第三話 心化粧②

どれくらい経ったのか分からないが、洗濯物を干し終えた母が部屋に入ってくるまではだらだらしていた。勉強を急かされ、自分の部屋へ向かう。無論、部屋にはエアコンなんてない。相談室に置いてあるのより少しスリムな首振り扇風機があるだけだ。

既に、エアコンの効いたあの部屋が恋しくなってきた。さっさと予習を終わらせて、早くあの部屋に戻らなければ、そう思って椅子に腰掛けた瞬間、見計らったかのように、スマホが鳴った。帰り道の間中胸ポケットに入りっぱなしだったスマホの画面は汗でじっとり濡れていた。確認すると那智からRAINが来ていた。


[那智:花火大会何時集合にする?]


私は少し考えてから返信した。この時、ご飯を食べ終わるまで、もう勉強出来ない気がしてきた。


[さやか:そもそも何日?(--;)]


すると、送った瞬間に既読がついた。


[那智:ちょっと調べてくるわ]

[さやか:و( ˙꒳˙ )٩ !oκ]


そう返してから、学校で配られた手帳を取り出す。白い表紙に箔押しで西暦が刻印されていて、ハードカバーの本程度のサイズ感。しっかり“今週の目標”や“今週の反省”の欄があるあたりがいやらしい。


それを見て、思い出す。悲しい事実を。

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