烈風竜虎
@enja6
プロローグ
渓谷の如き性能差も、目を覆いたくなる劣勢も、理不尽も、
飢えた虎にとっては餌でしかなかった。
その日、虎は竜のいない場所にいた。
ゲームセンターでは今日も青を基調とした原色の光線が入り乱れ、筺体が爆音を発散してそこにしかない異様な空気を作り出す。
喧騒の中、幸律虎子(さりつとらこ)は一言も発さず壁にもたれ掛ってスマートフォンを見ていた。
〔何度もすまない。知っていると思うが、身勝手なお偉いさんの都合で二つの才能がその芽を断たれようとしている。もう、彼らを救える人間は地球上のどこにもいない。たった一人を除いては〕
それを読んだ後、虎子はもう片方のポケットを弄った。もう片方のポケットには一枚の硬貨、百円玉が入っていた。
虎子は、百円とスマートフォンを交互に見て、百円玉の方を強く握りしめるのだった。
「見捨てるも愛情、助けるも愛情、か」
口をついて出たのは葛藤の切れ端だった。
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