GOD WARS ONLINE-可愛いので天使族を選んだら支援特化種族だったけど高プレイヤースキルで剣を振り回す脳筋プレイしていくスタイル-
なるみや なるみ
Ⅰ.逃遁理想国家ユピテル―天使の旅路―
Stage.001 神々の世界
悠久なる世界で眠りに付きし乙女
天を舞う白き翼は数多の時代を駆け抜けた証
輝く剣は真なる武の御霊を導く
其は――
1
そのような処にずっと居ればあらゆる感覚が狂い、精神が病んでしまいそうなものだが、なにも亜莉栖がここに居る時間が数ヶ月だとか数年だとか、そう長いものではない。ほんの数秒程度前にこの場所に
「この感覚久しぶりなせいもあるかもだけど、やっぱり慣れないなぁ――っとと、早く進めちゃおうっと」
すると亜莉栖の眼前に半透明で空色の仮想ウィンドウが現れる。そこには『GAME START』と表示されており、タップすると次にログインを求められるものに切り替わった。それを確認した彼女は、同時に表示されていた仮想キーボードを使ってIDとパスワードを手早く入力し、そこまでが完了するとウィンドウは消え去った。
「GOD WARS ONLINEの世界へようこそ! お客様にはβ版のアバターデータが存在しますが、引継ぎを行いますか? なお、引継ぎはアバタークリエイトの外見とアバター名のみで、所持品等は引継ぎ不可能です。また、引継ぎ後に変更したい箇所がある場合は再編集が可能です」
かわりに電子音声によるガイダンスが始まると姿見が現れ、腰まで届く長くふわりとした金髪をツーサイドアップにしている碧眼の少女、亜莉栖を映し出した。身長は百六十センチメートルを少し超える程度で、適度に肉付きがよくバストもそこそこに存在をアピールしているスタイルの良い――まさに美少女という風貌をしている。それは黒髪黒目が特徴の日本人において、文字通り特異なものである。故に彼らにとって亜莉栖の容姿は主に西洋や二次元の中の存在なのだが、イギリス人である母方の血を色濃く受け継いだ日本人とのハーフである彼女の現実の姿だった。
音声のガイダンスと共に選択肢が表示され、亜莉栖が『Yes』を選択すると、アバター名がアリスに設定され、背中に一対の小さな純白の羽根が生えていた。これはβ版で選択していた彼女の種族が天使であり、外見上大差が無いヒューマンとの差別化としての表現だった。
容姿に関してはリアルのそれをそのまま流用しているのであろう。特にこれといった変化は見受けられなないが、元から容姿が日本人離れしていることもあってか、リアルの特定はされないだろうと本人が思っているのが大きな理由だった。
亜莉栖が選択していた天使以外にも種族は豊富に用意されており、定番のヒューマン、エルフ、獣人(そこからさらに犬やら猫やらに細かく分類されている)等から、妖精や悪魔等の厨二心をくすぐるもの、果ては「くっころ」プレイでもさせたいのか、ゴブリンやオークといった普通であれば敵として登場するような種族まであった。
「アバターの外見を決定しました。次に使用する武器を選択してください」
「相変わらず沢山あるなぁ」
ゲームによってクラス、職業、ジョブ等、呼び方が異なるものの、MMORPG系のゲームにおいて定番であるそれらだが、このGWOには存在しなかった。
というのも、圧倒的な自由度の高さを宣伝文句にしているというのに、のっけから職業選択によってできることが限定されてしまう時点で矛盾が起こってしまう、というのが運営及び開発チームの出した結論だ。それ故に職業制は見送られ、採用されたのは武器熟練度制だった。
亜莉栖はスワイプして画面を動かし、いくつものカテゴリに分類されている武器に一通り目を通していく。
「βのときから新しく追加されてるのが少しあるなぁ。トンファーとか鉄爪とか、結構マニアックなものばっかりだけど……」
最下まで全て確認すると、再度スワイプして最上まで戻し、
「前衛向けじゃない天使とは相性悪いけど、やっぱりこれだよね」
口角を上げて選択したのは亜莉栖の大好きな武器――長剣だった。
それはこのゲームにおいて片手剣と大剣の中間のような武器だ。長剣は前者に比べて刀身が大きく厚い分、威力やリーチで勝るが取り回しが悪く、後者と比べると小さく薄い分、威力やリーチで劣るが取り回しは良い。つまるところ良く言えば片手でも両手でも扱えるため万能だが、悪く言えばその特徴を上手く使いこなさなければ器用貧乏というアレに属するような武器だった。
「長剣が選択されました」
選択が終了すると、長剣の備わった剣帯が自動的に腰へ装備される。初期装備なだけあって名前も『ロングソード』とそのままで、見た目も簡素な二束三文で取引される程度のあまりにもあんまりな剣だった。無論、この手のゲームで最初から強い装備など使えるわけもなく、至極当然のことなのだが。さらには防具など無いに等しく、布の胸当てやグローブがあるが、最早防具というよりただの服の範疇ですらあった。
「これにて全ての設定を終了しますが、間違いはありませんか?」
やはりガイダンスと共に表示が切り替わり、キャラクタークリエイトに関しての最終確認が表示される。
「はいはい、おっけぃおっけぃ」
「アバターの設定が終了しました。チュートリアルを開――」
「βで散々遊んだからいいですよっと」
「それでは神々の世界、GOD WARS ONLINEをお楽しみください」
それを最後にウィンドウと姿見が消失し、視界がホワイトアウトする。いや、元から真っ白な場所であったため、したのかどうかは分からないが、とにかく漸くゲームが始まったのであった。実際には三分程度しか経過しておらず、開始まで時間は殆ど掛かっていなかったのだが、早く始めたい亜莉栖にとってはたったそれだけの時間がなんとも長いものであった。
そして、亜莉栖は神々の世界へと降り立った。
2
雑多な音がする中にありながら噴水の爽やかな音色が耳に届き、どこからともなく風が運んでくる肉の焼けた匂いが食欲を刺激する。ゆっくりと目を開けば、中世ヨーロッパを連想させる石畳の古ぼけた町並みが続いていた。
「うぅん、やっぱり凄いリアリティだよね、このゲーム。このまま街を見て回るのもいいけど――」
細部まで作りこまれたグラフィックはもとより、音や匂いがより一層リアルさを高めており、風景だけを見ればもはや現実との区別をつけるのが困難なほどの出来となっていた。
眼前にある、日常生活で疲れた心を癒してくれそうな音色を届けてくれる噴水へ歩み寄ると、素手に設定されている武器パレットへと変更して背負っていた長剣を消し、その縁へと腰を下ろして今まで自分が居たほうへと向き直った。そこには、おそらくプレイヤーたちが最初に出てきたという設定なのであろう教会が建っていた。その証拠に次々とログインしてくる彼らが現れては方々へ散り散りになっていく。
「βテストの時は気にしてなかったけど、一応ここって多種族が逃げ集まって出来た街だよね。こんな目立つもの建てていいのかなぁ」
仮に現実に建っていたとするならば緊急避難先などでも使えるであろうそれは、なんとも立派な装飾の施された建造物だった。あまりにも煌びやかなそれに対して、この街が出来た経緯を記憶の隅にある世界観設定から引っ張り出す。
約三百余年前、神々の信徒達は聖戦の名の下に己の領土拡大を狙って戦争を始めた。多くの者は自分達の信仰心に従い命を賭して戦場へと赴いた。だが、中には戦争を忌み嫌うもの、自分の命が大事なもの、他種族と友好を築きたいものなど、離反するものも居た。理由はどうあれ、そんなことを主張すれば当然ながら異教徒として迫害を受ける。それが分かっているからこそ己が故郷を捨てた彼らは自然と集い、隠れるようにして次第にいくつもの集落が作り上げられた。それらは大陸南部にある盆地に集中しており、一から切り開くのは些か大変なものだったが開墾と合併を繰り返し、ひっそりとだが多種族が生きていける街となった。そして、いつしかこの辺り一帯を指してユピテルと呼ばれるようになった。
それから幾許かの年月が流れると次第に周囲から目を付けられ、結局は争いに巻き込まれていくのは必然だった。だが今回、彼らは逃げなかった。いや、もうここより他へ逃げようなどなかったのだ。それ故に各種族は団結し、知恵を出しあい、新たな武器やスキルを生み出して渡り合ってきた。そんな世界でプレイヤーは暴走する信徒達を打倒し、ユピテルに平和を取り戻す――というのがストーリー上の最終目標である。
「もう戦いになってるから建ってても関係無いってことかなぁ。でもそれより先に教会を建ててたとしたら――って、そんなこと考えててもしょうがないや。やっぱりまずはレベリングしよっと」
立ち上がったアリスは再び武器パレットを操作して長剣を装備状態にすると、勝手知ったる我が家ならぬ我が街の如く、南にある出入りのための門へ向かって駆け出した。正式サービスが開始され、これから始まる様々な冒険への期待に胸を膨らませ、そしてその形の良い胸をぽよんぽよん弾ませながら。
3
アリスは街の入り口を守る門番のNPCには目もくれず、最初のフィールドへと赴いていた。門から一歩外へ出れば、広大な野原が広がっている。リアルでは田舎くらいでしか中々お目にかかれない美しい大自然も丁寧に描写されており、街中とはまた違った感動があった。初夏を思わせる燦々と降り注ぐ陽光、都会ではそう味わえない自然を感じさせる澄んだ空気と風が運ぶ草木の匂い、SAN値直葬が可能になるほどそこら中から聞こえるモンスターの悲鳴。台無しである。
「サービス開始直後だからこうなるのは仕方ないよね……」
さすがのアリスとて、このシュールさには苦笑いを浮かべずにはいられなかった。
それはさておき、初日な上に開始直後のため沢山のプレイヤーがそこかしこでレベリングを行っているが、混雑することは想定済みのようで、一つひとつのフィールドがかなり広めに作られており、ある程度街から離れる必要はあったが、狩場を取り合うような事態になることは無かった。
しかし、やはり少し離れていることもあり、門付近ではモンスターのレベルが一だったのに対し、今居る場所ではレベル三へと上がっている。とはいえ所詮は初期フィールドのモンスターだ。何も問題無い。むしろアリスからすれば経験値が増えてありがたいくらいであった。
「じゃあ始めよっと」
モンスターを見つけ、軽いノリで言うアリスは腰の長剣へ右手をやるとゆっくりとした動作で抜き、特に重いといった様子もなく、右半身を前にして構える。それは歴戦の勇士のように非常に様になっており、一目でこの手のゲームの熟練者であることを窺わせる。最も、初期装備であるが故の外見の貧相さだけは如何ともし難いのだが。
相対しているのはピグという豚を模しているであろうモンスターだ。サイズは現実の豚と同程度だろうか。ただ全体的に丸みを帯びていることと、豚らしからぬ円らな瞳をしていて、なかなかどうして可愛らしい生き物に見えてくる。
だがいくら可愛らしかろうとモンスターはモンスターだ。アリスはそれ目掛けて疾風の如く駆けていく。
「てぇい!」
HPを削りすぎないように注意しつつ、わざとらしく気の抜けた掛け声と共に、慣れた動きで先端が軽くヒットする程度に左へ薙いだ。
NPCやオブジェクトと異なり、モンスターはある程度デフォルメされていて、リアルに動物を殺すような不快感を感じるようなことは無い――が、可愛いもの好きなプレイヤーには返って酷なのかもしれない。
「ピギィ!?」
「ああっ! ゴメンね、ぶたさん」
アリスもその一人だった。彼女の斬撃を受け、赤いダメージエフェクトが付けられたピグが悲鳴を上げる。今まで沢山のゲームをプレイしてきたアリスだが、それでも可愛らしいものを攻撃するのは未だに抵抗があるようだ。
「じゃあ次、行っくよ!」
ピグへ謝っていたかと思えば、楽しげな声で次の攻撃へと移る。二撃目も同様に先端を軽く当て、HPを大きく削るようなことはしない。そして頑張って体当たり攻撃をするもアリスに軽くあしらわれ続けているこのピグを見たものが居たとすれば、まるで弄ばれているかのようで間違いなく同情をされたであろう。しかしアリスにそんな趣味は無く、可愛い豚と戯れつつ思考通りの動きが出来ているかのチェックをしているだけに過ぎないのだが。
何回避けられようと諦めずに鳴き声――本人、いや本豚は雄叫びのつもりかもしれないが、そんな形容が出来るほどの迫力は微塵も感じられない。そんな可愛らしい声を上げて突っ込んでくるピグ。実際の所、トロそうな見た目に反してそれほど遅くはないのだが、アリスには鈍足に感じられるため避けることなど造作もないことだった。鳴き声がどこか少し悔しそうに聞こえるピグを尻目に、アリスは確認し忘れていたメニュー画面を開いていた。
「初期コンバットアーツも特に変更無しっと――それじゃあぶたさん、これで決めちゃうね!」
すると、今まで何の変哲も無いロングソードだったそれは、刀身に薄っすらとした青白い光のエフェクトを宿した。
何が起こるかなど理解していないピグは相も変わらず体当たりを行い、それを危なげなくヒラリと舞うように躱したアリスがすれ違い様に二度斬り付けた。それは先ほどまでの攻撃よりも明らかに強く、疾く、ピグの残りHPを全て奪い去った。
「ぴぎ……」
HPを失ったピグは
それを余所に、アリスは剣を素振りしながら首を傾げていた。
「思ってるより動けないなぁ。まあレベル一だから仕方ないけど。次行こう、次っ!」
それから暫く戦い続け、最初のピグを倒してから凡そ一時間が経過していた。アリスを相手にするには街のすぐ傍に出現するモンスターで戦闘ではあまりにも弱すぎたため、最初の街――ユピテルから少しずつ、それでいてわりと速いペースで離れて討伐するモンスターのレベルを上げていた。
その甲斐もあってか既にアリスのレベルは九まで上がっており、今はレベル六のモンスターであるバッファ・ローのリンク(群れ)と戦っていた。リンクといっても流石に現実のように数十体規模ということはなく、数体で固まっていてそのどれかに攻撃を仕掛けるだけでそれらと戦闘になるという仕組みのものだ。
そして今、アリスと対峙するバッファ・ローのリンクは四体。数の上では圧倒的に不利だ。
通常であればパーティーを組んで戦うような場面である。前衛後衛で役割分担を行い、協力プレイを行うのもオンラインゲームの醍醐味と言えるし、多くのプレイヤーはそうしていることだろう。だがアリスはここまで一人で来たし、周囲に他のプレイヤーの姿は見えない。独力で切り抜けるしかないのだ。
アリスと対峙しているこのバッファ・ロー、モチーフが何かなど言うまでもなく
「ほらこっちだよ、うしさん! ふふっ、残念でした。せいっ!!」
しかしアリスからは追い詰められている様な雰囲気が一切感じられず、それどころか楽しげに笑ってすらいる。そんな彼女は四体の突進をものともせず、蝶が舞うように避ける――と、同時に長剣で斬りつけて確実にダメージを与えていく。
パーティーを組んでいるのであれば盾等を装備した耐久力の高いプレイヤーが敵を引き付けるところだが、この場には居ないし、アリスがそんな真似事をしては到底受けきることなど出来はしない。故に回避するしかないのだが、それは回避ステータスの高さ依存により判定で回避できた旧態依然としたゲームと異なり、VRMMOにそんなステータスは無く、実際に自分で避けなければならない。そうなれば当然ながら、より高度なプレイヤースキルを要求されることになり、あまりに負担が大きいため防御手段に回避を主とするプレイヤーの大幅な人口減少に繋がっていた。が、それが問題になっているかと問われればそんなこともなく、逆に高いプレイヤースキルの証明でもあるため、ゲーマー達には受け入れられてさえいた。
なのだが、アリスという少女はそのあたりの感性が少しばかりおかしかった。回避というステータスの自動判定任せではなく自らの力で敵の攻撃を避け、そして自らの力で攻撃を当てる。どのゲームでもそれを実現させるためにレベルアップで得られるステータスポイントは攻撃力と敏捷力にのみ(必要に応じてMPにも)割り振る。そうして得られる近接戦闘でのギリギリの緊張感やら刺激やらこそが彼女のアクションゲームに求めるものであり、驚異的なプレイヤースキルを得る原動力となっていた。
あっという間にバッファ・ロー四体とものHPを三分の二程度削ってしまい――そこでアリスの雰囲気が少しばかり引き締まった。おそらくコンバットアーツを使用し、この辺りで一気に倒しに行くつもりなのだろう。
余裕の笑みを浮かべるアリスの握る剣に、青白い光のエフェクトが宿った。
「じゃあ一気に決めるよ!!」
正面から突っ込んでくるバッファ・ローの一体目を体を回転させながら右へ跳び、躱しながら水平に斬り付けると、その勢いのまま右から来る二体目も斬り裂く。旋回するような攻撃の動きによって、背後から来ていた三体目を必然的に正面から向かえることとなり、未だ光のエフェクトに包まれている剣を真上から振り下ろし、両断する――と、同時に刀身からアーツエフェクトが消失し、最後の一体が勝利を確信でもしたのか、あるいは仲間がやられたことに激高したのか、一層大きな雄叫びを上げて向かってくる。
だがアリスは余裕を崩さない。振り上げられた剣には既に薄い橙色のエフェクトが宿っていた。今まで片手で振り回していたが、今度は両手でしっかりと握りこむと、突っ込んでくる最後の一体を真正面から堂々と迎え撃つ。コンバットアーツの光を放ちながら鋭く振り下ろされたそれは、バッファ・ローの頭部へ吸い込まれるように寸分違わず切っ先が弧を描く。対するバッファ・ローも臆することなく突進攻撃を敢行――ついに激突したそれらは、技同士がぶつかり合ったがために火花のエフェクトが散った。
しかし――その力比べも長くは続かない。
「いっけぇぇぇぇぇ!」
アリスが長剣を握る両手にさらに力を込めた――直後、切っ先が大地に突き刺さった。力負けし、バッファ・ローは押し戻されながら真っ二つに切り裂かれ、無数のポリゴンの破片へと帰した。
それによって表示されたレベルアップの通知と、ドロップしたアイテムが自動で回収されたウィンドウを確認すると、別に汗などかいていないが、一仕事を終えた後のような爽やかな笑顔をして額のそれを拭うような仕草を見せた。
「ふぅ……こういう力比べもいいよね。押し勝つと気持ちいい!!」
事も無げにしているが、最初に使用したのはピグに使ったものと同じで初期習得している二連撃のスキルなのだが、一撃目で事も無げに二体を同時に処理してしまうあたり、並みのプレイヤーではないことが改めて分かるというものだ。最もこの場を見ている者は居らず、誰かに伝わることも無いのだが。
「レベルもキリのいいところまで上がったし、一度街へ戻ってアイテムを整理しようかな」
ドロップアイテムはアイテムストレージに全て収まっているため、鞄の中をガサゴソと探す必要はない。リアルさを追求しているゲームではあるが、やはりこういったところはそれらしくデザインされている。
ストレージの中を確認すると、入っているものは最初のフィールドで手に入る低レアリティでほとんど価値の無いものばかりなのは当然なのだが、それでも売却すればいくらか資金の足しにはなるだろう。そのついでにアイテムショップも見て回ろうと考えたアリスは帰路に就いた。
「それにしてもβテストの時よりMPは高くなってるけど、他のステータスの伸びが悪くなってるなぁ。補助特化な種族だし、種族補正がより強く調整されたってことかな?」
その道程でこれまでの戦闘を振り返る。
βテスト時と比べ、明らかに雑魚モンスター相手でも撃破に必要な攻撃回数が増えているのだ。といっても十回や二十回というようなべらぼう回数ではなく、精々一、二回という程度なのだが――逆に言えば低レベルの現時点でそれだけ必要ということは、レベルが上がって一層ステータスに開きが出れば、さらに攻撃回数が増加するということでもある。
それを嫌ってアバターを作成しなおすもよし、そんなことは気にせず自分の趣味に走るもよし、なのだが――
「まあ適正の高い組み合わせよりちょっと頑張れば良いってだけだもんね。なにより天使が可愛いから別にいいや。それにゲームなんだし、楽しまなきゃ損だよね、損!!」
趣味プレイの道を行きながらも、変態的なプレイヤースキルでなんだかんだ結果を残してしまうのが、この如月亜莉栖という少女だった。
そんなことを考えながら帰還するまでの間、モンスターを見つけては絶滅させるような勢いで嬉々として斬り掛かっていたがために、街へ到着するころには約一時間が経過しており、レベル十二へと達していた。
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