少年の過ち-ボクと俺-

ドーナツパンダ

第一話「揺れる心、騒つく鼓動」

『-過去①-』

「クソガキだな…。お前は」

『え?誰なんだ?』

「俺がお前の代わりに『隼人』でいるよ」

『やめろ…!!』


ハッと目が覚めた。

汗だらけで、シャツがびっしょりになってしまった。

「また、この夢か…」

「どうしたの?」

「いや、何もないよ」

本當の戀か…。だが、しょせんセフレだ。

「大丈夫?隼人?」

「うん、平気だから」

「そう…」

目の前にいるのは、セフレの真江(まえ)だ。

25歳で、薬剤部の研究生。

性格はそうだな…。優しいけど、裏の顔を見せるのは俺だけかな?


つまり、夜の顔だ。


「真江…」

「んんっんあっ」

感じる鼓動に体の反応。

こいつは、俺に惚れているかもしれない。


「隼人…」

「なんだ?真江」

「彼女…もしかしていないの?」

「え?」

(は?何言ってるんだ?こいつ?)

「ねえ…隼人。私たち、本當はセフレなんだよね?」

「なんで…分かったんだ?」

「當たり前じゃない!セフレだって最初から気がついたよ?」

「そっか…。後悔したか?」

「ううん。逆にホッとしたよ」

「なんで?」

「好きな人、いないから」

「ふーん」

右手と右手を重ね、二人はキスをした。


『-今-』

「大丈夫?隼人」

穂香の聲が聞こえた。

「特に…何もないよ?」

「そう…。何かあったら言ってね?」

「うん、ありがとう」

「いいえ」

「その…真江さんとは、セフレだったの?」

「うん、そうだよ」

「そっか…」

なんとなく不機嫌そうに見えた。

「そうなんだ…ね」

「なんだ?嫌か…?」

「ううん。ただ…普通にいるだなって思っただけ」

「ふーん」

「セフレって何?」

「え?」

「うーんと、セフレっていうのは、セックスフレンドの略稱だよ?」

「セッ…!?」

一気に顔が真っ赤になった穂香を、隼人はポンポンと頭を撫でながら慰めた。

「知らなかったの?…そうなんだ」

「うん、ごめんね」

「なんで、謝るの?」

「ううん、ただ恥ずかしい質問しちゃったから…」

「そうなの?」

「うん、ごめんね」

「大丈夫だよ?ね?」

「うん、ありがとう」

「どういたしまして」


『-過去②-』

「早めに寢ます。おやすみ」

真江とはセフレだが、一応戀人同士だ。

近頃、浮気はしてないが、僕とセフレになった時から徐々にその回數が増えるようになった。


まあ、僕には関係ないけどな。

「うん、分かった。おやすみ」と書き込み、すぐに返信をした。

「まあ、いいっか…」

一人暮らし。

初戀、失戀。

浮気、不倫。

殺人、麻薬。

希望、失望。


未婚、既婚、離婚。


僕の両親は、俺が高3を卒業する直後に離婚をした。

原因は、不倫、麻薬、アルコール中毒。


父の方だった。

母は、何も悪い事はしていない。


二人は大戀愛して、母が子供を身篭った直後に、父と結婚をした。


5ヶ月の時だった。


あまりにもすごく気持ち悪い父親だ。

今でも、そう思っている。


偽善者の最低な父親として、俺は一度も彼を「父親」として認識していない。


「隼人…。

早く家に帰って來たら…どうだ?

父より」

(は?なんだよ、こいつは?)

「父親ぶってんじゃねーよ!!」

ガラスのコップを激怒になりながら、地面に一気に投げて割った。


「はあ!?なんだよ!?」

パリーンと大きなひび割れの音がした。

「また、あのクソ親父かよ…!!」

「ど…どうしたの?隼人?」

「いや、なんもないって!」

「そう…ならいいけど」


「お前な…ふざんけんな!」

「隼人…?」

(え?なんかおかしい…)

「お嬢さん?」

「え?なんで?口調が…?」

「おーい?大丈夫か?」

「誰なの?」

「俺?俺様は、ハルだ!」

「俺様?」

「俺様は、隼人のもう一つの人格だ」

「え?どういうこと?」

この時は、まだ知らない。

隼人の本当の裏の顔を…。

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