企業間の対立から勃発した大戦によって崩壊した日本。人々は温かさを求めて温泉街に集まった。荒廃した世界で鎬を削る無頼漢たちを人は「温泉狂」と呼んだ。
博打打ちの青年・星月健太郎と、赤色を透視する超能力少女・桜庭エミリが社会の巨悪を倒すジャイアントキリングが本作の見所です。
箱根の旅館と賭場を仕切る巨大企業『大黒天グループ』の打倒を掲げ、タッグを組んだ二人は各地の賭場で連戦連勝。そんな二人にグループ主催の超高額賭博対決「レッド・オア・ブラック」への招待状が届き、大金を賭けた大勝負へと挑む。
健太郎の勝負勘とエミリの超能力を武器に勝ち上がる痛快さが小気味よい。しかし対戦相手も強者揃いで侮れない。
予想外の奇策や超人技が飛び出ては歓声が沸き。引き離されたかと思えば一気に追い抜く逆転劇に盛り上がる。お互いに最後まで諦めず、貪欲に勝ちを求めて粘りに粘る。知略や駆け引きを越えた意地と気合の激突が手に汗握る。
いつしか恨みや憎しみも忘れて、敵も味方も観客も勝ち負けに熱中し、皆で叫んで喚いて怒号が飛び交う馬鹿騒ぎの博打シーンが読者を熱狂と興奮に引き込みます。
まさに温泉でのぼせたかのような読後感を味わいました。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)