第37話 ウルの最後 その2
エナはハワイ島を回っていた。恐らくウルの船と思われる、ボロボロの船が停泊しているのを見た。
長い厳しい航海に、ウルは疲れ、自制心を失っていた。
1月19日 残された手記によると、この日に船員は儀式を目撃している。ウルはハワイの神話の世界にとりこまれて行った。
ウル?(クック)は心ならずもハワイにおける神の世界と触れ始めた。
民族学や人類学が充分に知識を貯えた、エナやマグナスの時代とは違い、キリスト教社会の人間であるウル?(クック)たちはそんな
神々のことはよく知らなかった。だが、どんな場合でも、ある文化における神の問題は、その文化の人々が生きる宇宙の仕組みであった。ウル(クック)は冷静に彼らの慣習にしたがった。彼は異様な敬意を払われていた。彼はロノ神として迎えられたのである。だがクック達は「オ・ロノ」の意味を正確に理解することはできなかった。(ウル?は理解していた。彼は死ぬためにここに来たのだ。)
ハワイの人びとはそれを目に見えないものにも使った。彼らが進むに連れ、浜に集まっていた群衆は家に逃げ帰り、他に平伏している僅かな人びとをのぞいて誰も見えなくなった。マカヒキの神が現前し、来訪者が神に同一化するとき、平伏しなければならないといつタブーに一致してる。
ハワイにおける神は「ク」という恐ろしい神と、「ロノ」という、平和な、農耕と豊穣、狩猟の神があった。また当時、マカヒキと呼ばれる季節があった。それは十月ないし十一月からはじまる四ヶ月で、この期間は収穫の時であり、税をおさめる時期であった。
マカヒキの季節の神はロノ神であった。税の徴収は時計回りで島を回る。偶然か、クック(ウルは知っていた。エナと共に神のみもとに行くために)はこのマカヒキの季節に、ゆっくり島を回りながらケアラケクア湾にあらわれた。さまざまな現実が神話に符合し、クック(ウルは知っていた)はロノ神が海からやってきたと思われた。
クック(ウル)船長はロノの神像にそっくりであった。神の似姿。
それはマカヒキの儀礼、ハワイの偉大なる新年祭の時期だった。
司祭たちは歌った。それはただ一つの言葉「オ・ロノ(エ・ロノ)」という祈りに収斂されるように聞こえた。
ハワイ島全体の王たるカラニオブウは不在であったが帰ってきて、クックと会う。驚いたことにその人物は以前に会ったテリヤブーその人だった。
このまますすめばクック(ウルは死にたい)はまたもや北の航路に探究に出かけ、何事も起こらなかったろう。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889551502/episodes/16816700426342156819
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