Mの世界 ― とある世界の冒険記録《プレイログ》 ―
ちぇらぶぬこ
第1話 プロローグ
「ここはどこだ……」
今日始めたとあるゲームを自分の部屋でしていたはずの私は見慣れぬ部屋の中を見回しながらそう呟いた。
「気が付いたようだね」
後ろから声がした。
ハッとして振り返るとそこには一人の人間? が立っていた。
(悪い人ではなさそうだな)
直感的に私はそう感じた。
――
私の名前は…… M。ここではそう名乗ることにしよう。
平和な日常生活に感謝をする一方で大した刺激もない日々に私は少し退屈していた。好奇心はある方なのでいろいろと興味を持ったものに手を出してみるもののなんとなく続かず、私は次の対象を探していた。そんな年末も差し迫ったある日に出会ったとあるゲームを始めた私はいつのまにか途中で寝てしまったようなのだが、気が付くと知らない場所に居た。
状況を把握できないながらも私は目の前の人物が次に何を話すか注意深く観察しながら自分の体が無事か無意識に確認していた。一通り自分で触れる範囲は確認したが、とりあえず怪我をしているということはないようだ。
しかし、これは一体どういうことなのだろうか。
自宅に居たはずの自分が今は知らない場所に居る。
もちろん自分でここに来た記憶はない。
そういえば着ている服も違う。
ゲームをしている時に着ていたものと違いローブのような服だ。
それに外は明るいようだ。
ゲームをしていた時は夜だったが、今は朝なのだろうか。
そんなことを私は一瞬で考えながら彼? の次の言葉を待った。
「僕の名前はタク。君はこの近くに倒れていたんだ」
私が何を一番知りたいのか察知したらしく、彼は説明を始めた。
それによると、私はこの小屋の近くの森の中に倒れていて、そこにたまたま通りかかった彼が見つけ、弟と二人でここまで運んできてくれたらしい。ここに着いても私は一向に目を覚まさなかったが、近くに病院があるわけでもないのでしばらく様子を見ようということになり昼食の支度を始めたところだったとのことだった。
「助けてくれてありがとう」
私はお礼を言った。
「どういたしまして。無事で何よりだよ。しかし君はどこから来たんだい? その着ている服以外の持ち物はこれだけだったよ」
彼は小さな板のようなものをテーブルから持ち上げ私の方に見せた。
(それは私の持ち物じゃない)
そう答えようとしたが私は思いとどまり、それを手に取った。
スマートフォンより少し画面が大きな電子端末のようだった。
「よく覚えていないんだ。気が付いたらここに居た」
私は答えた。
元々自宅に居たのだから正確にはどこから来たのかわかっているわけだが、状況が分からないこの段階ではあまり何かを話さない方がいいと思った。それになぜここに居るのかは私にもわからないので完全に嘘というわけでもない。
「そうか。まあ、倒れていたわけだし何かあったのかもしれないな。しばらくはここに居るといい。弟と二人暮らしだし、特に気にしないでくれ。弟は今出かけているので戻ったら改めて紹介するよ」
彼はそう言うと台所に戻って行った。
これはどこにあるとも知れぬ異世界に迷い込んだ私の冒険記録。
さあ、冒険の旅に出掛けようか……
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