メガネをかけたフクロウ

仲仁へび(旧:離久)

第1話 フクロウの話(上)



 夜の闇にまぎれて電子ペットのふくろうが空を羽ばたいていた。

 星月以外照らすものがない暗闇の中を、音もなく飛ぶその生命は、現実に存在するものではない。


 電子データとして存在するそれは、現実世界とリンクするように重なる第二の世界……仮想世界を羽ばたいているのだった。


 夜空を飛んだふくろうは「ほう、ほう」と鳴く。


 どこかの高い塔のてっぺんにたどりついて、まるでここになにかがあるかのように行動で示しながら。


 やがて、携帯を持った少年がその塔のふもとまでやってきた。

 そして、その少年が腕をかかげると、フクロウはおともなくそこへ舞い降りた。


 音もなく首をまわすふくろう。

 少年はフクロウをなでる。


 電子データでありながらも、柔らかな体表の感覚を忠実に再現した電子ペットは、次の瞬間には光に消えていた。


「さてと、お宝探しに行きますか」


 少年は塔の中へと向かった。


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