第2話 不思議の国のアリスの冒頭の詩を和訳しました.

『不思議の国のアリス(冒頭の詩)』

和訳:茜町春彦

原作:ルイス・キャロル


Translation into Japanese

"Alice's Adventures in Wonderland (the poem at the beginning)"

Translated by: Akanemachi Haruhiko

Original Author: Lewis Carroll



英日翻訳


Alice's Adventures in Wonderland


All in the golden afternoon

Full leisurely we glide;

For both our oars, with little skill,

By little arms are plied,

While little hands make vain pretence

Our wanderings to guide.


Ah, cruel Three! In such an hour,

Beneath such dreamy weather,

To beg a tale of breath too weak

To stir the tiniest feather!


Yet what can one poor voice avail

Against three tongues together?


Imperious Prima flashes forth

Her edict "to begin it":


In gentler tones Secunda hopes

"There will be nonsense in it."


While Tertia interrupts the tale

Not more than once a minute.


Anon, to sudden silence won,

In fancy they pursue

The dream-child moving through a land

Of wonders wild and new,

In friendly chat with bird or beast ---

And half believe it true.


And ever, as the story drained

The wells of fancy dry,

And faintly strove that weary one

To put the subject by,

"The rest next time ---" "It is next time!"


The happy voices cry.


Thus grew the tale of Wonderland:

Thus slowly, one by one,

Its quaint events were hammered out ---

And now the tale is done,

And home we steer, a merry crew,

Beneath the setting sun.


Alice! A childish story take,

And with a gentle hand

Lay it where Childhood's dreams are twined

In Memory's mystic band,

Like pilgrim's withered wreath of flowers

Plucked in a far-off land.


アリスの冒険した奇妙な国


総べては素晴らしき午後のこと、

全くゆっくりと舟をこぐ、

両舷の櫂を技量不足ながら、

細い腕は往ったり来たり、

小さな手が空しく動くのは、

我らの彷徨を導くが為.


嗚呼、無慈悲なる三人に、斯様な時の狭間、

斯様に夢見る空の下、

物語を乞われるも、我が吐息は弱く、

小さな羽の揺らすも能はず、

男一人、哀れな声で何をいえば、

三人の言葉に対抗できようか.


堂々とした長女は、前へ出て命令する、

「お始めなさい」

優しい口調で、次女は望みを言う、

「ナンセンスな話がいいわ」

ずっと、三女は話の邪魔をする、

一分に一度とまでは云わないが.


間も無く、突然に、静かになった、

空想の中、三人は追って行く、

あの夢の子を、巡り行く国には、

荒々しくも新しい奇妙の数々があふれ、

鳥や猛獣と、親しく、おしゃべり・・・

半信半疑ながらも.


いずれ、話は尽き果て、

空想の泉は涸れる、

疲れた男は、僅かに抵抗を試みる、

話をはぐらかす為に、

「残りは次回に・・・」「今が次回でしょ」

歓喜の声が上がる.


斯様にして出来たのが、奇妙な国の物語、

斯様にして、ゆっくりと、ひとつづつ、

筋の通らない事件を叩き出した・・・

そして、今、物語は終りを迎える、

我ら愉快な乗組員は、帰路へと舵を取る、

沈みゆく太陽の下.


アリスよ、お伽話を持って行ってくれ、

そして、優しい手で、

重ねて置いてくれ、幼い頃の夢が紡いである、

記憶の中の神秘的な領域へ、

巡礼者の枯れた花輪のように、

遠く異国の地で摘み採られた.




最後の2行の比喩表現についての考察:


最後の段は「アリスに、この物語を大人になっても覚えていてくれ」と言っていると思いますが、そこに使われている比喩表現「like pilgrim's withered wreath of flowers plucked in a far-off land」の意味が、よく分かりません.「遠い異国で摘まれた巡礼者の枯れた花のリース」のように覚えているとは、どの様な覚え方なのでしょうか.


ただ単に、行数を合わせる為の水増しの文章なのでしょうか.


発音からの憶測ですが、仮に「pilgrim's withered」は「Grimm Brothers」のメタファーであるとすれば、この比喩表現は「グリム兄弟がドイツで集めた童話のように」と解釈できると思います.


つまり、最後の段は「アリスに、大人になっても、不思議の国のアリスをグリム童話と同じように記憶しておいてくれ」と云うルイスの希望を暗喩として表現したのだと思います.


如何なものでしょうか.


(不思議の国のアリス、了)

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