第10話【再会】

こんなことがあるのだろうか?

大阪に向かう予定で到着した東京駅で

緑色の電車に心変わりし、何も考えずに

やってきた北の大地。

ここに、一度道を聞いただけなのに

今まで忘れることができなかった

大阪にいるはずの彼女がいるのだ。

これを運命と言わずして何というのだろう。


興奮した俺は思わずこう叫んだ。


「やっぱりクールbabyだ!

なんだよbaby、やっぱりそうだった!

あのさ、あのさ、初めて会った時から

貴方は俺のbabyなんだよ!

やっと見つけることができた。」


初めは俺の訳のわからない言葉に

困惑の表情を浮かべていた彼女も、

受け入れ始めているのか少しずつ

笑顔を見せてくれるようになっていた。

あまりにも興奮し、話し続ける俺を

落ち着かせるように


「一緒にビールでも飲みませんか?」


と閉店準備をしている売店を指差し

提案してくれた彼女が俺には女神にみえた。


二人で急いで売店に駆け込むと、締め作業

に追われている店員のおばさんに頭を

下げながら缶ビールを2本ずつ買って来た。


最終のロープウェイの時間が近づき

人気もまばらな展望台のベンチに座り

なおすと、彼女は漆黒の闇に浮かぶ星や

下界に広がる街明かりを見ながらゆっくりと味わうように飲んでいる。

マスクをとっている彼女を見るのは

初めてだ。

気づかれないように横目でみながら

本日、何杯目かもわからないビールを

体に流し込む。

いつもと同じビールを買ってきたのに

誰かと飲むビールというのは

こんなにも美味いものなのか。

人の気分と味覚の関係とは

本当に不思議なものだ。

このまま時が止まればいいのに。


地上行き最終案内のアナウンスが聞こえ

最後のビールを二人で飲み干すと

俺たちは手を繋いでゴンドラへと向かった。

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