運動する事が好きじゃなかった子供の頃、同じように スポーツが苦手だった父は ある日 僕を近くにある図書館に連れていってくれた。



 彦根城と佐和山城の城下町に 生まれ育ったこともあり、その頃には歴史が好きな子どもになっていた。



 そんな僕が初めて目にした 図書館の中は 歴史小説や実録があふれる宝の山だった。



 学校が終わると 毎日のように図書館に通い、歴史物を読みあさった記憶がある。


 しかし、図書館通いも長続きしなかった。


 本を読むのが嫌になったのではない。むしろ本好きが高じ、図書館から借りて 家で読むようになった。



 これには理由があった。

 ちょうど学校から帰った時間に 楽しみにしていた時代劇の 再放送があったのだ。



 そのドラマこそ『新選組』だった。



 近藤勇に 鶴田浩二

 土方歳三は 栗塚旭

 沖田総司が 有川博


 何よりオープニングが印象的だった。

 今から思うと 壬生寺の本堂前だったのだろうが 隊列を組み、誠の隊旗をひるがえし、一番隊から順に行進する様子が 格好よかった。



 そして、たまに通う図書館では 歴史雑誌も読むようになった。

 この頃は まだ個人情報の意識が高くなかったので、趣味の雑誌には 交流コーナーとして 文通希望や情報交換の欄が普通に設けられていたのだ。

 そこに記されていたメッセージに目を通し 気が合いそうな人に手紙を書いた。


 まだ小学生だったのが珍しかったのか 何人かが丁寧に対応してくれた。



 ある時その内のひとり、東京に住む大学生のお姉さんが 彦根に観光に来ることになり 案内をしてほしい──という手紙がきた。

 彦根城を見たいというのだ。


 彼女は 同じ新選組ファンで 歴史が好きな女性だった。

 何度かの手紙のやり取りのあと、実際に実際に会ってみることになったのは、夏休みになってからのことだ。

  


 

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