日暮れ

彼女は白い歯を見せて笑っていた。

「ありがとうっ! 私、海崎 空! 空って呼んでねっ」

どんな年齢になっても、友達のなり方は変わらないのだろうか。そもそも、友達のなり方なんてそんなもの知らない。誰かが教えてくれる訳でもないし、勿論、教えて貰ったことなどない。

「あ、私は大野____」

「奈都ちゃん! 奈都ちゃんだよねっ」

大きな目をクリクリとさせながら、小学二年生ぐらいの子と同じような顔をさせて、空は言った。

私はその元気さというか、活力に圧倒されたのかもしれない。圧倒されたことを隠すために、吹き出したのかもしれない。


________


「ふふっ」

大野さんは、少しだけ、ほんの少しだけ何かに圧倒された様な表情を浮かべると、すぐに可愛らしく吹き出した。吹き出したというか、声を出して微笑んだ。

「もしかして、間違えた?!」

その可能性もある。大野さんという人が2人いて、本当は 奈都 という名前じゃないのではないかもしれない。と、心配した。

「ううん、合ってる。大野奈都、奈都でいいよ」

大野さんは、薄く微笑んだまま、呼び方まで教えてくれた。嬉しくて、嬉しくて堪らなかった。

「奈都! か!」

思わず声に出してしまうほど嬉しい。顔の周りは暑かった。それはきっと、緊張と興奮によって、だ。

すると奈都はまた笑った。今度はふふっじゃなくて、あっはは って、笑った。何が面白いか分からない。だけど友達が笑ってくれるのは嬉しいから私も笑ってしまう。おっきく口を開けて、目を細めて、大きな声で、感情そのままに、私は笑った。


「空、顔に『笑』って書いてあるみたいに笑うね」

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