54、真面目にお仕事
「――――ふむ、なるほどな」
情報交換を始めて早一時間。一つ一つの情報を確認し合いながらだったので、予想以上に時間が掛かってしまった。
まだ夕方だが、やはり晩秋の日暮れは早い。空には黒味の差した夕焼けが広がり、今にも夜へと転がり落ちていきそうだ。
「ごろつきを利用しての犯行、超能と人獣、そして全て消え去る、か。やはりそう考えた方が辻褄は合うな」
「〝烏〟の予測はこれとまったく違うのかな?」
「まったく違う、と言うよりは、懐疑的、と言った方が近い。お偉方も少し焦って来ていて、毎日のように指示を出してくるからな。日を追うごとに忙殺されているのが実情だ」
「へぇ、相変わらず危機感が鈍い老人達だね。脳みそ、腐ってんじゃないの?」
ぼそりと呟くようにヴェネ。彼らしくない、暗い声音だった。
「……ミラージュ。〝大鷲〟内ならまだしも、公共の場でそんな事を言うなと何度言えば分かる? 醜聞などあっという間に広まるぞ」
「それを防ぐ為の
「言ってろ、口八丁が」
そう言うサイネアだが、口元は微かに笑っている。多分、本心ではヴェネと一緒なんだろう、とミオナは何となく思った。
「何にせよ、お偉方の考えは別として、懐疑的にならざるを得ない話ではあるだろう? 超能、人獣化を引き起こす薬など、聞いた事もない」
「まぁ、ね。でも、ヴァーヌミリアは聞いた事も無いモノを生み出す為の国だよ?」
「分かっている。だから懐疑的と言った。可能性の高い話として留意はするが、その線だけで動くわけにはいかないという事だ」
……今さらな話だけど、こんな〝大鷲〟の内部事情を〝土竜〟の自分が聞いてもいいのだろうか。
ヴェネだけならまだしも、サイネアも何も言わないので、別に構わないのだろうけど。少しだけ、申し訳ないというか居た堪れないというか。
「ミオナさんは何か質問ある?」
と、ヴェネが言葉の矛先をこちらに向けた。
「あ……そう、ですね。エレノアさんがそちらの捜査員を借りて捜査網を敷く、という話はどうなっているのですか?」
「あぁ、ワユの事だな」
1つ頷き、サイネアは苦笑いを浮かべた。
「今朝早く、〝烏〟の若いヤツらを連れて出ていくのを見た。ミラージュ……ワユのやり方は、前と変わっていないんだな?」
「だろうねぇ……まぁ選ばれた人達は御愁傷様、ってとこ?」
「そもそも15歳の上司というだけでも異常事態だからな……ふむ、感化されなければいいんだが」
……確かに、倒れるまでこき使いそうだなぁ、エレノアさん。
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