第三話 心化粧①
帰り道はずっと花火大会のことを考えながら歩いた。家に入ると、幾分か暑さが和らいだ。
この暑い中背負って帰ってきたリュックサックを玄関に下ろすと、リュックと背中の間のモワッとした空気が解放されていくのがわかった。シャツの背中部分は汗でぐっしょり濡れている。
リュックの背中に当たる部分と肩に触れている部分にかなり汗が染み込んでいそうだなあなんて考えながら、冷蔵庫を漁りキンキンに冷えた麦茶を取り出す。朝水筒に入れて行った分など、部活が始まる前に飲み切ってしまった。それからの水筒にはぬるい水道水が入っていたが、それも部活の後半にはなくなっていた。
コップに注ぎ、冷蔵庫の扉が閉まるのも待ちきれずにグイッと飲み干す。そして、もう一杯注いでから冷蔵庫にしまった。アイスを手に取り、肘で天国への扉を開けた。
入った瞬間、背中から気化熱を奪われた。身体の表面が一気に冷え、身震いする。だが、それが心地よい。
一度入ったら出る気などさらさら起きない。母親が専業主婦で良かった、と心の底から思う。母の日の感謝の半分はきっと夏の日のエアコンだと思う。あと半分は・・・・・・冬の日の炬燵かな?
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