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 京都の夏は暑い。

 晴れわたる青空の元 『新選組研究会・誠一筋』の総会は開かれた。

 驚いたのは参加人数と内容の濃さだ。



 日本各地から150人を超える 参加者。

 また 他のサークルも応援に駆けつけている。



 会場の壬生寺会館はその熱気で あふれかえっている。



 まず副長挨拶から始まり研究発表会。

 驚いたことに 発表者には栄子お姉さんもいる。


『新撰組か 新選組か?』がテーマだった。

 お姉さんの結論は『撰』

そういえば 手紙には いつも『撰』がつかわれていた。



 研究発表のあとは 居合いの披露。

 サークルメンバーは 居合いを学んでいる人が多い と紹介があり さまざまな流派の居合いの型が 披露された。



 その後しばらくの休憩。竹田さんが 一人の男性を伴い やってきた。


「局長の、小田ですが。 えー、小田明です」


 ガッチリとした体格と鋭い目。

竹田さんの手紙によると警察官だそうだ。

 先ほどの居合いで もっとも喝采を 浴びていた人だ。



「竹田君から いつも聞いてます。来年は 中学生ですな。見習い隊士として みとめましょう。ほな忙しいので この辺で」


 そう言い残して 小田さんは去っていった。



「オックン よかったなあ。あ、 俺も色々忙しくて。じゃあまたな」


 ─僕もやがて 色々忙しくなるのだろうか。


 休憩時間は あっという間に終わった。




 会場での顔馴染みはといえば、栄子お姉さんと 光村さん、富士さんくらいだ。

 三人も 忙しそうで、僕の相手どころではなさそうだ。たくさん人がいるのに、なぜか さびしかった。




 休憩が終わると 史跡見学会。

 普段はみられない 旧前川邸(新選組屯所の一つ。現在は 田野邸)の内部を見られるとあって出発前から みんなは興奮気味だった。



 しかし ここでアクシデント発生。

参加人数が あまりにも多すぎて 一度に見学できないのだ。

 そこで 二班に別れ 見学をすることになり 時間の関係でビデオ上映会は 中止となった。




 旧前川邸。

馬が三頭横に並び それに乗ったまま 通り抜けられたという 立派な表門。そこをくぐると いくつもの建物がある。

 ここで 新選組隊士たちは何を思い 生活していたのか。


 そんな一角に古い土蔵が。

 ここが、新選組が 敵対する人達を拷問にかけた場所だという。


 暗い室内。

 せまくて急な階段。冷たい空気。


 まさに拷問蔵。



 土蔵の二階に上がろうとしていた時、前にいた人影が よろめいた。


「あぶない!」




 それが、君との出会いだった。



 

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