第1話 始まりの森
誰彼構わずに言う訳でもないが、俺の趣味は所謂ヲタクと呼ばれる類のものにな
るだろう。
日々の俺の生活環境はと言うと...。
何かにつけ無理難題を押し付けてくる上司の野郎から、毎日罵倒されながらも仕事を放り出さずに頑張っている、しがない平の銀行員だ。
それでも唯一、精神的な助けになってるのが、勤めている会社が某外資系の銀行で高給を稼げている事だ。
外資系の銀行は、成績によってボーナスの方も潤沢に貰える為、俺はその全てを
そのまま趣味の3Dキャラクター創作と動画編集の為に使う生活を送っている。
なので、未だに彼女と呼べる存在も傍らには居ない。
そして今週末の俺はというと...。
夏のボーナスを全額つぎ込んで、ついに念願の某メーカー製の最新の高性能W・Sを購入した。
この最新の高性能W・Sは、これまでなかなか人間味のある動きを実装出来なかったキャラクター達に、よりリアルな人間味のある動きを与える事が出来るようになった。 なので、俺はその為の作業に没頭していた。
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キャラクター作りの作業を始めてから、半年あまり...。
俺は、ついに自分の納得できる思った通りの動きを、3Dキャラクター達に与えることが出来たのだ。 そこで早速、俺は自慢の動画をアップロードする事にした。
そして、ネット上にアップロードを始めたのだが、容量が大きかったせいか、ことのほかアップロードに時間が掛かっていた。
そこで、アップロードが終わるのを待っている間が暇なので、俺はゲーミングチェアに身体を預けて目を閉じるとそのまま寝落ちしてしまった。
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チュン、チュン
カァ~、カァ~
「ん~、うるさいな~。 もう少し静かに寝かせてくれ...」
バサ、バサァ、バサ~
ギャ~、ギャ、ギャッ
「うるさい! 静かに寝かせろ!!」
余りの周りの喧騒に、怒りに任せて勢いよく身体を起し、目を開けた俺は...。
その変わり果てた光景を目の当たりにして言葉を失った。
「・・・・・・・・???」
如何やらいつの間にか俺は、森に迷い込み大木に身体を預けて寝ていたようだ。
そんな、アホな。
と...、一人漫才をしながら、周りの景色を観察する。
するとそこは、俺が動画の一話目をアップロードしたシナリオの景色と全く同じ
場所だった。
「え~、マジか⁉」
これは所謂...。
異世界転移、いや電脳世界へのダイブの方が合っているのか。
全く分からん。
「なんにせよ。 取敢えずシナリオ通りの場所なら、ここを拠点に周りを調べて回るしかないようだな」
それから、約1時間ほど掛けて周りを調べて回った結果...。
ほぼ俺が造ったシナリオ通りの、構築された世界感であることが分かった。
大木の周辺だけではあるが。
「さて、しょうがない。 今度は装備の確認といきますか!」
と...、独り言ちる。
このシナリオを構築する際に、自分自身のキャラ設定もして於いたのでそれを確認することにした。
まぁ所謂、チート使用のキャラ設定なのだが、そのままの設定になっているのか、いないのかの確認なのだ。
一つ、戦闘装備、よ~し。
一つ、戦闘系スキル、よ~し。
一つ、攻撃系魔法、よ~し。
一つ、支援系魔法、よ~し。
一つ、生活魔法、よ~し。
一つ、衣食住の装備、よ~し。
何故か、軍隊の装備確認のようになってしまった。
まぁ、自分で創って於いて言い訳にはなるが、余りにも呆れる程のスペック設定になっていたので、俺自身もチョット引いてしまった。
まぁ、のんびりと生活するには有り余るスペック設定ではあるが、取敢えず良しとしておこう。
現実逃避ともいう...。
何故...?
このような状況になってしまったかは、いまの俺には全く分からないが。
ただ自分の創作したシナリオ通りに、果たして物事が進んで行くのか、行かないのかは、これからだな。
興味本位ではあるが、これから進行していくであろうシナリオの状況変化を楽しむと決めた俺は早速大木の傍にログハウスを設置して、生活環境を整えていくのであった。
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