投了お化け

そ の日五度目の接続切れをした時に

ス マートフォンの画面から飛び出したお化け

君 の家に住みついて離れない

た だじっと君のことを見つめている

君 はいつしか震えを乗り越えて

い つものように将棋を始めた

そ してうっかり飛車を取られて

六 度目の接続切れ

じ っと見つめるお化けの目が

少 し大きくなった


太 陽が昇ろうと雪が降ろうと

君 は将棋を指す日々を繰り返す

そ して何度も接続切れ

お 化けの目はついに顔より大きくなって

部 屋の半分ほどになった

そ れでも君は気にせずに

一 日七度の接続切れ

お 化けはついに口を開いた


君 がするはずだった投了が

裏 側の世界で震えているよ

君 は少しだけ眉間に皺を寄せて

し ばらくしてまた将棋を始めた

気 が付いたらあと三手で詰み

接 続を切ろうとしたとき

お 化けの目が部屋いっぱいになって

君 の手は意図せず投了ボタンを押した


気 が付くとお化けはいなくなっていて

君 の元気もなくなっていた

投 了は疲れる

君 はそのことを確認して

ス マートフォンの電源を切った


そ して僕は出番を待っている

感 想戦お化け

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