神様とミルフィーユ

僕の家に居ついた神様は

勝手にミルフィーユを食べてしまった

神様なので文句も言えない

しょうがないので将棋を教えてもらう

ただ すぐ追い越した


神様は将棋が弱い

けれどもすごく楽しそうだ


僕は大会で優勝した

家に帰ると神様は微笑んで

少し分厚い盤をくれた

神様のことが好きになった

二枚落ちで将棋を指した

僕が勝った


僕はプロを目指した

親は反対だった

友達も笑った

神様だけが応援してくれて

いつも微笑んでくれた

強い人ばかりで

負けることが多くて

泣いて帰っても

神様だけは優しくて

だからいつも僕は

ミルフィーユを買って帰った


月日は待ってくれなかった

みんな先に進んで

みんな追い越して行った

僕は年齢を重ねて

大人になることを忘れていた

何度も分厚い盤に

分厚い涙を落とした


僕がプロを目指さなくなった日

貰って帰った駒を

盤に置こうとしたら

ミルフィーユが二つ乗っていた

神様が微笑んで

「もう一回将棋を楽しもう」

そう言ったから

僕は確信した

将棋の神様はずっとそばにいた


二枚落ちで

初めて僕に勝った日

神様は泣いた

僕は笑った

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