蒼穹

西来 潜

1 日暮れ

「お、おーのさんっ」

変な奴に絡まれてしまった。

入学して2日目。オリエンテーションの休憩中のことだ。

席が隣である彼女は、自分から話し掛けて来たクセに、かなり緊張している様子だった。

「ど、どうしたの?」

何かを訊かれるのだと思い、彼女が私に訊きやすい様な返事をしたつもりだった。

「お、お友達になりませんかっ」

そう来たか。ちょうど良いことに、私もこの2日で友達と呼ばれる関係を作っていなかった。しかし、この彼女の名前を私は知らない。それに彼女は何だか、その、普通ではなさそうだった。その落ち着かない雰囲気というか、友達になって大丈夫なのだろうか。上に、なんとも小学生の様な成り行きで友達になるのは、何故か恥ずかしかった。

しかし、こういう時に躊躇ばかりしていると、友達は出来なくなる。彼女がどんなに不思議な子であっても、仲良くしといて悪いことなんてない。

「いーですよ」

なんと言って、友達になることを許可すればいいかわからず、敬語になってしまった。

恐る恐る彼女の顔を見た。もし、悲しんでいたら申し訳なくて、堪らないのだけれど。

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