ドーナツ

第1話

月に一度、午後から研修というものがある。

私の仕事は医療事務で15時から17時までの研修。研修開始の2時間前から職場を出発してもいい事になっているから、外に出て気分転換！とワクワクしないわけでもない。

天気のいいときには特に。

得した気分。

支社へ向かいながら、何処か寄り道しようかな、一旦家に帰って洗濯物だけ取り込もうかな、とか。

贅沢な気持ちになってしまう。

研修する支社のそばに大きな駅があって、そこの2階には小さいながらも品揃えのいい本屋があり、好きな作家の新刊が出ていて、それを手に取る時のご褒美みたいな気持ちも贅沢。

駅の1階にはフランチャイズのドーナツ屋さんがある。駅だから高校生や会社員の出入りがよく目立つ。17時に研修を終えて、ふとドーナツを買いに寄り道した事がある。

大好きなシナモンが満遍なくたっぷりとかかったもの、桜の季節限定のドーナツ、もちもちとしたドーナツ10個ほど買って帰宅した。

3歳のムスメも、オットも喜んで食べてた。

ムスメは流石私の好みによく似てチョコレートのものを好む。

オットも翌日の朝に食べて行ったり。

その週末。

オットが髪を切りに美容室へ行くのだけど、ドーナツ屋のある駅が近くにある。

そしてまたドーナツをリクエストした。

夕方。

ドーナツの箱を開けたら。

見事にオットの好みのものばかり。

私が選ばないようなラインナップ！！

そういうこと。

オットは自分が食べたいものだけを選ぶ。

ツマの好みは二の次どころじゃない。

シナモンのは？

桜の期間限定のは？

えぇ？そんなのあったっけ？