の校舎裏から探してしまった。素直に近いとこらから探すべきだな。反省しよう。
そんなことを思っていると、突然ふわり、と風が吹いた。この感覚。俺はすぐにわかった。風向かう先に、差出人ありと!
見れば、金の髪がさらりと揺れた。
男がいた。
………男がいる。
………何度見ても、男。
いやいや、おかしいだろ? 何で男が? あ、わかった! この人も女子からラブレター貰って、校舎裏にきたんだろう! 俺と同じ状況か! お互い別々に幸せになろうな!
さーて、俺を呼ぶおにゃのこどこかなー!?
「待っていたよ。
そう呼んだ声は、明らかに男の声音。天篠巽って誰だよ。あ、俺か……
……おかしくない? 女の子に呼ばれたどうしだろ?
「えっと、君が、これを?」
ラブレターとは言いにくかったので手でぴらぴらしながらこれと言う。すると長身金髪で、肌が透き通るように白い、この学校に通う者なら皆が知っているイケメン
「ああ、
こいつ、俺があえて言わなかった単語を。まあ待てまだ慌てる段階ではない。俺は冷静になろうと思えば冷静になれる男。はい吸ってー、吐いてー、ひっひっふー。よし。
「何の
「何のことだい? 僕は本気だ。まさか、あり得ないとでも思ってるのかい? 愛の形は人それぞれだろう?」
「そう言うなら、自身の愛の形は他人に押し付けるものでもないことは把握してるよね」
「ああ、もちろんだ。だからお願いをするんだよ。僕の愛の形を受け入れてくださいという意を込めて、付き合ってくださいと」
なんだこいつ、かっこいいこと言いやがって。これがかっこいい女の子だったらなー! 速攻惚れてたんだがなー!
でもまあ、同性愛が普通のことになっていないこの世の中で、こうやって告白するのはさぞ勇気のいることだろう。ここは
「ありがとう、でもごめん。俺は女の子が恋愛対象なんだ」
しばらくの間、沈黙が場を支配した。告白って、断るとこんなにも重苦しくなるのか。だからといって、好きでもないし好きになる可能性もないのに付き合っても失礼ってもんだ。悪いな、少々罪悪感を感じるが俺はこの選択に、後悔はない。
「そうかい。それは残念だ」
「ああ。でも、友達な、ら……」
友達ならいいよ。そう言おうとしてやめた。いや、言えなかったという方が正しいかもしれない。それ程、彼の赤い眼にはこの上ない真剣さが孕んでいたのだ。友達止まりなど意味がないと言わんばかりに。
そう感じた俺は、彼から見て怯えてるようにでも見えるのか、警戒が無意味と思わせる柔らかい笑みを浮かべた。
「……いきなり言われて、何処か冗談だと思っていた。だから僕の真剣さを察して言葉を失った。ってところ?」
完全に図星なので、大人しく肯定を示すため首を縦に振った。エスパーじゃん……
「察しの通り、僕は巽君を諦めるつもりは毛頭ない。君が逃げ続ける限りは特にね」
何を言っているのかわかった。でも何でそれを知ってる? 吐露した回数などたかが知れている。それを差し置いた疑問がある。一度で吐露した以上、どう広まるか何て知る由もない。だから考えてもわからないことをここで聞かなければと冷静を保てているうちに思考した。
「ま、待って! 何で俺なんだ!」
俺は袖を掴もうとするが、空振り。でも、この問いに答える気があるのか、立ち止まった。
「…………」
唇が微かに動いたが、ぼそりと呟かれただけじゃあいくらここが静かでも聞こえないものは聞こえない。
「何て言ったんだ?」
「……覚えていないならそれはそれで。それじゃあね、巽君。また明日、朝にでも」
今度こそ、宮原玲司は去って行く。
結局訳が分からないままで、俺はその場に座り込んでしまう。
ゲイ。男の同性愛者を指す言葉となっている。そういう人は、マンガや、アニメとかにしかいないと思っていた。それ程自分とは関係のない、かけ離れたものだと。更に言えば、俺は当事者側だ。周りにそういう人がいるとは、また違った感覚というものがある気がする。
「はっはっ……勘弁してくれよ……」
今はもう、笑うしかないような気がして、無理に笑っていた。
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