Find you.

十文字心

【プロローグ】

トントン! すみません、

道に迷って困っているのですが。


「どちらに行かれる予定ですか?」


長野の山奥で老人の

ユートピアを探してまして


「ここは北海道ですよ?」


このくだらないやり取りから

始まった初老男性の恋。

はたしてどのような結末を

迎えるのだろうか。



※※

何故、俺は在来線に?

何故、俺は新幹線じゃないんだ?

そんな愚問を自分に投げ掛けながら

車窓から見える、春も後半に差し掛かった

景色と窓に反射して映るすっかり

初老染みた自分の姿に思わず苦笑いを

しながら一人車内でビールを飲んでいた。


(あ~もう桜散りゆく季節だな~?)


よくある歌の歌詞のようなことを考えながら

季節の移り変わりを車窓の景色に感じ

ほろ酔いの俺はイヤホンから流れる

万人受けしないであろう激しいロックを

聴きながら、彼女と出会った時のことを

思い出していた。

後数時間したら、久しぶりに生の彼女に

会える。きちんと待ち合わせをして

会うのはこれが初めてだ。

緊張のドキドキを抑えきれない俺は

音楽の音量をもう少しだけ上げて

目を閉じると、呼吸を調えた。

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